64:そのお気持ち、よく分かります!
クロード様が、新しいグラスをとろうとした私の左手を、優しく掴んでいます。そこで私は、右手に持っていたピッチャーを、テーブルに戻しました。
「その、少し話がしたい。どこか落ち着ける場所はあるだろうか?」
そう言うとクロード様は、チラリと後ろを振り返ります。そちらを見ると、こちらを注視していた学生が、一斉に別の方向を見て、止めていた動きを再開しました。
なるほど。
皆さん、クロード様から目が離せない状態です。これでは落ち着いて紅茶を飲むこともできないでしょう。紅茶ぐらいゆっくり飲みたいお気持ち、よく分かります。
「紅茶、用意できました!」
コックさんが汗を拭い、キッチンメイドさんは、ティーカップ&ソーサー、ティーポット、シュガーポット、ミルクジャグ、メレンゲ菓子をのせたトレンチを差し出しながら……。
「この厨房を抜けた裏手は、私達の休憩スペースになっています。生徒さんが来ることはないので、良かったらどうぞ」
「ありがとうございます!」「ぜひそこを使わせていただきたい」
トレンチを受け取ろうと、手を伸ばしたのですが……。トレンチは、クロード様が受け取られました。そして今聞いた休憩スペースを利用したいとおっしゃられたのです。
「クロード様、それは私が……」
「いや、これは僕が持つ」
クロード様はそう言うと、キッチンメイドさんの指示に従い、厨房へと入っていきます。私も慌てて、その後を追いました。厨房を抜け、裏口のドアを開けると。数メートル先にフェンスがありますが、そこからは緑豊かな山並みが見えています。そして右手にベンチ、左手にテーブルと椅子があります。
「ありがとう」
クロード様が、あの少年のような笑顔を向けると……。
キッチンメイドさんは、耳を真っ赤にしてお辞儀をして、裏口のドアを閉めてくれました。
「リラ、座って」
クロード様が椅子を引いてくださり、恐縮しつつ、着席しました。ご自身も着席すると、てきぱきとティーカップに、紅茶を注いでいきます。
「ク、クロード様、それは私が……」
慌てて立ち上がろうとすると、クロード様はそれを制します。そしてあっという間に、二人分のカップに、紅茶を注ぎ終えました。私の前にソーサーにのったティーカップを置くと、クロード様は白い歯を見せ、眩しいぐらいの笑顔になります。
「騎士と言っても、戦場に出れば、なんでもする。野宿だってするし、飲み物の用意だってする。だから気にしなくていい」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて……」
ベルガモットの香りが漂うこの紅茶は……春詰みのダージリンに香りづけをした、アールグレイですね。ゆったり紅茶を飲むと、気持ちが落ち着くはずなのですが……。
「あ、あの、クロード様。王太子様を差し置いて、こんなところで私とお茶をしている場合ではないのでは!?」
ティーカップをソーサーに置き、クロード様を見ると。
あ。
なんて絵になるのでしょうか。
ソーサーを手に、カップを口元に運ぶクロード様は、本当に絵になります。
陽光を受け、ネイビーブルーの髪は明るく輝き、そのサラサラの髪には、天使の輪が出来ていました。サファイアのような瞳は、陽射しの中、宝石のように煌めいています。
「……それは大丈夫だよ、リラ。その……リュシアン王太子様から、リラと二人きりでお茶を飲むようにと、釘を刺されたから」
このあともう1話公開します!
17時台に公開します。
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いつもと違う時間です
【お知らせ】
★アルベルト視点 完全新エピソード 明日公開★
『断罪終了後に悪役令嬢だったと気付きました!
既に詰んだ後ですが、これ以上どうしろと……!?』
https://ncode.syosetu.com/n8030ib/
アルベルト視点で69話と70話をつなぐ69.5話
つまり完全新エピソードを
4月16日(日)12時台
公開となります。
この作品もお楽しみいただいている読者様。
良かったら明日、checkしてみてください☆
【どうでもいい小話:忙しい方はスルーOK!】
本作の悪役令嬢さんの名はフランチェスカ。
そして上記断罪終了後にはレオナルドという人物が登場します。
さらに。
4月10日からスタートした
サントリーのBOSSという缶コーヒーのCMでは。
タレントのIKKOさんがフランチェスカを演じ
役所広司さんがゴンドラの漕ぎ手でレオナルドを演じています。
このCMを見ると、本作と断罪終了後を思い出し、なんだか不思議な気分になる筆者なのでした。

























































