76:ご褒美タイム
クロード様は、私が実年齢より若く見られることに困惑されています。なぜなのでしょう……?
「今日のリラは、そのドレスとお化粧のせいもあるだろうが、僕には逆に20歳ぐらいにしか見えない。制服の時のリラは……年相応に見えたが……。でもリラだって、来年で学校は卒業だ。制服ではなく、ドレス姿が増えれば、年相応に見えるはずだ」
クロード様は真剣な顔で、何やらブツブツと言われています。
前世で読んだ本では。例えばフランスでは、自立心を養うため、赤ん坊を一人で寝かせることもあるそうです。日本人とは違うこの感覚が、この夢キスの世界にもあるのでしょうか。子供っぽくいることより、早く大人の仲間入りをすることが求められている――つまり、私が15歳ぐらい見えるのは、あまりよろしくないのでしょうか……?
「いや、大丈夫だ。今日みたいにドレスを着てお化粧をすれば、ちゃんと大人っぽくなるのだから。問題はない。それに実年齢は17歳、間もなく18歳。問題はない」
「クロード様……?」
「なんでもないよ、リラ。ところでこのお肉に使われているソースは、もしやモリーユ茸かな?」
「あ、はい! そうです。ようやく市場に出回り始めたということで、コックさんが仕入れてくださりました」
その後は、しばらくお肉料理について話し、そのお肉を二人とも食べ終わったタイミングで、黒トリュフのパイ包み焼きの登場です。もう、運ばれてくる段階から、トリュフのいい香りが漂っていました。
かなりお腹もいっぱいになってきていましたが、これだけは絶対に食べないといけない!――そんな風に思わせてくれる香りです。
ナイフでパイを切り分けた瞬間。
「これは素晴らしい」
クロード様が唸っていらっしゃいます。私も同じくその香りに、陶酔中です。パイ生地の中には、たっぷりの黒トリュフとフォグラ。そこに贅沢に黒トリュフを使ったソースがかかっています。そのソースに絡め、切り分けたパイを頬張ると……。先ほどいただいた牛フィレ肉が、霞んでしまいそうです。
「こんなに美味しい料理をリラと楽しめるなんて……。最高だよ」
微笑むクロード様を見ていると……。
こちらこそ、クロード様のおかげで幸せです、と心の中で思ってしまいます。モブの私に与えられた一世一代のイベント。それが今日の夕食会なのでしょう。
モブなので、フラグもなく、のんびり生きられると思っていたら、焼死したわけですが。きちんとフラグを回避すれば、こんなご褒美タイムが待っているのですね……。
既に十分過ぎるぐらい、幸せを噛みしめていたのですが。
黒トリュフのパイ包み焼きを食べ終えると。
クロード様はお手洗いに行かれ、戻られると、庭園の散歩に誘ってくださいました。確かにこの後のスフレは、用意に時間もかかります。それにこの時点でかなり満腹なので、お散歩できるのは……イレギュラーなことですが、お受けしました。
クロード様にエスコートされ、庭園を歩き始めます。
庭園を散歩する予定はなかったのですが、ちゃんと道なりに沿ってランタンが灯されていました。問題なくお散歩できています。間もなく日没になるので、だいぶ暗くなりましたが、まだ完全に夜の帳が降りているわけではありません。虫の鳴き声を聞きながら、ゆっくりと歩いて行きます。
「リラ、この花はなんていう花?」
「これはヴェルヴェーヌです」
「レモンのような香りがする」
「はい。ハーブとして我が家では使っています」
「色は白、紫、ピンク……これもそれぞれ花言葉が?」
「ありますが、『私のために祈って』『後悔』『家族愛』ですね」
「……なるほど。さっぱりとした香りで、花も可愛らしいが、花言葉は思いがけなかった」
そんなことを話しながら歩いて行くと。
ガゼボ(東屋)につきました。
そこにはテーブルと椅子が置かれています。
さらにそのテーブルには、ひと際明るいランタンが置かれていました。そしてこのガゼボは、池に面しています。昼間は池に空が映りこみ、まるで水鏡のようになるのです。
お読みいただき、ありがとうございます!
遅い時間に訪問いただいた読者様、恐縮です。
こんな時間までお待ちいただき感謝でございます。
お仕事の後でお疲れの中、訪問いただいた読者様。
今日もお仕事お疲れさまでした!
帰宅途中でお読みいただいた読者様。
お気をつけてお帰りくださいませ。
次回は明日、8時頃に「え? え? え? クロード様?」を公開します♪
























































