17:薔薇の丘広場へ
ココと二人、リボンとルビーの薔薇、カチューシャ、バッグと日傘を持ち、エントランスへ向かいます。
「まあ、リラ、とっても綺麗よ」
お母様が私を見て、笑顔になります。
花屋のお姉さんも「本当に、素敵なお嬢様ですね」と褒めてくださいました。
こんな風に言ってもらえるなら、社交界デビューした時から、もっとちゃんと頑張っておけばよかったかしら……。
「リラ様、ここからが時間との戦いですよ!」
ココに促され、私はエントランスに置かれているソファに座りました。
花屋さんからブーケを受け取り、リボンで結わきます。その間にお母様とココが、花屋さんと話し、カチューシャに飾る赤い小ぶりの薔薇を選んでくださいました。
ブーケは本当に素敵に仕上がっています。一輪だけの赤い薔薇も、いいアクセントになっていました。リボンをきっちり結わきつけ、ルビーの薔薇を結び目に飾ります。想像通りのブーケが完成し、感動です。
「リラ、5本の薔薇、選びましたよ。どうですか?」
お母様が、トレーに乗せた薔薇を見せてくださいますが、色、大きさ、咲き具合、すべて完璧です。
「お母様、ありがとうございます。これで問題ありません」
私が返事をすると、すぐに花屋さんが髪に飾りやすいよう、茎を切り、棘を取り除いてくれます。ココがカチューシャを髪にセットし、ピンを使い、薔薇の花を飾っていくと……。
「まあ、素敵よ、リラ」
お母様が鏡を渡してくださり、見てみると……。
綺麗に赤い薔薇がカチューシャに沿う形で、並んでいます。
みずみずしい薔薇の香りが、ほのかに香ってきました。
「おおお、リラ、なんて美しいのか」
お父様もやってきて、支度を整えた私を見て、褒めてくださりました。
そして皆で馬車に乗る私を見送ってくれます。
「いってきます、お父様、お母様、ココ。花屋さん、ありがとうございました」
馬車の窓から手をふると、お父様、お母様、ココ、花屋のお姉さんが、一斉に声をかけてくれます。
「楽しんでくるのだよ、リラ」
「クロード様によろしくね」
「リラ様、いってらっしゃいませ」
「お嬢様、ありがとうございました」
ゆっくりと、馬車が走り出しました。
窓から空を見上げると、雲はほとんどなく、よく晴れています。トリコロール剣術祭は、野外で行われるので、晴天に恵まれ、何よりです。
通りを少し進むと、あちこちのお屋敷から馬車から出てきました。皆さん、行き先は同じ。トリコロール剣術祭が行われる、薔薇の丘広場です。
薔薇の丘広場は、お城からほど近い場所で、普段は市民の憩いの場。とても広い広場の周囲には、緑の木々と薔薇が沢山植えられていました。今の季節は花が咲き誇り、薔薇の香りで溢れています。広場に続く通りには、薔薇のアーチもあり、そこはデートスポットとしても有名です。
ただ、トリコロール剣術祭の最中は、広場に観覧席がもうけられ、普段とは様変わりしています。広場につながる四か所の通りには、屋台も並び、朝から大賑わいです。広場周辺にも、沢山の屋台が出ているとか。そして広場はもちろん、街の至るところに、トリコロール剣術祭のポスターや横断幕が飾られており、それは今も見えています。
屋敷からはそう遠くはないので、馬車を走らせていると、すぐに広場の入口に到着しました。馬車専用の通りを使い、広場へと向かいます。子供の頃に、家族で一度、トリコロール剣術祭に来たことがあるそうなのですが……。まだ幼かったようで、ほとんど記憶にありません。もちろん、夢キスをプレイしていたので、トリコロール剣術祭自体は知っていました。でもリアルでその場に行くのは初めてなので、ドキドキと緊張します。
「リラお嬢様、到着いたしました」
御者の声に、降りる準備を始めます。
ブーケ、バッグ、日傘。
招待状は、バッグの中にはいっています。
オペラグラスもバッグの中。
忘れ物はないわね、リラ。
馬車を降りると。
まるで舞踏会のように、沢山の着飾った男女で溢れています。
馬車が到着したのは、貴賓席に近い場所なので、見るからに身分が高そうな方ばかり。ちらほら目につくのは、トークハットを被る女性の姿です。トークハットにはベールがついており、それで顔を隠すようにされています。間違いなく、騎士様と許されない関係にある女性だと見受けられました。
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