23:クロード様が選んだのは……
パーソナルカラーやシンボルカラーで作られているブーケが多いので、単色でまとめられているものが、とても沢山見受けられます。赤色、黄色、オレンジ色、黄緑色、緑色、水色、青色、紫色など、見ていてワクワクです。さらに花だけではなく、ロリポップのようなキャンディー、小さなぬいぐるみ、そして小型のバルーンがついているものもありました。これを見ると、確かに選ばれた理由にも納得です。
来年は私もお花以外のものを……。
そこで自分が、来年もトリコロール剣術祭に来ることを想像していると気づき、苦笑してしまいます。今回、貴賓席で観覧できたのは偶然です。来年もまた、同じような幸運が舞い込むわけがありません。でも……。お父様に頼めば、特別席の招待券なら手に入るでしょう。弟を二人連れ、見に来てもいいかもしれません。そんなことを考えながら、席に戻ることにしたのですが。
実はまだ。
クロード様が選んだブーケを、確認していません。選ばれていないと分かっていても。どこかに淡い期待が残っています。でも見た瞬間、その淡い期待は消えてなくなってしまう……。そう思うと、見ることが出来ません。
「間もなく決勝戦が始まります。特別席やロイヤルボックスの観覧者の方は、そろそろお席へお戻りください」
もう、そんな時間なのですね。席へ戻らなければ……。
掲示板から数歩遠ざかりました。
でも、そこで立ち止まってしまいます。
「そこに立っていると、邪魔なんだけど!」
威勢のいい八百屋さんのような女性にピシャリと言われ、「すみません」と数歩下がり、振りかえると。
「あ……!」
見慣れたブーケがそこにあります。
1輪だけ、赤い薔薇。それ以外は濃い青色のデルフィニウム、淡い青色のアガパンサス、星のような淡い青色のオキシペタラム、紫のユーストマ、かすみ草。ブーケを束ねるリボンにルビーの薔薇。心臓の音が、大きく聞こえてきます。息を飲み、ブーケの下に書かれている名前を見ると……。
クロード=アレクサンドル・リッシュモン。
どうしましょう。
涙で文字が霞んでいます。でも時間がありません。
歩きながらハンカチで、目頭を押さえます。
ビックリしました。
どうして私のブーケが選ばれたのでしょう?
ありきたりの青系の花を束ねたブーケですのに。
やはり一輪だけ赤い薔薇があったので、目立ったのでしょうか。目立った……そうなのでしょう。そうだと思います。つまり、夢キスをプレイしたことがあるからこそ知っていた情報を活用し、それで選ばれたに過ぎない……。なんだかズルをした気分になります。本当はズルをしたと、告白した方がいいのではないでしょうか……?
急に不安になり、係員に声をかけると。
「間もなく決勝戦です。早くお席にお戻りください」
いえ、それは分かっているのですが……。
「迷子ですか? お席の番号は覚えていますか?」
「いえ、そうではなく……」「すみません! C-65の場所が分からないのですが!」
係員は、私の横で髪を振り乱す女性の対応を始めます。
これから決勝戦。
皆、その最終剣術披露を見ようと、目が血走っています。
仕方なく、私も席に戻ることにしました。
お読みいただき、ありがとうございます!
次回は明日、8時頃に「遂に決勝戦†」を公開します♪