69:何か大切なことに気づいていない(^^?
「その、私如きのために、王太子様が動くことになってしまい、本当に申し訳ありません」
「いや、それは気にしないでいい。リラはきっと、わたしやチェスカが知らないところで、デュ・プレシ公爵令嬢に伝えてくれたのだろう、何らかのメッセージを」
そこで私は、ヒロインさんに会った件を話しました。日曜日、五人で食事をしたレストランのレストルームで、ばったりヒロインさんに会ったことを。
「リラ、あなたって本当に……。そんなことをしてあげたのよ、って、恩を売ることもできるのに。聞かれるまで、黙っているなんて。……あなたと友達になれてよかったわ。ありがとう、私とリュシーのために」
悪役令嬢さんがそう言えば、王太子様は……。
「チェスカが何を言っても、あのご令嬢は、耳を貸さなかったのに。リラもまた、クレマンみたいだ。それでクロードと話せて、悲しい気持ちは、収まったのかい?」
「そうですね……。悲しい気持ちというのでしょうか。実は……」
昨日の夕立での一件、つまりヒロインさんとクロード様がカフェに入るのを見て、何とも言えない気持ちになったこと。その直後に、クレマン様に会ったこと。クレマン様と話したことや、帰宅後、クロード様への手紙をなかなか書けず、困ったことなどを話しました。さらに昼休みにクロード様と話したことで、なぜヒロインさんとカフェに行くことになったのか、その経緯が分かり、すっきりしたことを打ち明けたのです。
すると……。
「え、クロードが毎日、リラに花束を贈っているのか!? しかもメッセージカードを添えて!?」
王太子様が、目を丸くします。すると悪役令嬢さんも……。
「それは驚きね。そんなまめなことができるのね、あのクロードが。暇があるなら、剣術の訓練をするか、報告書でも書きそうなのに。夕食会の件は……空席になりそうだった貴賓席への招待に、リラが応じてくれた。だからクロードが御礼の意味を込めて誘った。でも恐縮したリラが、自分が招待することにした。こうして夕食会は、成立したのだと思っていたわ。それに宝石やドレスが贈られた件は……クロードは、剣の騎士団の団長をしているわけで。それに公爵家の嫡男なのだから。それぐらい用意しても、素敵なブーケの御礼として、相応かと思ったけれど……。未だ毎日花束を贈るって……。リラはそれが、異常なこととは思わないの?」
「そ、それは……でも言われてみれば、そうですよね。お忙しい方なのに。でも夕食会が終われば、もう花束は贈られてこないかと」
悪役令嬢さんと王太子様が、顔を見合わせています。
変なことを言ってしまったのでしょうか……。
「女狐とクロードが、カフェに二人で入って行くのを見て、悲しい気持ちになったのでしょう? それってつまり……。まさか、リラ、あなた、自分で自分の気持ちに、気づいていないわけ?」
悪役令嬢さんが、呆気にとられた顔をされています。
どうやら私は、何か大切なことに気づいていないようで……。
「まあまあ、チェスカ。リラはきっと慣れていないのだろう。それに昼休み、クロードと話してリラは、スッキリできた。今日のところは、それでいいのではないか。どのみちクロードは明日、リラに……だろうし」
王太子様がフォローしてくださると、悪役令嬢さんも納得してくれたようです。私が何に気づいていないかは、謎のままですが……。
「……そうね。それにしてもリラったら、いつの間にあのクロードを。それだけじゃないわね。あのクレマンまで。クレマンは女好きで、一見人当りもいいわ。でも踏み込んだ人間関係は、本当に限られた人としか作らないのよ。でもリラは間違いなく、クレマンのお気に入りよね。すごいことだわ」
それは間違いなくクレマン様が気づいているからです。私がこの世界ではない場所から来たことを、異世界転生者であることを。エルフの持つ、不思議な力で気づかれたのです。長い時を生きるクレマン様は、自身がこの世界で異質の存在だと感じています。他の人とは違う、異世界転生者の私を、自分と近い存在と見ているだけであって……。お気に入りなどではないと思うのですが……。
「ともかく月曜日に、リラに会うのが楽しみだよ」
王太子様がまさに王子様らしい笑みを浮かべると、悪役令嬢さんもそれに負けないぐらいの笑顔になります。
「リラ、月曜日の朝は、私達と一緒に登校しましょう」
「え!? あ、はい! 喜んで!」
こうして月曜日の朝にまた、馬車で迎えに来ていただく約束をしたところで、屋敷に到着しました。
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