53:お相手の令嬢はメロメロでしょう::・'゜♡。.::
リッシュモン公爵家の跡継ぎは、クロード様。でもクロード様のその次を、見据える必要があるのです。ところが当のクロード様が、色恋沙汰に関しては、さっぱり。これまでお付き合いした女性もいなければ、色恋沙汰にうつつを抜かす時間はないと、お見合い話もすべてお断りしていました。
リッシュモン公爵は、目下、クロード様に婚約者を作るよう、はっぱをかけているそうです。
これを読むと……。
跡継ぎ問題は、本当に大変だと思います。
アルダン家には長男と次男がいるので、両親も安心しています。一方のリッシュモン公爵家は、クロード様と妹さんしかいないので、それはそれは心配なことでしょう。
ただクロード様であれば、引く手あまたで、すぐにお相手は見つかりそうです。アンヌさんがそこまで心配しなくても、大丈夫ではないかと思えます。何よりお忙しい身であるのに、私に花束とカードを毎日送るまめさがあるのですから。さらにあのペンダントとイヤリング。誕生石を選んだところや、チョイスしたデザイン、センスだって優れていると思います。おそらくお相手となる令嬢は、メロメロになるでしょう。
クロード様への手紙の最後に「クロード様。アンヌさんに良かったらお伝えください。アンヌさんが心配しなくとも、必ず見つかると思います。幸せになれると思います」と書き記し、私は眠りにつくことにしました。
◇
週が明け、いつもの一週間が始まると思いましたが……。
盛り沢山の一週間になりました。
週末には、クロード様を招いての夕食会があります。
月曜日は、お母様とコックの皆さんと一緒に、夕食会のメニューを決めました。
サマートリュフが手に入ったので、コックさんは、黒トリュフのパイ包み焼きを作ることを提案してくださいます。トリュフのあの香りは食が進むため、即決で採用決定。
魚料理はスズキを使い、肉料理は牛フィレ肉のポワレです。モリーユ茸が出回ってきているので、こちらでソースを作ってくださるとのこと。味を想像し、お腹がなってしまいそうです。
デザートは、出来立てのスフレを用意することになりました。我が家のスフレは、大人気デザート。クロード様も気に入ってくださるに違いないということで、こちらも決定です。
火曜日は、穏やかに過ぎましたが、翌日にちょっとした出来事がありました。
それは水曜日の朝のことです。
「おはよう、リラ! なあ、聞いてくれよ」
王太子様や悪役令嬢さん達と過ごす時間が増えましたが、私の定位置は、最後尾の窓際の席。今日もその席を確保するため、いつも通り早めに登校し、着席して予習をしていると。ロマンが私のところへやってきました。いつも遅刻ギリギリのロマンが、この時間に教室にいることは……驚きです。
「おはようございます、ロマン。どうしたのですか?」
「呼び出されたんだよ、アメリに」
「今朝ですか?」
ロマンは頷きながら、私の前の席に、どかっと腰をおろします。そして私の机に肘をつくと、脚を組んで話を続けます。教師がいたら「お行儀が悪い! 肘をつかない! 脚を組まない!」と怒られそうです。
「そう。昨日、気づいたら、オレのカバンに手紙が入っていた。でも家に帰るまで気づかなかった。その手紙には、今日の朝、聞きたいことがあるって書かれていてさ。中庭に来て欲しいって。おかげで今日は早起きだよ」
ロマンが信じられないほど早い時間に登校している理由が、判明です。ヒロインさんに呼び出された……。まさかロマンに告白でしょうか!?
「そ、それで、中庭に行ったのですよね?」
「そう。行ったよ。正直、何を聞かれるかって、戦々恐々。でもさ、一応元クラスメイトだし。あんまり絡むことはなかったけど、無視するわけにもいかないから」
ロマンは、そういうキャラクターなのです。背景に溶け込もうとしていた私にも、話しかけてくれるような性格。だからヒロインさんの呼び出しを、無下にすることはできなかったのでしょう。その一方で、そんなロマンでさえ、ヒロインさんとの絡みが少なかったということは……。それだけヒロインさんが、王太子様にべったりだったということでしょう。
「何か問題でもあったのかしら?」
告白されたの!?と聞きたいところですが、さすがにそれは躊躇われ、かなり遠回しな聞き方になってしまいます。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日、8時頃に「ヒロインさんが迷走中」を公開します♪
























































