毛皮の課外授業とキッシュ
今日でアトレータでゆっくりするのは最後になる。
午前中はマッケンジー夫人と一緒に今年の冬のコートを仕立てる為の毛皮を探しに行くことになった。
冬を暖かく過ごすための、とびきり上質な毛皮を選ぶこと。そして、その美しい毛皮について、深く学ぶこと。
なんて楽しそうな課外学習だろう。わくわくする。毛皮大好き!
アナスタシアは馬車を降りると、マッケンジー夫人の手をしっかりと握り、大きな瞳をきらきらと輝かせながら、初めての毛皮問屋街を歩いていた。
アトレータの王都の賑わいから少し離れた一角、石畳の道に沿って軒を連ねる毛皮問屋街は、独特の熱気に満ちていた。上質な獣毛が放つ微かな獣臭と、店先に飾られた毛皮の光沢が、行き交う人々の目を奪う。
夫人は、優しい微笑みをアナスタシアに向けながら言った。
「アナスタシア様、今日はたくさんの毛皮を見ましょう。きっと、お気に入りのものが見つかかりますよ。」
「可愛いコートにしたいから、楽しみだわ!」
今回訪問した毛皮問屋は品揃えがアトレータ一と言われており、今回は勉強で色々な毛皮などを見せて貰う為である。通常であれば店側がこちらの邸宅に訪問して販売するところではあるが、一級品以外の毛皮以外も魔力を纏不思議な毛皮など色々あるらしい。
今回はコートの襟や袖、耳当てや帽子用の可愛い毛皮が欲しい。店員さんに魔物の毛皮が魔力を含むので保温効果が強かったり、軽量の魔法が掛かりやすいものなどがあると教えて貰ったので、オルサポルタでは狩ることが出来ないノバアルビオン西部の魔物や動物の毛皮を中心に紹介してもらうことになった。
「こちらのリンクは猫科の魔物です。保温力が高くとても軽いのが特徴です」
「模様が入っているのね。」
「コートの内側に使う方も多いですね」
「このマーテンは水辺に生息する魔物で、大変光沢があり美しく、耐水性に優れ、保温力も高いので襟巻に人気でございます」
「これも欲しいわ!」
「こちらのアーミンは山岳部に生息する小型の魔物で、最高級品です。輝くような真っ白で柔らかく保温力も高いです。また、日の光を集め、暗い所では淡く輝く毛皮です」
「これも、魔物の毛皮だから、暗い所で輝くの?」
「はい、そうです。大変貴重なものでございます」
「素敵!とっても綺麗だわ」
お金持ちの娘に生まれてありがとう。いいね!と言えばお買い上げである。
このままでは私、調子に乗った人生を送りそうなんだけど、将来「没落」とか「ざまぁ」されるとか嫌なんだけど、大丈夫かな?
他にも、ソナーシャで使えそうな毛皮も大量購入である。
魔獣の毛皮っていうのが個人的にはロマンを感じる。
ドナと新しい商品開発をするのだ!とても楽しみ!
少しでも、ざまぁされないように富の還元だよ。誰かが喜んでくれそうなものを考えるよ!
毛皮を豪遊したあとは、マッケンジー夫人と軽いランチを食べに馬車に乗って夫人おすすめのお洒落カフェに訪問だ。
窓際の明るい席でレースのテーブルクロスが敷かれたテーブルには、上品な花瓶に活けられた色とりどりの花が飾られている。ここは夫人のお気に入りのカフェで、特にここのキッシュは毎回アトレータに来ると食べにくるとか。
「アスポロスベリーと熟成ベーコンのキッシュはここでしか食べれないメニューですのよ」
と夫人の大好物らしいのでとっても楽しみ。
運ばれてきたキッシュは、まるで芸術品のような佇まいで、薄く丁寧に焼き上げられたパイ生地は、繊細な模様が施され、表面は黄金色に輝いている。
綺麗な色のソースでお皿にお花や葉っぱのイラストが描いてあってとっても凝った一品だ。
銀のフォークをゆっくりと入れると驚くほど軽く、そして繊細な感触。断面からは、濃い紫色のアスポロスベリーと、丁寧にカットされたベーコンの層が顔を覗かせる。
一口味わうと、熟成されたベーコンの奥深い旨味とアスポロスベリーの上品な酸味が、口の中で溶け合う。
「おいひぃ!」
キッシュってこんなに美味しいんだ!びっくり!キッシュにはいっている生クリームとチーズも濃厚でこの一皿で十分お腹もいっぱいになってします。
窓から差し込む柔らかな光を浴びながら、ゆっくりとキッシュを味わう時間は、まさに至福のひととき。隣の席の貴婦人たちは、優雅な身のこなしで紅茶を楽しむ。
お子様なので、満腹になったらちょっと寝そうなのはご愛敬。
マッケンジー夫人と大人しく馬車で帰宅をしてお父様とお母様が帰宅するまでアナスタシアはお昼寝をすることにした。
この後は家族でお出かけが待っているので体力温存だよ!
あっという間にいつものぬいぐるみ達に囲まれてしまう。
ちょっと一休み。
スヤァ……。むにゃむにゃ……。




