54:ヒロインさんが迷走中
中庭にヒロインさんから呼び出されたロマン。
一体何があったのでしょうか。
何か問題でも起きたのでしょうか。
「問題……。問題というかなんというか。いきなり聞かれたんだよ、好きな人はいるのか、付き合っている人はいるのか、って」
やっぱり告白……!
朝から恋バナとは、かなり刺激的ですが。
物語好きの私としては、気になります。
「確かに朝からその話題は、驚きね。それで、どうなったのかしら?」
「いや、マジ、どうしようかと思ったよ。……オレ、付き合っている子なんていないから」
ロマンが照れ隠しするかのように、髪をかきあげます。そしてそのまま話を再開させました。
「でもさ、なんか付き合っている子なんていない、って言ったら、何かとんでもないことが起きそうな気がして」
「……? どういうことですか?」
「だって。リラだってさすがに気づいていただろう? アメリのあの王太子への執着。フランチェスカがいるのにさ、お構いなしでアタックしてさ。あんなの見ていたら……」
なるほどです。
ヒロインさんは、確かにこのクラスで、やり過ぎていました。その姿は、みんな見ていたわけです。確かにロマンは攻略対象ですが、分が悪いですね。
「だから思わず、付き合っている子はいないけど、好きな子はいるって答えたんだ」
うーん。そうなってしまいますよね。
もはやヒロインさんはこのクラスで「触らぬ神に祟りなし」になってしまっています。
「実際に、ちょっと気になる子はいるし……」
ロマンはそう言うと私から視線を逸らし、今度はぽりぽりと頭をかきます。ロマンらしからぬ挙動ですが。
「……気になる子がいるなら、仕方ないのではないですか。それでアメリさんが食い下がることは、なかったのですよね?」
もし私が伝えた言葉が、ヒロインさんの心に届いているのなら。
ロマンに、無理にアタックしないはずです。
「ああ。そこはホント。あっさり引き下がってくれて。安心したけど、少し拍子抜け。でもさ、そうしたら王族に知り合いはいないか、って聞かれて。さらに王族かつ未婚かつ婚約者がいない人を知らないかって言われて……もうドン引き」
……!
ヒロインさんが、迷走している気がします。ロマンに告白するのかと思いきや……。王族かつ未婚かつ婚約者がいない人……なるほど。王太子様の代わりを、求めているのでしょうか。
「そうか。まさか本当にロマンに聞くとはな。これは驚きだ。でも行動心理という学問的観点からすると、実に面白い」
急に声をかけられ驚いて顔をあげると、ジョフリーさんがいます。
ジョフリーさんは、私の隣の席に腰を下ろすと、背筋をピンと伸ばし、獣耳もピンと立て、ロマンと私を見ます。
「ジョフリー、それ、どーいうことだよ!?」
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