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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
新しい人生は突然に
39/40

ミスターポムがやってきた!

やぁやぁ!

そこの君!ちょっといいかな?

君は……その、ミスターポムを知ってるかい?


え?もちろん知ってる?

そうかい、そうかい。いや、こりゃ失礼!

知らないなんてあり得ない?

どこのモグリか?


君はとても難しい言葉を知ってるね。

小さな子供からそんなの知らないなんてモグリですよ!


って言われるなんて思ってもみなかったよ。

あっはっはー!



どうも、こんにちは!モグリのアナスタシアです!


こんな一人自己紹介はさておき、先日皆で雪遊びをしていた時にピッピがもうすぐ、ミスターポムが来る!と声高に話していたので



「ミスターポムってなに?」



って聞いたら皆からあり得ないものを見る目で




「「「えぇ!ミスターポムを知らないなんて!」」」




と皆に驚かれる。

なにそれ?美味しいの?冬の風物詩か何かかね?と思いながら知らないと答えてみれば。

ピッピが時々大事に抱えて遊んでいる、白い犬のぬいぐるみを見せてくれる。



「これがミスターポムです!」


「白いワンちゃん?」


「違うぞ!」


「気高きオオカミです!冬の一団のリーダーです!」


「ミスターポムに()まれちゃうよ!!」


「本当に!絶対言っちゃダメだよ!」




おっ、犬とか言って地雷踏んだか?と内心焦る程には皆の反応が宜しくなかった。




「ご、ごめん。間違えて」



ミスターポムについて皆が言うには、毎年冬になると群れでやってくる人気者らしい。



「ミスターポムは群れのリーダーで冬の時期は満足に狩りが出来ないので群れの皆がお腹いっぱい食べれるようにこっちに来るんです」


「へぇ~。大丈夫なの?(かじ)られない?」


「ミスターポムは悪い子しか(かじ)りません!」


「そうだよ!忙しいしね!」


「ミスターポムは忙しいの?」


「そうだよ!(そり)を引くからね!」


どうやら、冬になるとミスターポム達は(そり)を引く出稼ぎにこっちに来て食糧を確保するらしい。

雪が溶ける頃にはいなくなって森で自由に生きている。

なんとも賢いオオカミ達である。


「皆を乗せて走るの?」


「ミスターポムが運ぶのはお手紙やお薬とか怪我した人だよ!」


「速いんだぁ~!」


「シューンって行っちゃうの」



出稼ぎに来る賢いオオカミはミスターポムの一族だけで他のオオカミは普通に襲ってくるので注意が必要らしい。

魔力も知能も高く風の魔法を操る凄腕(すごうで)ポム一族。


ぬいぐるみや色々なグッズが売られていてこの街の人気者なので知らないことにビックリされるのも頷ける。


寝る時にベッドに並べられているぬいぐるみをよく見たら、ちゃんとミスターポムが鎮座していたので私がモグリであることは紛れもない事実でした。(はい)






そんな話から数日後、(うわさ)のミスターポムの一団がオルサポルタにやってきた。



「クゥオーーーーン」



そんな鳴き声が響き渡ったと思えば、ピッピ達が目をパチパチさせて顔を合わせる。



「ミスターポムかも!」


そんな声一つで皆は急いで集まるけれど、大人達に止められてしまう。


「まだ街の砦にも到着していないですよ!」


「えぇ~!!」


「まだ、ミスターポム達か確認が取れてないですし、街に入るにはポム一団と分かる印を付けないと知らない人達が驚いてパニックになってしまいますからね。手続き中です」


「オレ知ってる!健康診断も終わってからだぞ!怪我してたり、病気だと、療養所で直して貰うんだぜ」


「そうですよ。よく知ってますね。全部終わってからでないとミスターポム達は仕事をしませんからね」



そんな会話を聞いて、ミスターポム達どれだけ頭がいいんだ……。と驚きが隠せない。

侮れない異世界動物達。マジか。



そうして、遂に現れたミスターポム達はしっかりとした装備を付けて城内に姿を現し、お父様とお母様との言葉は通じずとも挨拶を交わしてから仕事をする。


「本年度、冬季業務任命状 ミスターポム殿及びその一団はこの冬の業務と引き換えに一団の生活を保障するものとする。」


お父様がミスターポムに任命状を読み上げて渡すと、一番大きい狼のミスターポムが受け取る。

任命状はキラキラと光ってミスターポムの周りに広がり消えていく。


隣でお母様と一緒に見ていたアナスタシアは魔法の国の摩訶不思議!凄い!!と感動していた。


ミスターポムはとても大きくて、アナスタシアよりも大きい。

そして、ジャガード織で出来たリンゴと狼の模様が入った素敵なハーネスと足には赤いブーツを履いている。

一生懸命に見つめているとミスターポムと目が合った。知性の感じる瞳をしていて、ワンちゃん!と呼ぼうものなら齧られると皆が言っていたのが(あなが)ち嘘ではないと思わせるものだった。


ちょっぴり怖くなってお母様のスカートの後ろに隠れようとしたら、ミスターポムに顔をベロンと舐められて、びっくりして固まってしまうのだった。


た…食べられるかと思った……。


呆然としている間にミスターポム達はさっさとお城から出て仕事場所や冬の住まいへと別れていくのであった。


ミスターポムの(よだれ)でベトベトになった顔をホカホカタオルで拭いてもらいながら、毎年訪れるミスターポムと仲良く暮らしていけるかちょっと心配になる。


皆の人気者ミスターポムに舐められた話をすると子供達は羨ましいと言っていて、皆はミスターポムの仕事が落ち着いた時期に行われる、子供限定ポム(ぞり)を楽しみにしている話で盛り上がっていた。


将来はポム(ぞり)に乗って仕事をしたいと話ている子供に年長の子がお勉強と運動頑張らないとね!と言っているのを聞いて憧れの花形な職業なんだなと感じる。




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