55:ジョフリーさんは……さすがです(*・o・*)
「どうもこうも。ボクも同じだよ」
「同じ!?」
ジョフリーさんはこくりと頷き、尻尾をふさりとふります。
綺麗にブラッシングされた尻尾は、ふさふさ。
「ボクは月曜日の放課後だった。校庭の花壇のところに呼び出された。そこで『好きな人はいるのか、付き合っている人はいるのか』とアメリに聞かれたのさ。だから逆にボクは聞き返したその『その質問をするということは、君はボクのことが好きなのか』と」
「「ええええええ!」」
思わずロマンと私の声が、重なりました。
するとジョフリーさんは獣耳をピクピクさせ「二人とも声がでかすぎる」と言い、話を続けます。
「アメリは『好きではない。ただ、二人きりになるにあたり、好きな人や付き合っている子がいるなら、申し訳ないと思い、事前に確認しただけ』と。それを確認するなら、ここに呼び出す前にすればいいのにと思ったが。今さら言っても、呼び出された後だ。意味がない。だから指摘しなかったが……。指摘しておけばよかったな。そうすればロマンは、呼び出されずに済んだかもしれない。いや、それでも我が強い女性だ。『好きな人や付き合っている人がいるのに申し訳ないが、中庭に来て欲しい』と言っただろうな」
ジョフリーさんは秀才ですが……。ヒロインさんに対する分析が、的確過ぎて驚きです。さらに一体いつから、ロマンの話を聞いていたのでしょう!? 狼族は聴覚がすぐれています。廊下にいる時、たまたま聞こえてしまったのかもしれないですが……。
「とにかくアメリは、別にボクを好きではない。ボクもまたアメリを好きではない。それなら今のこの時間は、なんなんだと思った。だからストレートに『用件はなんだ?』と聞いたら、『王族の知り合いはいないか』と聞かれた。その瞬間、ピンときたよ。アメリが突然クラス替えで、このクラスからいなくなった理由。特に明かされなかったが、ボクは王太子様へのしつこいアプローチが、原因なのではないかと思っている」
ヒロインさんの暴挙については公表されていません。ヒロインさんが未成年だったことに加え、未遂で済んだことなので、皆、大人の対応をしてくれた結果でした。それでも事情を読み取るジョフリーさんは……さすが。よく人間観察をしていると思います。
「婚約者のいる王太子様に、必要以上に絡むのはよくない。だからクラス替えになった。でもアメリは、王太子様を諦めきれない。諦めきれないけど、どうにもならない。こうなったらと、王太子様の代わりになる男子を求めるようになった。王太子様の代わりになる男子なんて、正直いないと思う。それはアメリもさすがに気づいた。だからせめて王族で誰かいないか、となったわけだ。そして同じ失敗は、したくないだろう。だから未婚で、婚約者がいない者となった。そしてボクに尋ねたわけだ。『王族の知り合いはいないか』と」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「どうした、リラ?」
ジョフリーさんが、尻尾をふさりと一振りして、私を見ました。
ロマンも「なんだ?」という感じで私を見ています。
「今の説明には、違和感を覚えます。だって、王太子様の代わりが王族って……。それは身分の話になっていませんか? 王太子という身分の男子からふられた。だから別の王太子の身分の男子と付き合いたいが、いない。では王族という身分なら誰でもいい――そんな風に思えるのですが」
「その通りだよ、リラ」
ジョフリーさんは、あっさり言い切ります。
一方の私は……戸惑うばかり。
「え、アメリさんはリュシアン・ド・ラ・デュカスという男子を好きだったのでは? 王太子様だったから、好きになったということなのですか?」
「アメリが好きになったのは、王太子という身分のリュシアン・ド・ラ・デュカスだ。本人があっさり認めていたよ。どうしてそんなに王族にこだわるのかと聞いたら」
これにはさすがのロマンも驚いています。
私は……言わずもがなですが。
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いつもと違う時間です