42:クロード様の笑顔.。.:*☆
「クロード様。オレンジの香りは、明るく、元気をもたらしてくれます。ぜひ、これをお持ちになって、宮殿へ行ってください」
「リラ、僕のために……」
クロード様は息を飲みました。さらにサファイアのような瞳をキラキラと輝かせます。そこまで喜んでいただけると思っていません。その顔を見た私も、自然と笑顔になりました。籠を受け取ったクロード様は、私の方へ手を伸ばしかけ、でも一度引っ込め、再び手を伸ばすと……。
私の手をとり、甲に軽くキスをします。
「ありがとう、リラ。本当に……嬉しい」
「それは良かったです」
温室を出て、馬車に戻る間。お互いの好きな果物について話しました。クロード様がお好きな果物は、林檎。夜勤の時は休憩で、林檎を齧ることが多いそうです。
「リラはマスカットが好きなのか。ではお酒を飲めるようになったら、白ワインやシャンパンを好きになるかもしれないな」
そんなことを話しているうちに、馬車に到着しました。再び乗り込むと、すぐにエントランスへと向かいます。エントランスには家族総出、召使い総出で、私とクロード様を待ち受けていました。両親はクロード様に、何度も御礼の言葉を述べます。さらにぜひ時間がある時に立ち寄って欲しいと声をかけました。するとクロード様は、私から夕食に招待されたと両親に明かします。それを聞いた両親は大喜びです。いつでもいらしてくださいと大歓迎でした。思いがけず、クロード様から夕食招待の件が伝わり、両親も快諾してくれています。これには私も一安心です。
去り際に少しだけ、お父様とクロード様が、今回の騒動について話していました。その時だけ、二人の顔はとても真剣です。
「リラ、とっても素敵なドレスをかりることができて、よかったわね。とても似合っていますよ」
お母様がそう言うと、二人の弟も「お姉様、今日はお姫様みたい!」「お姉様、今日はお嬢様みたい!」と褒めてくれます。
「それでは僕はこれで。夕食会を楽しみにしています」
クロード様は白い歯を見せ、爽やかな笑顔で去っていきました。
その馬車を見送り、屋敷の中に入った瞬間。
「リラ、クロード様のお屋敷にいる間、我が家では大変なことが起きていたのだぞ!」
「そうなのよ、リラ。もう驚いてしまいましたわ!」
そう言ってリビングルームに向かいながら、両親が話したこと。それを聞いた私もビックリです。
一体何が起きていたのか……。
トリコロール剣術祭の勝敗の結果は、街中でも号外の形で伝えられます。お父様は召使いの一人を街へ向かわせており、号外を手に入れたら、屋敷に戻るよう命じていました。そして召使いは号外を握りしめ、屋敷へ戻ってきたのです。
優勝者はクロード=アレクサンドル・リッシュモン、チーム優勝は白。
クロード様が優勝したことに、両親も二人の弟も大喜びです。お父様はバトラーを呼び出します。今日の夕食は、勝利祝いとなるような、華やかな料理を用意するよう指示を出しました。二人の弟は、美味しいものが食べられると大喜びです。
お父様は、お母様と二人、ワインセラーへ向かいます。今晩の食事のお供として、どのワインを飲むか決めるためです。二人の弟は、召使いにより、昼寝をすることになりました。バトラーの指示で、コックさんは料理を何にするか考え、召使い達は食器を磨き、皆忙しそうに動き出します。
いつもと違う、ワクワクするような、休日の時間が流れていました。
ところがそこに、とんでもない情報がもたされます。剣の騎士団の隊服姿の騎士二名が、早馬でやってきました。騎士見習いの少年が、男達にさらわれそうになった。それを阻止しようとした私が怪我を負い、団長であるクロード様の屋敷に運び込まれた――そう二人の騎士様は、両親に伝えたのです。
怪我……転んで擦り傷程度でした。でもそのちょっとした怪我が、命取りになりかねないのは、事実です。とはいえ、前世の私の感覚からすると。たかが転んだ具合で大袈裟では?と思ってしまうのですが……。
ともかくこれを聞いた両親は青ざめ、お祝い気分は吹き飛びます。怪我の手当て、汚れたドレスの着替えなどを終えたら、クロード様が私を送りとどけるから安心するようにと伝えても……。両親は、落ち着きません。
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