農園でブルーベリー狩り
今日もご機嫌で自称魔法少女のアイテムである、『転んでも痛くないドレス』、『いくらでも歩けるブーツ』、『いっぱい入る不思議なポシェット』をご機嫌で装備。
ピピロッテとお揃いのエプロンドレスも身に着け、更には綺麗な飾りの付いた麦わら帽子を顎の部分で太くて可愛いリボンで結びしっかり取れないようにして貰っている。
キラキラ光るマジカルスティックをブンブン振り回すアナスタシアはクルンと回ってキラキラを楽しみながら初めての遠足の集合場所であるお城の近くの巡回馬車の停留所にいる。
朝食後、お父様とお城で別れた後、キラキラステック仲間の皆と集って、巡回馬車に乗せられて行く先は城内にある農園の試験場である。
引率の大人達に馬車に乗る時にステックを鞄にしまうように言われ、ピピロッテや他の子の分も預かったところで巡回馬車は動き出す。
試験場の農園では野菜、薬草、果樹など複数あり、今回はブルベリーの果樹園を見学する事が決まっている。
この試験場で様々な実験が行われており、上手くいけばオルサポルタの農園などで活用される事になる。
到着するとブルーベリー果樹園の担当者は、子供たちを歓迎し、作業小屋の前でブルーベリーの摘み方や注意点、危険な場所などを説明し、手提げが一つ付いた小判型の小さな籠を配っていく。
燦燦と輝く太陽の光を浴びてキラキラと輝く緑の葉が子供の腰から背丈ほどに育ったブルーベリーの木々が、長く続く緑の小さな壁を作り、その間を縫うように細い道が続いている。
近づいてみると、葉の陰に隠れるように、小さなブルーベリーたちが顔を覗かせていた。
まだ若い実は、エメラルドのような淡い緑色で、まるで小さな真珠のよう。でも、太陽の光をたっぷりと浴びて熟した実は、吸い込まれそうなほど濃い青紫色に輝き、表面にはうっすらと白い粉をまとっていた。
その大きさは、子供の指の先ほどのもので至る所に鈴なりに実っている。
そっと熟れたブルーベリーを摘み取って口に運ぶと、プチッとはじけるような感触とともに、甘酸っぱい果汁が口の中に広がる。濃厚な甘みの中に、ほんのりとした酸味が顔を出し、まるで小さな幸せが弾けたかのよう。口の中に残る、かすかな土の香りと、太陽の温もりを感じさせる風味だ。
実の中も濃い赤色で味がぎゅっと詰まっているいるのがよくわかる色合いだった。
「味が濃いぃ、おいしーい!」
とアナスタシアが唸っていると、ピピロッテがクスクスと笑いながら答える。
「えぇ!とっても美味しいです。沢山食べましょう! 今日の収穫分はジャムになるんですって」
周りを窺うと他の子供達も籠に入れるよりも夢中になって食べている子の方が多そうだ。
モリモリ食べて落ち着くとパーーーン!、パーーン!響き渡る音が気になるようになった。
「ねぇ、さっきからパーン、パーンって音が鳴っているんだけど、何の音かしか?」
と近くに居たブルーベリーの果樹園の担当者に聞いてみた。
「あぁ、あれは自動設定された魔導散弾砲の音ですね。空に向かって撃っております」
「え?どうして空に向かって撃つの?」
「それはですね、このブルーベリーは特殊な品種で、とても味が濃く美味しいのですが、一度収穫をすると2年は実らなくなってしまうのです。その特別美味しい味を知っているのは我々だけではなく鳥たちも知っておりましてね。」
「こんなに美味しいものね。つまり、鳥除けってこと?」
「はい、そうしなければ根こそぎ食べられてしまいます。あの魔導具でどれだけ防げるか実験中です」
「そういうことなのね」
「まぁ!鳥たちに食べられる前に私達で食べてしまいましょう!」
とピピロッテが焦りだしたのが面白くて少し笑ってしまう。
皆、十分食べて満足したら籠いっぱいにブルーベリーを収穫して巡回馬車で朝の集合場所へ戻ってくれば料理長へ皆のブルーベリーを持参し解散である。
「とっても美味しいですね、今回はジャムに致しましょう」
と料理長の笑顔を見てアナスタシアとピピロッテ達は笑顔になる。
それぞれ、翌朝には瓶詰が届けられたようで、朝からアナスタシアと両親はとびきりのジャムを楽しむのだった。
美味しいけど、美味しいけど……皆で食べたら今日の1回でジャムなくなっちゃったんだけど!!
試験場の皆のブルーベリーの品種改良と鳥除けの成功を切に祈るアナスタシアだった。




