言葉と一族の秘密
マッケンジー夫人との勉強も大詰めを迎え、訪問用の私の洋服の内容もほぼ決まり、その他の準備も始まった頃に、今使っている言葉について聞いてみた。
「マッケンジー夫人!私達が使っている言葉は他でも使われているのですか?」
「えぇ、ここから南側にあるフラーテルとエクェスでも使われております。この言葉を使う者達はエルフと話すことが出来る、エルフの末裔達と思われています。一般にも古い言語と認識されています。」
「エルフ!エルフとお話が出来るのですか?」
「ふふふ、そう一般的には思われておりますが、実はエルフの末裔ではなく私達一族がエルフであるのでこの言葉を使うのです。」
「え?どういうことですか?エルフ?」
「はい、今はエルフ以外も、ここで生まれ育った者達も増え皆がオルサポルタの言葉を話すようになりましたが、起源である一族は皆、ハイエルフやエルフです。」
え?エルフって森に住む耳の尖った人達と思っていたんだけど違うのかな?今までの世界とこの世界では認識が違うのかもしれない。どうやって確認をしよう。
アナスタシアは慎重に言葉を重ねる。
「お父様もお母様も私も、皆そうなのですか?」
「えぇ、ただ、特徴的な耳などが原因で昔は誘拐される者が後を絶ちませんでした。ですので、特徴的な部分は魔術で分からないようにして暮らしている一族がオルサポルタの者達です。」
「知らなかった!」
「えぇ、一族の秘密ですからね。勿論、エルフとしての沽券があり、そのままの姿で他の種族とは関わらずに生活をしている一族もおります。滅多にはありませんが、その者達が人里に出てくるとエルフだと大騒ぎになる事がありますね」
「まぁ!そんな事があるんですね」
マッケンジー夫人は少し困った顔して答える。
「はい、エルフは美しく、古代の魔法を使うとされており、その身には特別な魔法を宿していると考えられている為、体の一部を実験に使われたりと酷い目にあって来た歴史がございますのでアナスタシア様もお気を付けくださいね」
「は……はい。気を付けます」
知りたくなかった怖い現実に怯える事になりそうだ。
人体実験とか嫌すぎる。そりゃ隠して暮らすよ。
セレブのお家に生まれてラッキーとか思っていたら、思いもしない落とし穴があった気分だ。
痛いのダメ!絶対!
ちょっと、怯えてしょんぼりとしてしまったアナスタシアにマッケンジー夫人は話を続ける。
「先ほどの話に戻りますが、フラーテルとエクェスも同じ一族が地域を管理しておりますので、皆とても友好的ですし、子供の間にオルサポルタの学校へ学びに来る者達も多くおりますので、いずれお友達として出会うこともあるでしょう」
「じゃ、いつか会えるのですね!楽しみです」
「そうですね、今回お話をしたのはオルサポルタの外へ出るという事もありますので、知らない人にはついて行かない事を注意して頂きたかった為です。よろしくお願いいたしますね」
「はいっ!」
そうだよね。遂にオルサポルタの外まで行くんだものね。どんな事があるか分からないし、まだ子供だもの注意をするにこしたことはないのは間違いない。
あとは現地でアスポロス語を沢山使って習得するのみ!
可愛いワンピースもいくつか準備して貰っているし、旅行鞄もこの前見せてもらったけどとても、とても可愛かった。昔の自分では選ばないチョイスだけど、新しい人生は今まで選ばなかった物を選んだり色々な意味で冒険をしていこうと思ったりしている。
アトレータまでの移動も結構楽しみにしているんだよね。
お父様とお母様は移動中も忙しくてあまり一緒にいれなくてごめんねと先に謝ってくれているので、マッケンジー夫人と大人しくしておこうと思っている。




