49:私の自信作です(〃⌒ー⌒〃)
「それではリラ様、こちらの手作り石鹸は、アンヌさん。こちらがクロード様ですね。手紙と一緒に明日、お届けしますね」
「頼んだわ、ココ」
土曜日の今日は、授業が午前中までです。帰宅した私は、石鹸を手作りしました。アンヌさんには、薔薇の花びらと薔薇の香油を使った、透明感のあるピンク色の石鹸。クロード様には、紺色から水色に、そして透明になるようグラデーションにした、ミントの香りの石鹸を作りました。この石鹸を作ることにしたのは、アンヌさんに、御礼をしたい気持ちからです。
トリコロール剣術祭の時に着ていたドレスは、本当にボロボロでした。でもアンヌさんは、そのドレスを見事によみがえらせ、届けてくださったのです! 裾のほつれを綺麗になおしてくださり、破れていたレースは、新しいレースに差し替え、土の汚れも手作業できちんと落としてくれていました。
お店で修繕いただいたと思ったのですが、違います。すべてアンヌさんが、お一人で対応してくださったと、クロード様の手紙で知りました。驚き、そして何か御礼をしたいと思ったのです。
こうして思いついたのが、手作り石鹸でした。学生の私が用意できるギフトなんて、限られています。一級品は、さすがに学生の私のお小遣いでは手に入りません。でも、この手作り石鹸は私の自信作です。なにせ実際に毎日、私の家族が、この手作り石鹸を使っているのですから。アンヌさんが気に入ってくれますように――そう願いながら、石鹸を作りました。
「明日は皆さんとお買い物です。寝ますか」
私は伸びをすると、ベッドに潜り込みました。
◇
翌日の日曜日。
今日は、王太子様、悪役令嬢さん、ロマン、ジョフリーさんと私の五人で、初めてのお出かけです。「王太子様がいらっしゃるのだ。一番上質な服を着るのだよ」とお父様に言われ、金貨がずっしり入った巾着も、渡されました。
ドレスは、青い小さな薔薇がプリントされた、白の麻オーガンジー。フロントには青の飾りボタン、ウエストには薔薇と同色のリボンベルト。襟、袖、裾はフラウンス飾りになっています。青い帽子を被り、完成です。今の季節にピッタリな、爽やかな装いに思えます。
カバンにずっしり金貨のつまった巾着を入れ、エントランスで待っていると、王太子様の馬車が迎えに来てくださりました。当然のように、騎士の護衛がついています。でもクロード様のお姿はありません。
初めて王太子様が、我が家を訪問した時。護衛にクロード様がついていましたが……。あれは、王太子様の気遣いからでした。ドレスがボロボロになった私が、クロード様の屋敷に身を寄せたと聞いていた王太子様は。私がちゃんと元気で登校する姿を見れば安心できるだろうと、あの日の護衛にクロード様を指名してくださったのです。
クロード様への王太子様の気遣い。
素晴らしいと、感動してしまいます。
そんな王太子様なので、クロード様にプレゼントするアスコットタイを買いたいという私のために、お気に入りのお店に案内くださったのですが……。
まずお店に着くと、店主自らが店員を引き連れ、待ち受けていました。お店にはいると、そのまま応接室に案内され、ソファに座ることになります。すると店主と店員さんが、部屋に沢山のアスコットタイを持ってきてくれました。テーブルに所狭しと並べられているアスコットタイは、どれも新作。まだ店頭には並んでいないものばかり。つまりとっておきのアスコットタイを、特別に案内してくださったのです。なぜなら、王太子様がわざわざお店にいらっしゃたから。ただその分、お値段も大変なことになっていますが!
とはいえ今回は、お父様からとんでもない量の金貨をもたされています。そもそもクロード様には、途方もない金額になる宝石をいただいているのです。ここは出し惜しみせず、最高の逸品を選ぶべきでしょう。
しかしあまりにも素敵なアスコットタイばかりです。
この中から一つだけ選ぶのは……困難。
王太子様、ロマン、ジョフリーさんが選んでくれたものから、1点を決めることになりました。誰がどれを選んだかは秘密で、悪役令嬢さんと私で、どれにするか話し合います。
このあともう1話公開します!
13時台に公開します。
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いつもと違う時間です