65:どの角度からでも、絵になります・。☆・゜
「え、王太子様がそんなことを……?」
理由がさっぱり分からず、首を傾げてしまいます。
クロード様が困ったように息をはき、ソーサーにカップを置かれました。
「今朝、剣の騎士団の訓練場に、クレマン様がやってきた。クレマン様が訓練場に現れるなんて、珍しい。何事かと思った。彼は国王直下の特別顧問という立場だ。だから団長である僕が対応したが……。クレマン様は突然、こんなことを言われた。
『今日、君は王太子様に呼び出され、多くの女性に囲まれる事態になるが、君が話すべき女性はたった一人だ。そこを間違えないように。そこを間違えれば、取り返しのつかないことになるよ』と。クレマン様はエルフで、未来を予見されると言われている。これは私への予見だと理解し、何が起きるのかと思ったが……」
クロード様は、再びゆっくり紅茶を口に運びます。
カップに視線を落とす時の、伏せられた長い睫毛も美しく……。どの角度からでも、絵になります。
「午前の訓練も間もなく終わると思った時、突然、王太子様の執事に呼ばれた。何事かと思った。だが執事から言われたことは……。王太子様が、『地質学』で使う参考図書を忘れたので、学校に届けて欲しい――そう、頼まれた。王太子様が忘れ物をしたという話も、ましてや届けて欲しいなんて話も、これまで一度も聞いたことがない。だからとても驚いてしまった。
しかも、届けるなら今しかない、と言われた。なぜならもうすぐ昼休みで、王太子様はカフェテリアにいる。『地質学』は午後一番の授業だから、チャンスを逃すなと。とにかくビックリしたが、依頼内容は大したことではない。ゆえに軽い気持ちで引き受け、ここへ来たが……。あんなことになるとは思わず、困惑したよ」
つまり、カフェテリアにつくなり、大勢の生徒に囲まれたことでしょうか。クロード様は、ご自身の人気について、自覚がないようです。
「だが、そこでクレマン様の言葉を思い出した。多くの女性に囲まれる――それはこのことかと。さらに昨日からしつこく話しかけてくる女子がいて、困っていたのだが……。あの場にいると思わず、戸惑ってしまった。注意しなければと思っていたが、あんなに大勢の前でも、堂々とアピールするとは。正直、参ってしまった。
一瞬、クレマン様の言う、僕が話すべきたった一人の女性が彼女なのか、とも思ったが……。全く気が進まない。彼女と話したいと思えない。でも皆の前で恥をかかせるわけにもいかず、どうしたものかと思っていたが……王太子様から声がかかった。あの時は本当にホッとしたよ」
昨日からしつこく話しかけている……。
大勢の前でも堂々アピール……。
それってもしや……。
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次回は明日、8時頃に「『しまった!』と思い……」を公開します♪
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