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エンジェリックガールズ  作者: 柚里カオリ
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第13話 大天使ジェレミエル

「……ん……」


「あ! せんせーい! 恵慈(えちか)ちゃん起きたよ~!」


「⁈」


 保健室のベッドの上で目を覚ました恵慈は、自分の隣で椅子に座り、先生を呼んでいる羽衣の姿を見て、ギョッと目を見開いて身体を起こした。羽衣の膝の上に座っているレオが、じぃっと恵慈を見つめている。すると「は~い」と羽衣の声に応え、保健室の先生がベッドに近づいてきた。


(せせらぎ)さん、大丈夫? またお腹痛くなっちゃったの?」


「え、え……? わ、私……」


「恵慈ちゃんね、羽衣たちの目の間で倒れたの」


 羽衣が「心配したんだよ?」と恵慈の顔を覗き込み、恵慈は「ひっ⁈」と思わずのけ反った。


「僕たちで運んだんですよ。先輩」


 近づいてきたのは綺心だ。綺心の後ろには、保健室のソファーの上に座っている輝星の姿が見える。輝星は恵慈に一切の興味を示さず、ルックと戯れていた。


「粼さんはその極度のあがり症を治した方がいいわねぇ。保健委員なのに、誰よりも保健室にいる時間が長いもの。じゃあ、先生は会議があるので少し出て行きますね。落ち着くまで部屋にいて大丈夫だから」


「羽衣たちが付いてるから大丈夫だよ!」


「ふふふ。粼さんにもお友達が出来たみたいで嬉しいわ」


 先生は微笑むと部屋から出て行った。恵慈はその様子をポカンと眺め、ハッと我に帰る。綺心と羽衣が恵慈のことを見ていた。


 恵慈の顔が湯気が出そうなほどに真っ赤に染まり、恵慈は二人に向かって大慌てで頭を下げた。


「す、すすす、すみません‼ ご迷惑をおかけしまして……‼」


「大丈夫だよ~。ちょっとびっくりしたけど」


「ごめんなさい‼ ごめんなさい‼」


「謝らないでください、先輩。ところで、その、さっきのことなんですけど……」


「ジェ~レ~ミ~エ~ル~」


 とてものんびりとした声と共に、後ろから恵慈の頭の上に飛び乗って来たのは、レオたちと同じエンジェリックだった。


「いやあああああ⁈」


 驚いた恵慈が悲鳴を上げて頭を振り、エンジェリックが振り落とされる。振り落とされたエンジェリックはベッドの上にポスンと落ち、そのまま寝転んだ。


「ひどいよ~? 僕を置いていくなんて~」


 寝転がりながらのんびりとした口調で言ったそれは、薄紫色の毛皮を持つ、たれ耳のウサギのぬいぐるみに似たエンジェリックだった。額にレオたちと同じような石がはめ込まれている。ひどく眠たげな眼をしているそのエンジェリックは、動作もゆっくりだった。


「ま、まま、マーシー……‼ 驚かせないでぇ……‼」


 恵慈が今にも泣きだしそうな声を上げる。羽衣はその様子に「ええっと……」と少々困惑しながら口を開いた。


「恵慈ちゃんは天使……?」


「あ‼ す、すみません‼ 自己紹介もせず……‼ わ、私は(せせらぎ)恵慈(えちか)。大天使ジェレミエルです……」


「神の慈悲、大天使ジェレミエルだ~よ~。僕は~エンジェリックの~マ~シ~。みんな~、久しぶり~」


 マーシーが寝転がったままエンジェリックたちに手を振る。グレイシスが小さく息をつき、レオは頭を抱えていた。輝星はいつの間にかに羽衣たちの後ろまで近づいてきていて、輝星に抱かれたルックがマーシーに「久しぶり~」と手を振った。


「気が付かなかったな……この学校にいる天使は全員把握したと思っていたのだけど」


「私は気づいていたヨ! 綺心!」


「す、すみません……私、影が薄いですから……」


「仲間に入れてくれってどういうこと? 恵慈ちゃん」


 羽衣の問いかけに恵慈が一瞬目を見開き「え、えっと……」と口を開いた。


「わ、私は影が薄いですし……よ、弱いですし……そもそも、戦闘向きな能力じゃなくって……ひ、一人で悪魔と戦うなんて、そんなことしたら死んでしまいますし……天使の決闘なんて、恐ろしくって……! だ、だから……み、皆さんの共闘関係に私を入れて欲しいんです……‼」


「僕たちが共闘関係であること、なぜ君は知っているんだい?」


「へ⁈ え、えっと、ま、マーシーが……」


 恵慈がマーシーを見ると、マーシーはベッドの上でスヤスヤと寝息を立てていた。


「マーシー‼」


 恵慈が慌ててマーシーの身体を揺さぶり、「んん……」とマーシーが目を開ける。マーシーは「ふぁぁ」とあくびをすると、起き上がった。


「な~に~?」


「せ、説明を……‼ 説明をしてください……‼ 私が疑われてしまいます……‼」


「なにが~?」


「……いいわ。ジェレミエルのエンジェリック、マーシーがこんな感じにも関わらず、それなりに仕事が出来ることはエンジェリックの中でも有名な話よ。優秀なエンジェリックや天使なら、私たちの共闘関係にすでに気が付くのはおかしな話じゃない」


 口を挟んだのは、グレイシスだった。グレイシスが険しい表情で綺心を見る。


「だからこそよ、ハニー。この共闘関係を増やせば増やすほど、他の天使にバレるリスクが高くなる。これ以上、仲間を増やすのは危険よ。ただでさえ、目立つ天使が多いのだから」


「グレイシス……」


 グレイシスの厳しい口調に、恵慈は不安そうな表情でオロオロしている。マーシーはたいして焦ることもなく、大きなあくびをした。

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