表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/4

なんか知らんけど転生するらしい

初投稿です。温かい目で見てください。

「お主死んだけど生まれ変わるなら何がいい?」


「え?」


気づいたら辺り一面は白く、目の前には好々爺としながらも、どこかこの世のものざらなる雰囲気を持ったおじいさんがいた。


今の今まで自分が何をしていたのかを思い出そうとしても、モヤがかかったように思い出せない。

なんなら親の顔や自分の名前も思い出せない。


「あー、生前の頃を思い出そうとしても無理じゃぞ。今のお主は転生前で魂のパーソナルな部分の多くを真っ白な状態にされとるからの」


言われてみると、有名な名前のない猫の小説の作者や、空気の大部分が窒素であるということは思い出せる。確かに自分の名前がパーソナルな情報であれば、こちらはパブリックというか常識的なことであると言えるだろう。


死んだと言われたのにもかかわらず、冷静に現状を整理しようとするのは、生前の自分が死んでも冷静さを失わないようなスーパーマンだったのか、それとも目の前の推定神様が何かしらの超常的な能力を用いたせいなのか。


「そろそろよいかの?」


「あ、はい、そうですね。だいぶ自分の置かれた状況が普通じゃないことはわかりました」


俺に残された常識ーーーそもそもどこからが常識かなどというのは主観で変わりそうなものだがーーーはこの太陽や照明も無いのに明るく、壁や天井もなく無限に広がっているように感じる部屋に、どこか威圧感のあるおじいさんと二人きりであるこの状況を普通とは判断しなかった。


「それはそうじゃ。先ほども言ったようにお主は死んで転生を待っているんだからの」


「一体俺はなぜ死んだんですか?それに転生するというのは決定事項なんですか?転生するならちゃんとヒトに生まれかーーー」


「待て待て、そんな1度に質問されても困るわい」


どうやら俺は落ち着いたりはしていなかったようである。でも自分が死んだって言われたらそりゃ死因くらい気になるでしょ。転生だって人間ならいいけど、ミジンコとかには生まれ変わりたくないし。あ、でもドラゴンとかならアリか?でも結婚相手もドラゴンのなるのか。ドラゴンを性的対象として見れる自信はないなぁ。


「落ち着かせたら落ち着かせたで考える()を与えることになるのじゃな…今度からはあまり時間を与えないようにしなくてはいけんな……」


何かぶつぶつとおじいさんが呟いている。聞き取れはしないが神様にも悩み事があるのかもしれない。


「今お主が思っている通り、わしはお主からしたら神にあたるものじゃよ。悩み事もまぁある。あとお主が死んだのは子供を守って通り魔に刺されたからじゃな。お主のおかげで子供が逃げて他の大人を呼べて犯人も捕まって一件落着したようじゃ」


いや心読むなよ。それに俺が死んでる時点で一件落着とか言っていいのかそれ?まあでも生前の俺は子供を守って死んだのか。理想の死に方ランキングなんてものがあるならかなり上位に入る死に方では無いだろうか。


そんな勇敢な死に方をしたからこうして転生をする魂になれたのかもしれない。


「いやお主が転生魂に選ばれたのはタイミングがちょうど良かったからじゃな」


なんやねん。じゃあ俺が守らなかったらその子供が転生魂とやらに選ばれてたんかい。じゃあ俺が守ろうが守らまいがその子は一応は生きたのか。現世から来世かは知らないけど。


「とはいえお主のその清い行いに免じて、転生先は選ばせてやろうとは思っておる」


前言撤回。ナイス前世の俺。その清く崇高な心にワインで乾杯しようじゃないか。前世の俺は死んでいるから代わりに今世の俺が2杯飲んであげるね。ってそんなのただの晩酌じゃん。


「転生先の世界と、身体が赤子ではなく子供であることは決まっておるがの。おぬしの行く国は中世ヨーロッパのような感じで剣と魔法の世界といえば伝わるかの?他の国々はまた別の発展を遂げてはいるが、科学技術はお主の世界ほど進んではおらぬな」


どうやら転生してすぐには乾杯できないらしい。まぁ世界観はよくある転生系の小説やらアニメみたいな感じか。だいぶイメージがつきやすくて助かる。おそらく極東には日本のような国があって、そこに行くか取り寄せて米とか醤油を久しぶりに食べて感動するやつだ。


てかおじいさんが心読めるから話さなくてもいいの楽だな。変なこと考えられないって言ってもそんなの考えるほどの余裕もないし。


「そうじゃな、大凡その考えで間違い無いじゃろう。む、悠長にしていたらもうあまり転生まで時間がないようじゃな」


え、確かに今いる謎空間が少し明滅しているけど、これってもう転生まで時間がないってことなのか。ますます余裕ないじゃん。


「簡単にいえば、一時的にお主とわしのようにランクの違う魂を対話できる空間を作っているわけじゃからの。お主の世界は今は我らとの繋がりも薄いし、かなりのエネルギーを要するのじゃよ」


確かに日本は置いといて、世界ではキリスト教やらイスラム教やらは広く信仰されているわけだけど、神がいるとは信じられていても神と会話できるなんて話は聞かないもんな。自分がお告げを受けただとか、イエスの生まれ変わりだ!とか言ったところですぐに精神病院にドナドナされるだけだ。とか考えてる間にも明滅は早くなっていく。これ大丈夫なん?


「パパッと生まれの地位を決めてしまうぞ。スラム、町人、下級貴族、中級貴族、上級貴族の5種類がありそれぞれメリット、デメリットとか色々あるがそれをいちいち説明する時間はないからの。ほれ、早く決めなさい」


いやいやそんないきなり言われても。メリット、デメリットって言っても少なくともスラム生まれにメリットがあるとは考えられないがどうなんだ。


雑草を食べたり泥水を啜るような不遇な状況にも負けない忍耐がつくとか?

だとしたら転生した後に死に物狂いでこのおじいさんを張り倒す方法を探すことになるだろう。


「こ、怖いことを考える前に早く転生先を決めなさい」


震えながらおじいさんが言うが、こんなことを考えたのはあなたが迅速に話を進めてくれなかったからですよ?

それに怯えていると言うことは、案外神様とコンタクトを取ることは転生先の世界では難しくないのかもしれない。


「は、は、早く決めなさい!!」


どうやら俺の予想は当たりなのかもしれない。だがこんな益体もないことを考えている間にも、部屋の明滅はさらに早くなり、タイムリミットまでもう間も無くであることを知らせる。


「じゃあ上級貴族でお願いします」


結局メリット、デメリットに関しては説明がないのだから検討もつかない。ならば一番地位が高くて不便もなさそうな上級貴族にするのが無難だろう。


世の中には金で解決できないことの方が少ないのだ。


「あいわかった!上級貴族じゃな!お主が決めたのじゃから文句は受け付けぬぞ!!」


「いやそもそも神様が十分な説明をしてくれず、考える時間も少なく、押し売り訪問のようなやり方をされたんですから、文句を言う資格はあるはずーーー」


「お主の新たな人生に幸多からんことを!!」


半ば無理やり、というかかなり無理やり俺の反論は封殺され、定型分のような言葉とともに俺は光に包まれた。






光に1分ほど包まれていただろうか。


豪華な天蓋付きのベッドで目覚めるのかなとか、見た目は金髪碧眼で髪はふわふわな王子タイプかな、それとも赤髪でツンツンな俺様タイプとか?いやいや青髪で切れ長な瞳が印象的なインテリクールキャラ?


とか色々考えながらワクワクしていた。最後に厄介な客のように小言を言ったが、なんだかんだ転生、しかも地位は成功が約束されているようなもの、と思ったら誰しもが胸を期待に躍らせるだろう。


そうして光が収まり、俺の目に映ったのはーーー






天井には穴が空き、角には蜘蛛の巣が張っているようなボロボロの石材でできた家屋と、その中で横たわる女性の姿だった。

誤字・脱字・意見なんでもあったら言ってくれると助かります。

面白いと感じていただけたら、ブックマークと評価をぜひお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ