56:な・る・ほ・どです!
「二人とも、お人好しだな。身分にひかれて結婚するなんて、よくある話じゃないか。特にアメリがそうなのが、おかしいわけではない。逆によく理解できる。だってアメリの家は、元々は商人だ。それが爵位を養子縁組で手に入れた。公爵家という爵位を。金で手に入れた爵位と噂されていることは、本人も知っている。それがアメリには、コンプレックスなのだろう。自分の力で、公爵家より、もっとすごい身分を手に入れたい。だから王太子様に近づいた。自分の魅力で、王太子様を落とせると思った」
な・る・ほ・どです!
ヒロインさんの行動の源が、よく理解できました。どうしてここまで王太子様に執着するのかが、分かった感じです。
「アメリに王族の知り合いがいないか聞かれ、いるわけないと答えたものの、なぜボクにそんなことを尋ねたか気になった。そうしたら『ジョフリーのお兄さんは、槍の騎士団で副団長をしているから、王族に知り合いがいるのではないかと思った』と答えた。なるほどな、と思ったよ。兄上に尋ねれば、王族の知り合いはいるかもしれない。でもいたとしても、アメリを紹介する気にはなれない」
ジョフリーさんもまた、元クラスメイトのヒロインさんの言動を、しっかり見ていたのですね。王太子様、ロマン、ジョフリーさん。三人の攻略対象から既に敬遠されているヒロインさんには、少し同情してしまいます。とはいえ、すべての原因はヒロインさん自身の言動にあるのですが……。
「紹介する気はないから、代わりにこう言ったんだ。『副団長ごときでは無理だ。それより、ロマンはあの通り、社交的で知り合いも多い。ロマンだったら、王族の知り合いがいるかもしれないぞ』って、すごーーーく適当に答えたら、アメリは嬉しそうに『教えてくれて、ありがとう』と言って去っていたのだが……。まさか本当に、ロマンに聞くとはな。相当追い込まれているんだな」
「な、ジョフリー、なんて適当なことを!」
ロマンがジョフリーさんに、抗議をしています。一方の私は。日曜日にレストランでヒロインさんにしたアドバイスが、うまくいったような、失敗したような状態に困惑していました。今のところ、誰かに迷惑をかけている様子はないようですが……。
ヒロインさんには、困ったものです。自身のコンプレックスを克服しようとする心意気は、素晴らしいと思います。でも王族であれば誰でもいいと、なりふり構わずになるのは……。それはそれで、違うと思えるのです。王族であれば愛がなくても結構、となりそうで、本当に心配になってしまいます。
そんなことを思っていると、王太子様と悪役令嬢さんがやってきました。まだロマンがジョフリーさんに抗議しているのを見た悪役令嬢さんは、「何を大騒ぎしているのかしら?」と尋ねます。そこでロマンは、ジョフリーさんがヒロインさんとどんな会話をしたのかを話しました。すると……。
「リュシアン様に寄り付かなくなったから、諦めたのかと思ったら。そんなことをしていたのね。ホント、めげないわね、あの女狐は」
悪役令嬢さんがため息をつくと、王太子様は。
「そんなに王族と結婚したいのか。今、婚約者がいないのは、1歳のジョージと、甥っ子の2歳の」
「リュシアン様! あんな女狐に、変な情けをかけないでくださいませ」
「冗談だよ、フランチェスカ」
王太子様は、悪役令嬢さんの腰を抱き寄せます。
お二人は同じクラスになってから。
こんな感じのスキンシップが増えています。
これをヒロインさんが見たら、ハンカチを歯で引きちぎってしまいそうです。
「しかし。このまま放置でいいものか。今朝、ヘクトルから聞いたが、クロードにまでラブレターを送ったらしい」
王太子様の言葉に、ジョフリーさんが反応します。
「なるほど。その手に出たか。クロード様は剣の騎士団の団長であり、公爵家の嫡男でもある。そしてクロード様の、リッシュモン公爵家の家系図を辿ると、王族につながる。それではなくても、先のトリコロール剣術祭でクロード様は優勝された。今、ご令嬢や娘を持つ貴族の間では、クロード様が一番ホットだ。今頃リッシュモン公爵家には、見合い話が山のように持ち込まれているだろうな。クロード様を狙うとは……なかなかやるな、アメリも」
「えー、それならフランチェスカの弟だっていいんじゃないか? フランチェスカの家も、元を正せば王族だろう?」
「ロマン、ふざけないで。それ、シャレになっていないから」
悪役令嬢さんに睨まれ、ロマンは「フランチェスカ、こわっ」と言うと、「ロマン、わたしの婚約者に対して、失礼だぞ」と王太子様に怒られています。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日、8時頃に「わぁぁ……o(⁎˃ᴗ˂⁎)o」を公開します♪
























































