45:緊張感MAXです
王太子様と悪役令嬢さんを乗せた馬車が敷地内に入り、順調にこちらへ向かっているという召使いの言葉に、私達は背筋を伸ばしました。
二人の弟は、お母様から「王太子様に声をかけられたら、『王太子様、はじめまして。おはようございます』と言うのよ」と言われ、「はーい」とのんびり返事をしています。変わらずリラックスしているのは二人の弟だけで、お父様は緊張しすぎて、顔が能面のようです。
「あ、お母様、馬車が見えますよ!」
無邪気な弟の指摘の通り、こちらへ向かってくる豪華な馬車が見えてきました。白に黄金の装飾が施された馬車の前後には、騎乗した騎士様のお姿が見えます。先頭で先導している騎士様は、剣の騎士団の騎士様。馬車の後方に、騎乗で続くのは、弓と槍の騎士団の騎士様達です。馬車の後ろのステップには、槍と弓のそれぞれの騎士団の騎士2名が、起立した姿勢で、鋭い眼光を光らせています。
エントランスで待つ私達の前で、馬車が止まりました。それぞれの騎士様達が配備につくと、馬車の扉が開けられます。
「!!」
思わずあげそうになった声を飲み込みます。
扉が開き、目に飛び込んできたのは、クロード様!
まさかクロード様が、通学する王太子様の護衛で馬車に同乗しているなんて!! 思ってもみませんでした。
今この場にいる護衛の騎士様は、皆、普通の騎士様。もし護衛の方が同乗していても、普通の騎士様だと思っていました。騎士団長自らが護衛につくとは……。予想外。もう驚くばかりです。
クロード様は、アイアンブルーを基調に、白のラインが襟や袖に刺繍された上衣とズボン、そして剣の騎士団の団長を示すマントを羽織られています。夢キスで見慣れたその隊服姿は、いつ見ても、本当にカッコいいのです……。
一瞬私を見たクロード様は、そのサファイアのような瞳を細め、爽やかな笑みを浮かべられました。そのお姿は凛々しく、またお美しく、感動の涙がこぼれそうです。
そのクロード様が降りると。私と同じ、白を基調にブルーで装飾されたボレロ、そしてプリーツスカート。つまり制服姿の悪役令嬢さんが、馬車から降りてきました。クロード様にエスコートされて降りる姿は、学園の制服姿なのに……。もう女王様の貫禄。
最後に降りてきたのは、王太子様です。白を基調にブルーで装飾されたブレザーにネクタイ、ズボンという制服姿です。でも王太子オーラのおかげで、ただの制服には見えません。
王太子様と悪役令嬢さんは、両親に順番に挨拶し、私や弟とも挨拶を交わすと……。
「突然、お邪魔することになり、申し訳ありません。昨日、わたしの婚約者であるバティア公爵令嬢の弟が、リラ嬢にとてもお世話になりました。ありがとうございます。その御礼の気持ちを伝えつつ、共に登校させていただければと思いました。時間も限られていますので、リラ嬢、準備がよろしければ、どうぞ」
王太子様に促され、私は馬車に乗り込むことになりました。両親はまるで娘を嫁がせるかのごとく、目に涙を浮かべ、馬車に乗る私を見ています。例え貴族であっても。王族の方と同じ馬車に乗るなんて、そうは巡って来ません。両親が感動してしまうのも当然です。
そして。
実際に乗り込んだ私は、緊張感MAXです。
リラ・アルダンは、見た目が少し可愛くて人気がありますが、夢キスにおいてはモブ。正面に王太子様、右斜め前に悪役令嬢さん、隣には攻略対象の剣の騎士団の団長様、なんて状況、あり得ないのです……!
膝にのせたカバンを両手でつかみ、固まった状態で座っていると、ゆっくり馬車が動き出しました。すると早速、悪役令嬢さんが口を開きます。
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