雪深い国々
家庭教師のマッケンジー夫人を前にアスポロス語で
「初めまして。わたくし、アナスタシア・ソナ・オルサ・ケアナード・トゥースゲアタと申します」
と挨拶の練習を行い初めて自分の長い呪文のようなフルネームを知ることになったアナスタシア。
挨拶の動作やマナーも一緒に学ぶ事になったが、私の名前こんなに長いのにびっくりした。
何度も練習をして自分の名前を覚えるが、唯一の救いは4歳児の脳みそはスポンジのように新しい事を覚えることが出来るのは救いである。
能力が前回の人生のままであれば詰みである。
今回は時間もあまりないので会話の勉強が中心であるが、今後は読み書きも随時進めていく予定らしい。
「マッケンジー夫人、どうして言葉が違うの?」
「そうですね、そのあたりに関する国の成り立ちもアナスタシア様へ説明をした方がよいでしょう」
「うん、知りたい!知りたい!」
「まず、ノバアルビオンという国は大陸北部の雪深い地域にある複数の国や地域が元になっております。」
「なるほど」
「今よりもずっと昔は雪深い国の生活は大変でしたが、そのような環境下でも大きく発展を遂げた国がいくつかありました。それぞれの国の王たちは優秀で民を愛し大切にしていましたので、戦いによって領土を広げるよりも協力関係を結びそれぞれの土地の生き残りを優先致しました。」
「その時の王様達は戦いが好きじゃなかったんだね」
「えぇ、そうです。それぞれの文化や使う言葉も尊重しつつ、国が友達になるより、もっと親密に助け合う必要もありました。結果、ノバアルビオンでは同じ金貨や銀貨などを使い、悪い人間が移動すれば知らせを送り、大雨で水が溢れたりや森が燃えたりした場合は助け合うようになりました。」
「へー」
「その後、その助け合いがとても上手くいったので、自分達も加わりたいという地域などが増えていき、雪が降るような大陸中央あたりまでノバアルビオンが広がり今になります。」
「じゃぁ、ノバアルビオンは結構大きい国なのね」
「はい、そうですね。アトレータは大陸の中央寄りの所にありますので、集まりやすく、皆で集まって話し合いをする時やノバアルビオンの大事な仕事に関わる人達は皆話せる必要があります。」
「私、お勉強頑張る!」
「そうですね。中央はアスポロス語ですが、西部もまた言葉が違いますので、西部の言葉も訪問する機会もあるでしょうから、学んでいきましょうね」
「えー!覚えることいっぱい!」
マッケンジー夫人は笑顔でなかなかスパルタな事を言いつつも、幼い子供にも分かるように言葉を砕いてくれて、その後も質問に答えたり、詳しく教えてくれたりした。
内容は簡単にいうと、各地域の自治は昔のままの統治者達が受け持ち、通貨統一や関税の引き下げ、入国管理の簡易化、犯罪者や災害情報の共有化を行うことで各地域の生活や治安が向上したので参加する国や地域が広がっていったということらしい。
もっと詳しい事はもう少し大きくなったら学園に通うのでその時に学ぶので、今は必要ないらしい。
協力しあう必要があるほど雪深いって大丈夫かな。
今から冬が心配だよ。
だって、移動には馬車が走ってるんだよ。どうやって雪道とか走るんだろう。
そんな事を考えているとジュースやお菓子が用意された。
今日は真っ赤な色のジュースだ。
「この赤い飲み物は?」
「これは先ほどお話したノバアルビオンの西側、今度訪問するアトレータや更に向こう側の地域の果物のジュースです」
「甘くてすっぱくて美味しいね」
「そうですね。ただ、かなり距離がありますので、シロップに加工された物の水割りになります」
赤いジュースと一緒にクッキーを頬張りながらアスポロス語でジュース、クッキーと単語も一緒に教えてもらうのだった。
こういう生活に沿った方法だと新しい言葉も覚えやすいからとても良い。




