15:私は今、何に対して安堵したのでしょうか?
「アメリの奴、フランチェスカ様が、王太子とロイヤルボックスでトリコロール剣術祭を観劇すると知ってからさ。ずーーっとロイヤルボックスで観戦する方法がないか、探っていたんだ。アメリの家も公爵家だろう? でもほら、爵位を購入したようなもんだからさ。今の王族とのつながりがないんだよ。だから自力でロイヤルボックスに座るのは、無理だ。でも昨晩の舞踏会で、なんとあのエルフで特別顧問のクレマン・カラッソと知り合った。で、彼の同伴者として、ロイヤルボックスで観戦することが、決まったんだってさ」
ロイヤルボックス……というのは、トリコロール剣術祭で、王族のために用意されている席のことです。その席数74席で、座れるのは、王族とその関係者、騎士団幹部、前年度の剣術祭の優勝者、政府高官など、ごく限られた人のみ。
悪役令嬢さん……フランチェスカさんのバティア家は、王族が降下して始まった公爵家。ですから大変由緒正しく、王室とのつながりも、未だに深いと言われています。そのため王太子様との婚約も、生後3か月で決まったそうで。よって悪役令嬢さんであれば、例え王太子様と婚約していなくても、恐らくロイヤルボックスに座れたことでしょう。
一方のヒロインさんは、元は商人の一族。ヒロインさんの曽祖父が、跡継ぎのいない公爵家に、多額の金を積んで養子縁組をすることで、爵位を手に入れたと、夢キスでは説明されています。そんな設定ゆえ、悪役令嬢さんに散々いじめられるわけですが。
それにしてもヒロインさんは、たくましいと思います。私はてっきり王太子様を諦め、クレマン様を選んだのかと思ったのですが。あくまで王太子様に近づくために、クレマン様とあの時、お話をされていたのですね。こうなると間違いなく、ヒロインさんは、王太子様攻略ルートを選ばれたのでしょう。そして……。クロード様はスルーされるおつもりのように思えます。
良かった……。
?
私は今、何に対して安堵したのでしょうか?
あ、そうです。
クロード様からいただいた招待状を、ヒロインさんにお渡しするような事態にならずに済むことに、安堵したのですね、きっと。でも、本来の持ち主はヒロインさんです。欲しいと言われれば、拒むことはできません。
「ってわけで、オレもなんとか特別席をゲットできたわけで」
大変です。
ロマンの話を聞いていませんでした。
「ところでさ、リラは行くわけ? トリコロール剣術祭」
答えようとした時、ベルが鳴りました。
ロマンは慌てて席へと戻っていきます。
その後の休み時間、ロマンは、別のクラスメイトと楽しそうに話していました。私がトリコロール剣術祭に行くかどうかは、話の流れで聞いたに過ぎないのでしょう。その後、再び尋ねられることはありません。勿論ロイヤルボックスでの観劇が決まったヒロインさんから、声をかけられることもありませんでした。
こうしてこの日、屋敷に戻ると。
ビックリなことがありました!
なんと私宛に、花束とメッセージカードが届いていたのです。
贈り主はクロード様。
白、淡い紫、優しい水色のライラックが束ねられており、大変美しい花束です。夢キスの世界では、花束は気軽に贈られるギフトの一つですが、贈るにも理由があるはず。なぜこんな素敵な花束を、クロード様からいただけたのでしょう。その答えは、メッセージカードに書かれていました。
*。゜+◆.+゜*。+◇.+゜*。゜+◆.+゜*。+◇
Dear リラ
昨日は君に会えて、本当に僕は幸せだった。
トリコロール剣術祭の招待も、受けてくれて
とても嬉しかったよ。ありがとう。
ただ、残り日数が少なく、準備も大変だ。
そこだけは、すまなく思う。
せめてこの花で、君の疲れを癒せれば。
Best regards クロード
*。゜+◆.+゜*。+◇.+゜*。゜+◆.+゜*。+◇
どうやら急にトリコロール剣術祭を観劇することになり、いろいろ準備に追われる私を、気遣ってくれたようです。確かに時間がないので、準備に追われる形にはなりますが……。ドレスも宝石もブーケも、問題なく用意できそうです。それに刺繍は、嫌いではありません。ですから何も問題はないのです。
私のことは気にせず、剣術祭の練習に励んでいただきたいこと。優勝できるよう毎日祈っていることを手紙に書き、早速ココに届けるよう、お願いしました。
この手紙を書いた後は。クロード様に心の中でエールを送りながら、その頭文字をリボンに刺繍しました。明日も刺繍することになります。そしてアレンジいただいたドレス、加工してもらったあのルビーの薔薇が、届くことになっていました。ですから8割の完成を目指し、刺繍を続けます。ちなみにルールブックは、書いている内容がさっぱり理解できず、お手上げです。代わりに観覧マナーは、しっかり頭に入れることにしました。
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