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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
新しい人生は突然に

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42/46

花ふふむ雪解け

冬の終わりを告げる、柔らかな日差しが地面を優しく撫で始めた。雪は急には溶けず、ゆっくりと白い絨毯(じゅうたん)の下で、春が顔を覗かせる。



この時期には凍った果実の収穫も終わりを迎える。

雪の中で過ごした果実は甘さが増してとても美味しい果実酒などになる。

そんな話を耳にして、美味なる果実酒が口に出来るのは何年先か考えてちょっと遠くの空を眺める。果実酒なんて忘れろアナスタシア!子供の今を全力で楽しむべし!!



足元の雪が一段と水気を含み、じゅわりと靴底に冷たさを伝えた。足元を見れば、雪の縁からわずかに顔を出した湿った土。


子供らしく、ぴょん!と()ねれば泥が飛び散る。


冷たかったはずの空気を胸一杯吸い込むと、湿った土と、かすかな木の芽の香りを運んでくる。


春はもう、そこまで来ている。


雪が溶け始めると橇を引くのが難しくなる。

その頃にはミスターポム達は森に帰る準備を始める。

雪が完全に溶け、春が芽吹くまでここでゆっくりするらしい。

オオカミ達の子供が生まれ、赤ちゃんがヨチヨチ歩きから自分たちで走れるようになってから森へ帰る。

ミスターポム達は冷たい泥で子供が汚れるのを好まないらしい。


そんな話を聞きながらコートはまだ手放せないこの時期にアナスタシアや城に住む子供達はオオカミの両親を怒らさないように少し離れた所から生まれてまもないオオカミの赤ちゃんを観察する。



「かわいいー」


「凄く小さいですー」


「コロコロしてる」



少し離れた位置から見つめる子供達にも慣れたもので、気にした様子もなく、チビオオカミ達の面倒をみる親達はのんびりと雪解けの季節を過ごしている。



ミスターポムはチビオオカミの頭をまるっと(かじ)るような仕草をしているし、チビオオカミ達もミスターポムの口の中に顔を突っ込んで遊んでいる。とっても平和な風景に癒される。




雪解けと新芽の観察や泥んこ遊びに、時々ミスターポムの所のチビオオカミの観察。

新しい花の蕾を見つけてはキラキラマジカルスティックを振り回す。




「綺麗なお花が咲きますよぉーに!」


「キラキラパワー!!」


「「パワー!!」」


「キャハー!パワー!って!!!」


皆は何にアナスタシアが笑っているかわからない。


「なんか、パワー!!って言ったら笑い出したよ~」


「なんでだろ? パワー!!!」


「「「パワー!!!」」」


「アッハ!む、無理~!そのポーズ!どうして?!」



皆と笑いながら楽しく過ごしていると雪もあっという間に解けた。

そして、仲良くなった頃からヘアブラシを持参してアナスタシアの髪を梳かすのが大好きなピピロッテ。

最初の頃は頭の部分だけブラッシングをして満足していたピピロッテが気が付けば毛先まで上手にブラッシングが出来るようになった頃、ミスターポムのの元で生まれた子供達も走り回ることが出来るようになり、皆で仲良く森へと帰っていった。





少しだけ長い冬が終わり、朗らかな春がそこまで来ていた。

季節が一回りした事に気が付いたアナスタシアは青々とした芝生の上に敷かれたフワフワのタータンチェックのブランケットの上でサンドイッチを齧りながら大海原を眺めつつ静かにパニックを起こしていたあの日を思い出して少しだけ感慨深(かんがいぶか)い気持ちになった。


私、子供としてとっても馴染んでいる。

そして、当選してたはずの数億円の宝くじに関しても今の生活のおかげで悔しくて夢に見ることも無くなった。

白い世界で神様に出会わなかったし、何か特別な力もありそうにないけど、生活環境のおかけでのんびり楽しく暮らすことが出来ている。




今日の朝もバターをたっぷりぬってスティック状にカットされたトースト。

エッグスタンドにはトロトロ半熟卵を用意してくれている。


ちょうど良い温度のお砂糖たっぷりのミルクティ。


数種類のジャムと追いバター、食べやすいようにカットされたベーコンに野菜のピクルス。


いつもの見慣れた朝食を前にアナスタシアはニンマリと笑顔になる。


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