14:これは……確かに驚きです(・o・;
「完成しました!」
部屋の中で、私は高らかと宣言します。
宣言したところで、部屋の中には私しかいないのですが。
ひとまずブーケにつけるリボンの刺繍が、完成しました。
クロード様の頭文字である「C」を月に見立てて、ガラスの模造宝石を星のように散りばめ、銀糸と金糸を使い、刺繍を施してみたのですが……。ネイビーブルーのリボンに、銀糸と金糸はよく映えます。
明日はトリコロール剣術祭で、学校もお休み。
朝から街はお祭り騒ぎで、剣術祭の会場までの道のりには、沢山の屋台も並びます。開場は9時、開演は10時。花屋さんは8時に来てくださるので、カチューシャに薔薇を飾り、ブーケをリボンで束ねたら、すぐに出発です。そのため、5時半に起きて、準備を始める必要があります。
「よし、寝ましょう」
私は完成したリボンを勉強机におき、ベッドに潜り込みます。
先ほどの完成の瞬間を迎えるまでは、いろいろとドキドキしながら過ごしました。
本当はトリコロール剣術祭の招待状をもらうのは、ヒロインさんです。その事実を、夢キスをプレイしている私は知っていたので、学校でヒロインさんに会った瞬間は……。もうドキドキでした。
でもヒロインさんは、私が舞踏会にいたことなんて、気づいていません。完全にスルーです。そして相変わらず、王太子さまにちょっかいを出し、そうするとクラスが違うのに、絶妙なタイミングで悪役令嬢さんが教室にやってきて、ヒロインさんを牽制します。その様子を見ると、結局あの舞踏会では、何も変わらなかったのかと思いましたが……。
「なあ、リラ、聞いてくれよ」
それは休み時間のことです。
私は教室の隅の、窓際の一番後ろの席に、ひっそり座っていました。それなのにロマンから声をかけられ、ビックリしてしまいます。ビックリすると言えば。ロマンの制服にも驚きました。いつも着崩していたのに、今はシャツのボタンがきちんととめられ、ネクタイもビシッと決まっています。ブレザーもちゃんととめ、ズボンも正しくはいているのですから(以前は、ややルーズな履き方をされていました)。
「ど、どうしました、ロマン」
「なんだよ、リラ。そのよそよそしい態度は。リラとオレとの仲だろう?」
一体全体どんな仲なのか、皆目見当もつきません。
首を傾げ、考え込むと。ロマンが不服そうな顔をします。
「ダンス踊っただろう、オレと。大変だったんだぞ、あの後。リラのこと、いろんな奴から聞かれて。みんな、リラだって、気づいていないでやんの。リラだって気づけないような節穴な奴らに、リラのことを教える気持ちはない。だから名前も年齢も学校も知らなーいって、言っておいた」
「そ、そうなのね。それは……ありがとうございます。助かりました」
ロマンは私の返答に、吹き出して笑います。
今の返しに、ギャグ要素は皆無だと思うのですが……。
「普通、キレそうなのに。せっかくモテるチャンスだったのに」
「あの、私は別にモテたい願望はないので。大丈夫です」
「もしかして、クロード様がいるからか?」
「へっ!?」
思わず自分でも笑いそうになる、変な声が出てしまいました。
ロマンの口から突然クロード様の名前が出て、驚いた結果です。
「だってあのクロード様に、リラ、エスコートされたんたぜ。クロード様って、任務で女性をエスコートすることはあるけど、プライベートで女性をエスコートするなんて……自身の家族ぐらいだって話じゃないか。それなのに……。でも、安心しろ、リラ。オレにとってクロード様はヒーローだ。ヒーローの秘密を、誰かに話すつもりはないから。バレない。大丈夫」
ロマンは、何か勘違いしている気がしました。
それを否定しようとしたのですが、ロマンは勝手に話し続けています。
「クロード様の件はいいよ、リラ。それよりもな、アメリの奴、聞いて驚け。なんとトリコロール剣術祭、あのクレマン・カラッソと見に行くんだってさ!」
これは……確かに驚きです。
ロマンの勘違いを否定するより、優先事項の気がします。
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次回は明日、8時頃に「私は今、何に対して安堵したのでしょうか?」を公開します♪
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