22:もう準決勝†
その後も、剣術披露は順調に進んでいきます。1回戦が終わり、2回戦が始まりました。1回戦から数が半分に減っているので、クロード様の順番も、1回戦よりうんと早く回ってきます。
2回戦目の、クロード様の剣術披露。
初戦よりも、対戦相手は粘っていました。ところが! なんとクロード様の剣の突きで、盾が壊れてしまったのです。武器の破損は、その時点で失格。クロード様の勝利決定です。ただ、課されている剣術を披露できていないと、クロード様は敗退扱いになってしまうのですが……。問題ありません。ちゃんと披露できていたようです。またもや割れんばかりの歓声が起きました。
ブーケは、基本的に一人一回、投げ入れるもの。でも人によっては、両腕いっぱいに、ブーケを持参していることもあります。様々な騎士にブーケを投げ入れたり、同じ騎士に何度もブーケを投げ入れたり。同じ騎士に何度もブーケを投げ入れるのは……推し活みたいなものでしょうか。
3回戦もすぐ始まります。もう準決勝です。
クロード様の剣術披露も、すぐ始まりました。お相手は……これまでにない強敵で、クロード様のスピードにも、しっかりついてきています。さすが準決勝。初戦のようにはいきません。引き分けの状態でポイント判定となりました。その結果……。僅差でクロード様の勝利が判定されます。これには大歓声が起きます。歓声が落ち着いた時。隣の特別席の貴族の方の会話が、偶然耳に入りました。
「いやあ、いい剣術披露だったよ。相手は、弓の騎士団の団長、ロジェ様だ。これが弓の勝負だったら……。ロジェ様に、軍配が上がっていたはずだ」
「まあ、それはそうかもしれない。だがな、クロード様は、剣だけではなく、弓も槍も一流の腕だと聞いているぞ。本当は、どの騎士団の団長にもなれた。でもやはり騎士の王道は剣ということで、剣の騎士団の団長になった――そう聞いているぞ」
なるほど。そうだったのですね。
剣術披露で使う剣は、真剣です。
よって怪我をしないよう、皆さま兜に甲冑姿。
マントは、色分けされたチームのもの。
まさかクロード様のお相手が、弓の騎士団の団長、ロジェ様だったとは。全く気が付きませんでした。弓の騎士団の団長であるロジェ様が、剣の騎士団の団長であるクロード様と、あそこまでの接戦を繰り広げたのは……さすがだと思います。あくまで素人の意見ですが。
いよいよ次は、決勝戦です。
でも決勝戦まで、20分の休憩があります。
この休憩を使い、私はある場所に行くことにしました。
貴賓席を離れ、一般観覧席の方へ向かうつもりです。
トリコロール剣術祭を終えた騎士様の控え室に、招待されるのは誰なのか。30名の騎士様が選んだブーケが、丁度一般観覧席の裏手に設置された掲示板で、発表されているのです。
クロード様の、初戦の剣術披露の後に投げ込まれていたブーケの数は、とんでもない数でした。間違いなく、30名の騎士の中で、一番ブーケを受け取っているでしょう。ですから私のブーケが選ばれることはない……と分かっていたので、単純に皆さん、どんなブーケを作り、どのようなブーケが選ばれているのか。それを見ていたと思いました。ですから掲示板を見るため、移動を開始します。
ロイヤルボックスの皆さまが、掲示板を見に行くことはありません。召使いが確認し、報告するからです。特別席の貴族の多くも、同じようなもの。ですから私の周囲の席では、この休憩時間を使い、軽食や飲み物を楽しむ方がほとんどでした。でも一般観覧席は、がらがら。皆さん、掲示板を見に行っているのです。
私がいる場所から、その掲示板までは……。
遠いです。20分の休憩時間で、戻ることができるのかと不安になるぐらい。少し早歩きになり、汗をかきながらも、なんとか掲示板に辿り着きました。
掲示板を見ると……。
掲示板には、縦長の穴が空いており、そこに騎士様が選んだブーケが差し込まれています。ブーケの下には、それを選んだ騎士様の名前が記されていました。掲示板の1メートルぐらい手前に柵が置かれ、警備の騎士がいるので、離れた位置から眺めることになります。
沢山の人が、ブーケを確認していました。
このあともう1話公開します!
12時台に公開します。