50:そんな意図が隠されていたとは!
ネイビーのヘリンボーン柄のアスコットタイは、シルクで出来ており、触り心地がとても良いもの。光沢もあり、上質なものであるとすぐに分かります。
青のシルクのアスコットタイは、シルクジャカードで、落ち着いた質感です。結び目の立体感が美しく、大変エレガント。
シルバーグレイとネイビーのストライプ柄のアスコットタイは、色合いがとても素晴らしいもの。品格もあり、質の良いシルクが使われていることは、一目瞭然です。
「クロード様は、まだお若いのだから、このストライプ柄がいいのでは?」
「そうですね。ストライプ柄は垢ぬけた感じがします。ただ、このネイビーのアスコットタイも、クロード様の髪色にあっているので、気になります……」
「リラ、あなたがいいと思うものが正解よ。それになさい」
悪役令嬢さんは、私が選んだもので決めるよう、あっさり促します。てっきりストライプ柄をもっと推されると思っていたので、これには拍子抜けでした。
「本当はね、私もリラが選んだものが、いいと思ったのよ。逆にこのストライプ柄は、リラが絶対に選ばないと思ったの。私の意見に流されず、リラが自分で選んだ。それが大切だから。それを試させてもらったわ。でもちゃんとリラは、自分の意見を示した。完璧よ」
なんと。そんな意図が隠されていたとは!
でもこれで私は安心してこのアスコットタイを、クロード様に贈れる気がします。ちゃんと自分で選んだ逸品として、胸を張ることが出来るでしょう。ちなみに今回購入することになったアスコットタイを選んだのは、王太子様。さすがです。ストライプ柄を選んだのはロマン、青のシルクのアスコットタイを選んだのはジョフリーさんでした。
買い物を終えると、悪役令嬢さんのお気に入りのお店で昼食です。老舗のお店ですが、最近改装されたとのこと。調度品や絨毯、カーテンなどすべて新しく、清潔感があります。案内された個室は、一面がガラス張り。美しい庭園を眺めながら、食事ができるようになっていました。
着席するとすぐに、ザクロジュース、一口サイズのチーズを混ぜ込んだ丸いシュー生地が、アミューズとして出てきました。コース料理を注文すると、スモークサーモン、3種のキノコ、テリーヌの前菜が、順番に提供されます。どれも絶品です。
前菜に続くトマトの冷製スープも、今の季節にピッタリ。美味しくいただくことができました。ここで自家製焼き立てパンが運ばれ、出来立ての香りに、さらに食欲が刺激されます。タイミングよく、スズキのソテーキャビアソース添えも、運ばれてきました。
スズキの身の部分はもちろん、皮の部分のパリパリの焼き目も、たまりません! 何よりキャビアソースの味が、まるで魔法のようで、どんな料理にもあいそうです。瓶詰にして販売されていたら、3個ぐらい買って帰りたいぐらいの美味しさ。ソースの余韻に浸りたいところですが、お口直しのシャーベットが登場です。こうしてこの後の、鴨のコンフィに備えたわけですが……。
鴨肉料理が出てくるまで、まだ時間があると分かり、私はレストルームに行くことにしました。重厚な扉を開け、赤い絨毯が続く廊下に沿って、レストルームを探します。
ありました!
これまた重厚なドアがあるので、グッと押して中に入ります。レストルームとは思えない程、洗練された空間が広がっていました。パウダールームにはシャンデリアもあり、鏡の前にはドレッサーチェアも用意されています。ひとまず個室に入り、すっきりした後、手洗い場へ向かった瞬間。
思わず息を飲んで、固まってしまいました。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日、8時頃に「勇気を持ちましょうo("へ")o」を公開します♪