63:笑顔の二人の姿が脳裏に浮かぶρ(・ω・、
ジョフリーさんの言葉に、心臓が跳び上がります。
昨日、笑顔で話していた二人の姿が、脳裏に浮かびました。
「いや~、どうなんだろう? アメリが何か渡そうとしているのを、クロード様は受け取らないようにしているから、違う気もする」
「違うに決まっているでしょう!」
悪役令嬢さんが、ピシャリと言うと。
驚いたロマンとジョフリーさんが、一斉に視線を悪役令嬢さんに向けます。
「リュシアン様が呼びつけたのよ。クロードを」
「「「!?」」」
ロマン、ジョフリーさん、私の三人が、驚きで目を丸くします。
王太子様は澄んだ碧眼を細め、輝くような笑顔になると、席から立ちあがりました。
そして――。
「クロード、私はここだ」
そのひと声は、まさに鶴の一声。
凛として、腹の底から出された声は、カフェテリア中に響き渡りました。
その瞬間、ざわめきがおさまり、静けさが広がります。
パタパタという足音が聞こえ、人だかりが二つに割れました。その割れ目からコツ、コツという足音と共に、姿を現したのは……クロード様です。
アイアンブルーを基調に、白のラインが襟や袖に刺繍された上衣とズボンという隊服を、ビシッと着こなしたクロード様が、こちらへと歩いてきています。外側はアイアンブルーでドラゴンの紋章、裏地は白――剣の騎士団の団長専用のマントをはためかせながら歩く姿は、息を飲むかっこよさ……。
女生徒から、声にならない悲鳴が漏れている様子が、伝わってきました。
クロード様のサファイアのような瞳は、まっすぐに王太子様に向けられています。王太子様以外に、一切視線を向けないそのお姿もまた、彼の実直さを見るようで、男子生徒が羨望の眼差しを向けていました。
王太子様の前に辿り着いたクロード様は、片膝を床につけ、跪きます。その姿に、今度はまた女生徒が心の中で悲鳴を漏らしました。クロード様は、上衣の胸元から何かを取り出し、王太子様に差し出します。
「リュシアン王太子様、お待たせいたしました。ご指示のありました物を、お持ちしています」
封筒にいれられた何かを、クロード様から受け取ると。王太子様は悠然と微笑みます。
「クロード、助かるよ。ご苦労だった。早馬で駆け付けたのだろう? 茶の一杯で飲むがいい。……リラ、クロードに紅茶を」
「は、はいっ」
慌てて席を立ち、紅茶を買いに向かいます。
なんだか王太子様は、国王陛下みたいに貫禄があり、ドキドキしてしまいました。私が厨房に駆け寄ると、コックさんが慌てて動き出します。王太子様の凛とした声は、厨房のコックさんにも聞こえたようです。私が注文せずとも、コックさんは動いてくれています。
ただ、脚立にのぼり、棚に手を伸ばしていますが……。ああ、なるほど。どうやら生徒用ではなく、教師などに出す、この場で一番上質な茶葉を出そうとしているようです。
「リラ」
声に驚き振り向くと、そこにクロード様がいます。
もしや喉が渇き、待ちきれなかったのでしょうか!?
すぐそばに用意されている、レモン水の入ったピッチャーをとり、グラスに注ぎます。無料で提供されているお水ですが、そこはセボン王立高等学園。レモンは最高級、お水も雪解け水を使っています。つまり、水にレモンを加えただけなのに、おかわり3杯はいきたくなるぐらい、美味しいのです。
「クロード様、こちらをまずはお飲みください!」
「!? あ、ああ、ありがとう……」
厨房にいるコックさんは、クロード様がゴクゴクと水を飲む姿を見ると。そばいるキッチンメイドさんに、来客用のティーカップを出すよう、指示を出します。クロード様がレモン水を飲む姿を見て、喉が渇いていると伝わったようです。
「……この水……いや、レモン水か。とても美味しい」
「そうですよね。喉が渇いている時は、このレモン水がたまらないのです。はい、もう一杯どうぞ」
「……あ、ああ、ありがとう……」
クロード様が一杯目を飲んでいる間に、新しいグラスにレモン水を注いでおいて、正解です。よっぽど喉が渇いていたのですね。早馬で来られたのですから、当然でしょう。厨房をチラッと見ると、茶葉と砂時計の用意は完了したようですが、お湯がまだ沸いていないようです。ならばもう一杯。
「リラ、もう、レモン水はいい」
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