57:わぁぁ……o(⁎˃ᴗ˂⁎)o
でも確かにシャレになっていません。ヒロインさんは実際、悪役令嬢さんの弟さんを……リビオ様を、誘拐しようとしたわけですから。もし誘拐が成功していて、悪役令嬢さんを脅し、王太子様と婚約破棄させるのに失敗したら……。リビオ様との婚約を迫ったかもしれません。
それにしても。
クロード様のところに、沢山のお見合い話が持ち込まれているのですね。それは……そうでしょう。ジョフリーさんが言う通りです。由緒正しき公爵家の嫡男で文武両道。そしてあの容姿で未婚。アンヌさんが心配しなくても、クロード様の婚約者なんてすぐに決まりそうです。
……。
なぜでしょう。
なぜかとても。
胸が……苦しいです。
クロード様の婚約者が決まれば、アンヌさんも、クロード様のお父君も喜ばれるはず。それなのに、なぜ胸が苦しく感じるのでしょうか……?
「王太子様。クロード様は、アメリのラブレターにどう反応したのですか?」
ジョフリーさんが王太子様に尋ねると。
「クロードもそうだが、騎士団の団長ともなると、ヘクトルにもロジェにも、毎日のようにファンレターは届く。そういう対応は、騎士団の事務方がしている。ファンレターに対する既定の返信文の用意があるから、それを送り返して終了だろう。『応援ありがとうございます。これからも一人の騎士として、あなたや国民、王族の皆さまのために、さらなる研鑽を積みます』こんな感じの返しをしたと思う」
王太子様がそう話したところで、始業開始のベルが鳴ります。
皆、自身の席へと戻っていきました。
いつも通り授業が始まると。
先ほど感じた胸の苦しさも、嘘のように消えてくれました。
授業は滞りなく進み、いつも通りの五人で昼食を終え、午後の授業を受け、屋敷に帰ります。宿題をして、クロード様に御礼の手紙を書く。
穏やかに一日が終わりました。
翌日の木曜日。
この日も悪役令嬢さんと王太子様、ロマン、ジョフリーさんと私の五人で、休憩時間を過ごし、お昼を楽しみました。カフェテリアで見かけたヒロインさんは、五人の男子生徒に囲まれ、何やら楽しそうです。
その五人は、王族の方ではないですが、伯爵家、子爵、男爵家のご子息です。公爵家のご子息・ご息女はあと二人、この学校にいらっしゃいますが、片や女子、片や婚約者がいらっしゃることから、ヒロインさんは手出しできないようです。
午後の授業を終えた後、街にある仕立屋さんに立ち寄ることになっていました。クロード様を招いての夕食会で着る、ドレスの試着のためです。本当は屋敷に、仕立屋さんを招いても良かったのですが。もし大きな手直しがある場合、時間が惜しくなるはず。ですから私がお店へ出向くことにしました。お店に着くと、完成したドレスが、トルソーに飾られています。
「わぁぁ……」
なんて、なんて美しいドレスなのでしょう……!
サファイアブルーのシルクの生地が、とんでもなくステキなドレスに変身しています。もう、ため息が漏れてしまいました。
ライラックの花を、大小様々なグリッターで表現し、胸元を中心に、大胆に配置しています。さらにプリンセスラインのスカートのサイドに、サファイアブルーのガラスオーガンジーのチュールをレイアウト。美しいドレープを描くチュールにも、グリッターで表現されたライラックの花が、可憐に咲いています。グリッターの中には、ペリドットを思わせる模造宝石も使われており、クロード様にいただいたペンダントとイヤリングとの相性も、間違いないでしょう。
「リラ様、試着しましょう」
言われるまま、ドレスに着替えると……。
ピッタリです。完璧です。
早くこのドレス姿を、クロード様にお見せしたいと思ってしまいます。
「まあ、本当にイメージ通りです。とってもよくお似合いですわ。着ていて気になるところは、ありますか?」
「完璧にフィットしていて、問題ありません!」
既に髪をおろすか、アップにするか、そんなことまで考えてしまいます。
「では、今日、お持ち帰りされますか? それとも明日、お届けしますか?」
「持ち帰ります!」
「かしこまりました」
仕立屋さんが、ドレスを持ち帰り用に準備してくださっている間。
もうウキウキ気分で、ソファに座っていました。
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