72:正面から直視は……厳しいです(><)
今日のクロード様はいつもと雰囲気が違っています。
少し長めの明るいネイビーブルーの髪は、サラサラの前髪の分け目が、普段と違っています。ただそれだけで、心臓がドキンと高鳴りました。
服装も、いつもはアイアンブルーが基調なのに。今日は違います。白のシャツにアイアンブルーのタイ、サファイアブルーのジレ。白のテールコートにサファイアブルーのポケットチーフ、そして白のズボン。
全体的に白のコーディネートなのですが、髪や瞳の色、小物やジレが青系統です。そのため、普段の装いと大きく逸脱しているわけではないのですが、それでもかなり雰囲気が違って感じられます。
加えて身長もあり、引き締まった体をされているので、白のテールコートやズボンでも、大変スリムに見えました。
ゆっくりエントランスに入ってきたクロード様は、お父様、お母様、そして……私と目が合った瞬間。
あのサファイアブルーの瞳が、驚きで大きく見開かれ、息を飲んでいる様子が伝わってきます。頬が分かりやすく赤くなり、宝石のような瞳が細められ、嬉しくてたまらないという笑顔になっていました。
「ようこうそお越しくださいました、クロード様」
お父様が声をかけ、クロード様は、皆に挨拶をされます。
弟二人とはそこでわかれ、お父様とクロード様が、並んで歩き出しました。その後ろを私はお母様と並び、歩いて行きます。夕食会のために設けられたテラス席まで、両親が同行してくれることになっていました。
後ろ姿のクロード様も、とても素敵です。見慣れた騎士団のマントがないことで、背筋の引き締まり、贅肉のないウエスト、鍛えられた太股、長い脚などを、じっくり見ることが出来ました。
正直、今日のクロード様は、正面から直視は……厳しいです。あまりにも素敵過ぎて。でも後ろ姿であれば、安心して眺めることができます。
存分にクロード様の後ろ姿を堪能したところで、テラス席に到着しました。
屋敷の建物から出て、テラス席を見たクロード様は……。
「なんて、幻想的なのだろう……」
そうクロード様がおっしゃるお気持ち。
よく分かります。
まだ日没前で、空には夜と夕方と太陽の明かりが同時に存在し、それだけでも幻想的です。その状態に加え、庭園が見えるこのテラス席の周囲は、沢山のランタンで飾られていました。淡い光を放つ無数のランタン。その明かりに浮かび上がる、季節の花々。
まるでおとぎ話の世界のようです。
「ではごゆっくり、おくつろぎください」
両親が去り、代わりに召使いがやってきて、夕食会のための準備が、始まりました。
クロード様と私も、着席します。
飲み物について尋ねられたクロード様は、てっきりワインやシャンパンを頼むかと思ったのですが、意外にもお水でいいとのこと。私は召使いに、ただの水ではなく、レモン水にするよう頼み、クロード様も「レモン水で構わない」と同意されました。
すぐにアミューズが運ばれ、ワンテンポ遅れでレモン水が到着し、夕食会が始まります。
「リラ。今日はこうして招待してくれて、ありがとう。……その、覚悟はしていたが……」
クロード様は、サファイアブルーの瞳を潤ませ、視線をアミューズがのっていたお皿に移すと、大きく息をはきます。そして再度、顔をあげ、私を見ると……。慌ててレモン水のはいったグラスに手を伸ばし、一気に半分ほど飲み干されました。
クロード様と向き合う形で着席した時。
あまりの秀麗過ぎるお姿に、直視できないと思っていたのですが……。なんというか、クロード様が、何度も深呼吸されたり、空を見上げたり、ランタンを凝視したりと、挙動不審(?)だったので、そちらが気になってしまい……。
予想を裏切られ、クロード様の姿を、見ることが出来ていました。
「クロード様、どこかお体の具合でも……?」
昨日に続き来訪いただけた方、ありがとうございます!
この投稿を新たに見つけていただけた方も、ありがとうございます!!
このあともう1話公開します!
8時台に公開します。