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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
新しい人生は突然に
28/40

精霊とバレエ

誤字報告ありがとうございました。

とっても嬉しいです。

今後とも宜しくお願いします!


アトレータ二日目。


昨日はサンドイッチの後に簡単に街を探索して雑貨やお菓子を買ってもらって帰った。

お父様とお母様にもキラキラマジカルステックの熱狂ぶりを一生懸命報告し、アトレータにもお店が必要になっちゃうかもよーなんて話をして盛り上がった。



今日の午前は、マッケンジー夫人とバレエを見に行くことになった。この土地ならではの人気の演目で、夫人は早くから手配をしてくれていた。


アトレータ劇場広場に面して堂々とそびえ立つ外観は、とても豪華。

劇場の周辺は、アトレータ劇場大通りを中心とした美しい街並みが広がっていて、建物と周囲の景観が調和した優雅な雰囲気を醸し出している。



劇場の屋根は、太陽の光を浴びて金色に輝くドーム状になっている。壁面には、精霊や音楽を象徴する彫刻が数多く施されており、その精巧な美しさに目を奪われる。


エントランス(正面玄関)を飾る円柱は、さまざまな装飾が施され、重厚感と華やかさを兼ね備えている。

夜になると建物全体がライトアップされ、昼間とは異なる幻想的な雰囲気になるのだとマッケンジー夫人が教えてくれた。




「夜の劇場もとてもロマンティックで素敵なんですよ」


「デートしたの?」


「ふふふ、そうですよ」


「昨日は皆とアスポロス語でお話してても大丈夫だったけど、ちゃんと内容が分かるか心配だわ」


「アナスタシア様、ご安心ください。バレエは科白(セリフ)はございません。踊りと音楽で表現致します」


「じゃ、安心だね」


「えぇ。そして、ここアスポロスでは精霊信仰がある土地ですので、精霊の演目が人気です」


「へぇー。精霊がいるんだ!楽しみ!」




劇場の美しい階段を上がり、ボックス席に案内され開場までの間にドリンクなどを聞かれ、くつろぐ間にマッケンジー夫人に簡単に教えて貰ったあらすじとしては




 昔々、アスポロスのどこかにあった、とある美しい村に主人公である村娘ギーゼラが住んでいた。

ギーゼラは純粋で踊りを愛する村の人気者。彼女は身分を隠した貴族の青年オールブレクトと恋に落ちるが、とある事をきっかけに命を落としてしまう。


 舞台は変わり、月明かりが照らす静かで神秘的な森。未婚で悲しみのまま亡くなった娘たちの霊、ヴィリスたちが棲む世界。悲しみを纏う(まと)純白のヴェールと美しいドレスを身にまとったヴィリスたちは、冷たく美しい死の精霊に率いられ、夜の森を彷徨う。

 ヴィリスたちは、夜の間に出会った男たちに復讐を遂げる精霊たち。オールブレクトは、ギーゼラの墓前で後悔と悲しみに暮れているところをヴィリスたちに捕らえられ、呪い殺される運命に。

しかし、ギーゼラはオールブレクトを愛するが故に、彼を必死に守ろうとする。




というものだ。

初めてのバレエに楽しみで胸がドキドキする。



舞台の幕が開くと、目に飛び込んでくるのは、緑豊かな田園風景。収穫祭での村人たちの喜びが、表情や身振り、そして踊り全体から溢れている。女性たちは色とりどりの民族衣装を身にまとい、花飾りで髪を彩り、男性たちは力強く、陽気な踊りを踊る。


主人公のギーゼラと平民に扮したオールブレクトが恋に落ち軽やかで優雅でロマンチックな踊りうっとりする。

ここまでは、ピュアな子供も恋に夢見てポワァーと目をハートにするだろう。




問題はここから、怒涛の裏切りからの絶望死。

えぇ?結婚を誓い合ったのに、実は貴族でしかも婚約者おったんかーい!!と思っている間に一幕が終了し休憩をはさむ。ギーゼラの絶望と、あまりの狂乱ぶりに驚きポカンとしている間に休憩が終わり第二幕が始まる。




舞台は暗く静まり返った森の中。

月明かりだけが、白い墓石をぼんやりと照らし出している。ひんやりと、そしてどこか物悲しい雰囲気が、幻想的な世界。


一人の悲しみの霊、ヴィリスとなった女性が結婚式のような白いチュチュ(ドレス)にヴェールを被り現れる。

パッとヴェールが取れると美しい死の乙女、ヴィリスが悲しみと恨みを込めた舞を踊る。

同じ衣装の複数の死の乙女ヴィリス達が集まり踊りだす……。


そこに何も知らず、こっそりと夜に墓参りに現れるオールブレクト。

恨み辛みをぶつける未婚で死んだ乙女達。助けたいヴィリスになったギーゼラ。

美しく純粋なギーゼラの愛によって生き延びるオールブレクト。




大歓声の中、舞台の幕が下りる。

アナスタシアはボックス席から身を乗り出して周りを見ると感動して泣いている女性ばかり。

ブラボー!ブラボー!!と声が響く。

横を見上げると、立ち上がり拍手を送るマッケンジー夫人の瞳も潤んでいる。


え?オールブレクト生き残るの?

元からいた婚約者の貴族の娘と結婚すると思うんだけど……。

え?主人公のギーゼラさんよ。それでいいのか。

そういや昔、あっちの世界でも友達がバレエの王子やヒーローは(くず)しかいないって言ってたのを思い出したよ……。


そして、精霊や死の乙女のヴィリス達がホラーすぎて怖かったんだけど。

こっちの精霊って関わったらヤバイ系?実在したら嫌なんだけど。

どこまでがフィクション?


確かに、衣装も踊りも美しく素晴らしかったけど。

ギーゼラが死後もオールブレクトを思い続ける、まっすぐでピュアな愛を称賛するべきなの?



ピュアな4歳児の心で舞台を楽しむことが出来なかったアナスタシア。

今度はハッピーエンドを見たいな……。







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