幕間の物語:次男の憂鬱
貴族ではない身分の奴が聞いていたら、怒られそうだけどさ。
ホント、貴族って面倒。
兄貴なんて見ていて可哀そうになる。
長男ではなくて良かった。
そう思う反面。
学生が終わったらそれはそれで大変だよな……。
いつまでも親のすねをかじるわけにはいかないだろうし。
伯爵家は兄貴が継ぐわけだし。
そう。
学生が終わったら、貴族の次男は意外と大変。
それが分かっているからさ。
束の間の楽園気分で、オレは学生生活を楽しんでいる。
◇
そんなわけで今日の舞踏会。
王太子とフランチェスカもジョフリーも、それと……アメリ。
まあ、いつものみんなが行くっていうからやってきた。
アメリ。
公爵家の令嬢で、フルネームはアメリ・デュ・プレシ。
クラスメイトで、王太子によく絡むから、王太子とジョフリーとつるむことが多いオレも何度かアメリとは話したことがあるけど……。
最初見た時は。
あ、可愛い子だな、って印象。
でも……。
王太子への食い気味な様子は、ちょっと引く。
もし王太子とフランチェスカが婚約していないなら。
もしかしたら、アメリを応援したかもしれない。
でも二人は幼馴染みで、生まれてすぐに婚約しているわけで。
そこに割って入ろうという勇気だけはスゴイと思うが。
その想いは実ることはないだろうから、早く諦めたら楽になるのに、と思ってしまう。
ともかく。
アメリはさておき。
いつものメンツがいるからこの舞踏会に来たわけだけど。
初めましての女子とダンスをしても。
自分の名前と次男であることが分かった瞬間。
相手の女子が自分に興味関心を失くしたことが分かる。
これは……正直辛い。
だってさ、一応ダンスを踊るってことは、見た目とかはOKだったわけで。でも身分が……伯爵家なのは問題ない。でも女子からすると「次男か……」ってことだと思う。しかも大人な女性をダンスに誘う勇気はまだない。そうなると同年代の女子に声をかけることになる。同年代の女子は社交界デビューしてまだ2年足らずだから焦っていない。つまり、伯爵家の婚約者がいない長男は探せば見つかると思っている。
というわけで。
本日もダンスの後におしゃべりをしてくれる女子に出会えず。仕方ないので軽食とドリンクを楽しんで。それでまあ、もうダンスはいいかなーと思い、テラスへ向かうことにした。
6月も近づくこの季節は既に初夏の入口。
気候も丁度良く過ごしやすい。
月も見えてきて、寛ぐにはいい感じだ。
のんびりテラスに出て。
そのままテラスからつながる中庭に出ようとしたその時。
一人の女子が足早にこちらへ向かってくるのが見えた。
淡いラベンダー色のドレス。
月光に照らされる綺麗なホワイトブロンドの髪。
まだ顔はよく見えないけど、こんな子、いたか……?
思わずオレはその女子に見惚れ、女子は女子で後方を気にして振り返り……。
オレとその女子はぶつかりそうになった。
「す、すみません。失礼しました。前を見ずに歩いていました」
「いや、こちらこそ、失礼した……って、あれ? 君、もしかして……」
驚いた。
クラスメイトのリラ・アルダンだよな!?
な、なんて美しいんだ……!
「リラ、だよな? クラスメイトの? 驚いた。舞踏会で見かけるのは、初めてだ。化粧をして、ドレスを着ただけで、こんなに変わるんだ。すごいな。ものすごく綺麗だよ」
本当に教室で見るのとは別人だ。
ドレスアップして化粧をしているだけではないのかもしれない。なんというか、普段は抑えているリラの魅力が、今は全開になっているみたいだ。
「褒めていただき、ありがとうございます。でもロマンこそ、とっても素敵です。髪型もいつもと違いますし。きちんと着こなすと、大人っぽく見えます」
……!
す、素敵。
ほ、褒められた……。
きちんと着こなすと、大人っぽく見える……。
そ、そうか。
正装とか、ビシッと決めるとか、かっこ悪く思っていたが。そうか。そうなのか。
明日、制服、着崩すの止めよう。
って、そんなことはいい。
「この舞踏会にきていたこと、今、気づいたよ。もしかして、一曲も踊っていないんじゃないか? せっかく舞踏会に来たんだ。踊らないと、もったいないよ。……オレでよかったら、踊らないか?」
頼む、イエスと言ってくれ、リラ。
「ダンス、誘っていただき、光栄です。では一曲だけ」
ヤッター!
「そうこうなくっちゃ」
もう嬉しくて仕方ない。
リラの手をとると。
なんて小さく可愛らしい手なのだろう。
肌がすべすべ。
それになんだか可憐に感じる。
というか。
リラの手をとってホールに戻ると。
男子達が羨望の眼差しでオレを見ている。
そうだよな。リラはこんなに綺麗で可愛らしい。
偶然だけど、オレ、リラとぶつかりそうになったのはラッキーだな。
ダンスを踊り始めると。
リラはとんでもなくダンスが上手い!
しかも。
「リラ、すごくダンス上手だな」
「そうかしら? ロマンのリードが、お上手なのだと思いますわ」
なんて、謙虚で控え目なんだろう……。
それにまた、褒められた……。
さっきからリラにかけられる言葉に、オレ、実はドキドキしっぱなしだ。
だがリラとのダンスはすぐに終わってしまい。
それどころか終わると同時に、リラの周りには男子が群がっている。
その男子の中には。
クラスメイトの奴が何人もいる。
でも奴らはリラだって気づいていない。
その瞬間。
オレは見つけ出すことができた。
リラのことを。
オレは他の奴らとは違う。
リラを見出すことができたんだ。
オレの中で。
これまではただのクラスメイトに過ぎなかったリラが。
特別な存在になった瞬間だった。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日、12時頃に幕間の物語を公開します♪
┬┬┬┬
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