61:私に会いに来てくださるのでしょうか……?
本当に不思議だったこと。
それはクレマン様が馬車を降りると、雨が止んでいたのです。しかも美しい虹まで見えています。この時期は、日没が遅いので、空はまだ明るく。そんな空にかかる虹は、とても美しいものでした。
そんな虹を眺めながら屋敷に戻ると。
いつも通り、クロード様からのお花が届いています。
ピンクと紫のスターチスの花束に、数本、別の花が混ざっていました。
スターチスは、ドライフラワーによく使われますが、主役級の花ではありません。お店の方が気を使い、加えてくれたのでしょう。でもそのサービスをしてくれた店員さんは、新人さんなのかもしれません。
スターチスの花言葉、ピンクは「永久不変」、紫は「上品」。そこから転じてスターチスと言えば「変わらぬ誓い」というポジティブなメッセージで有名です。その一方で……。
店員さんがサービスで加えただろう花はスカビオサ。淡い紫色で、可愛らしいお花です。スターチスと束ねられたその姿は、とても素敵。ただ、その花言葉は……。
不幸な愛。
偶然だと思うのです。
ただ、今日、ヒロインさんとクロード様が、待ち合わせされるお姿を見てしまったせいでしょうか。いろいろと考えてしまいます。
ヒロインさんとクロード様の未来を、暗示している? はたまた私とクロード様の……。
いえ、私はただのモブの転生者。私とクロード様の間に、そもそも何もないのですから。よってスカビオサの花言葉など、気にする必要はありません。そう分かっているのですが……。
クロード様への手紙を、いつものようにスラスラ書くことができません。途中まで書きかけて、破り捨てて。その繰り返しになってしまいます。
結局。
手紙を書くことをあきらめ、カードを贈ることにしました。
開くと、虹が立体的に飛び出すとカードを持っていたことを、思い出したのです。カードに短くメッセージを書き込みました。
.:☆*:・’゜♠.:*・☆’゜。.*♠:・’゜.:*☆:・’.*:・
Dear クロード
素敵なお花をありがとうございます。
スターチスはその姿を楽しんだ後。
ドライフラワーにしようと思います。
昨日は仕立てていたドレスを受けるため
街へ行ったのですが、突然の雨。
とても驚きました。
でも帰りの馬車で、素敵な虹を楽しめました。
クロード様もこの虹をご覧になりましたか。
Best regards リラ
.:☆*:・’゜♠.:*・☆’゜。.*♠:・’゜.:*☆:・’.*:・
カードにメッセージを書き終えると、重い足取りでベッドへと潜り込みます。どうしてこんなに気持ちが晴れないのでしょうか……。ふと、クレマン様の言葉を、思い出してしまいます。
――「もし君が心から涙を流すことがあれば。その時は僕の出番だ。リラの悲しみは、僕が癒す」
クレマン様は、今の私の重い気持ちを予見されていたのでしょうか? この重苦しい状態で、私が涙を流したら。クレマン様は、私に会いに来てくださるのでしょうか……? そんなことを思っているうちに、眠りに落ちていました。
このあともう1話公開します!
16時台に公開します。
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