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オルサポルタから始まった  作者: 泰藤
新しい人生は突然に
20/40

鉄道開業式典 2


特別待合室を出て駅員の案内のもとプラットホームへと向かうアナスタシアは既に胸がドキドキしていた。

プラットホームでは、1等車、2等車を担当するポーター達が忙しそうに顧客の沢山の荷物を手に、列車へ順番に運び込んでいる。その姿は、これから始まる式典への誇らしい期待と、少しの不安を滲ませているようにも見えた。



駅員の案内のもと、お母様と私と侍女とマッケンジー夫人の4人で先にこっそりと車両の列車の最後尾に乗り込む。


バーカウンターは、出発前の静けさの中に、これから始まる旅への期待感が漂っていた。大きな窓からは、プラットホームに降り注ぐ朝の柔らかい光に包まれ、磨き上げられた真鍮のカウンターに反射し、きらきらと輝いている。


駅員の案内で最後尾はバー車両でバーカウンターがあり、カクテル、軽食、ジェイブルーエクスプレスのお土産などの販売が行われるという。

バーテンダーは、開店の最終確認をしながら、私達に向けて笑顔で挨拶をしてくれる。


カウンターの中には、朝日に照らされたクリスタルグラスが、まるで宝石のように並んでいる。その隣には、これから始まる長い一日を象徴するかのように、様々な種類の酒が静かに佇んでいた。


アナスタシアは大人だったらお酒が飲めるのにと残念がりながら、列車の限定記念品とか販売していたら欲しいな。などと考えながら車両を眺める。

ほぼ1両丸ごとバーカウンターに並ぶスツールとソファとローテブルも準備してあり、その先には3等車のコンパートメントキャビンに繋がると現れたトレインマネージャーが駅員から引き継いで案内をしてくれる。




3等車のコンパートメントキャビンは小さいながらもゴブラン織りのような綺麗な花柄のソファになっており、夜になると2段寝台へと変わるらしい。

何両か歩き進めるとレストランが現れ、その先には2等車両のスイートキャビン、レストラン、生演奏をしてくれるラウンジと最後に1等車両のグランスイートへと到着をした。


それぞれ、担当者が部屋に付くらしく、各部屋も簡単に見学をさせてもらい、小さいながらもそれぞれ寝泊まりするには十分すぎるほど豪華な内装やアイテムにアナスタシアのテンションはずっと上がったままである。


ずっと昔にいつかヨーロッパなどで経験してみたいと思い描いていた豪華列車にとても似ていたので、夢が叶った!と密に感涙の涙を零しそうになるアナスタシア。


お母様達は楽しそうにコンパートメントキャビンについて盛り上がっていた。



「コンパートメントキャビンは2段寝台ですって、上の寝台で寝るには梯子を使って上るんですって」


「まぁ!楽しそうね。 今度旦那様に相談してみようかしら」


「絶対に止められますわ」


「そうね、でも貴方の気持ちもよくわかるわ」



そのような会話をしながら15両ほど続いた長い列車の来た道を戻り最後尾の列車から降り、駅舎にある特別待合室へと仲良く戻るのだった。



お父様達の最終確認も終わっていたようで、笑顔で出迎えてくれた。



「おかえり、楽しかったかい?」


「えぇ、先にゆっくり見せて貰えて楽しかったわ。ねぇ、アナスタシア」


「はい!とっても楽しそうなところが沢山ありました!」


「そうかい、それはよかったね」


と仲良く話をしていると、鉄道開業式典が開始するということでプラットホームへと移動する事になった。

音楽の生演奏が奏でられ、太陽の光も高くなり始めた頃、ついに、鉄道開業式典が幕を開ける。




「只今より、ジェイブルーエクスプレスお披露目及び鉄道開業記念式典を始めます!」




駅長の声が、集まった人々の中に響き渡る。

今回のジェイブルーエクスプレスへの乗車切符を持つ貴族や豪商、そして見送りに来た家族達、記念式典に招待された人達が、期待に胸を膨らませながら、ホームの先に停まるコバルトブルーに白と黒、更にゴールドのアクセントが入った車両に注がれる。



「『ジェイブルーエクスプレス』は、プルデンス国から取り入れた最新の技術を駆使し、安全性、快適性、そして審美(しんび)性を追求した、まさに新世代の大陸横断を象徴する車両です!今後とも皆さまのご利用を私共一同はお待ちしております」



最後に、駅長、お父様、他にも駅の開通に関わった人達によるテープカットが行われ拍手が鳴り響く。


すると1両社の乗客から順に駅の職員たちに案内され列車に乗り込み始める。

アナスタシアも車両の中から窓を開けてもらい、それぞれの車両へと家族や友人と別れの挨拶をして乗り込む人達を眺める。


全員の乗り込みが終わった頃に

カラーン、カラーン、カラーン、とハンドベルを合図が鳴り響く。



「出発進行!」



駅長の合図とともに、色とりどりの紙吹雪が舞い上がった。その瞬間、ホームは祝福の歓声と拍手に包まれ、車両がゆっくりのレールの上を走りだした。


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