13:残り二日、頑張ります
「僕は髪も瞳も、騎士団の隊服も、そして剣の騎士団のシンボルカラーさえ、青だ。無論、青が嫌いなわけではない。むしろ好きだ。だが差し色が欲しい。それが赤だ。僕の背中には小さな赤い薔薇がある……なんていうとキザな台詞になるが、要は火傷の痕だ。でもこれこそが、僕のポイントカラーになると思う」
つまり。
クロード様のパーソナルカラーやシンボルカラーだけでまとめると、青一色になりますが、そこにポイントカラーで赤を加えると……。本当にクロード様が喜ぶブーケが、完成すると思うのです。
ということで、ブーケで使うお花が決まりました。
濃い青色のデルフィニウム(花言葉は高貴)、淡い青色のアガパンサス(花言葉は恋の訪れ)、星のような淡い青色のオキシペタラム(花言葉は幸福な愛)、ツンツンした青紫のエリンジウム(花言葉は秘めた恋)、紫のユーストマ(花言葉は希望)。
そして少量のかすみ草とグリーンに加え、一輪だけ、ポイントカラーにいれる赤い薔薇。
花屋さんがスケッチしてくれたブーケを見ると、とっても素敵な仕上がりになりそうです。ただ、気になるのは、花言葉。「恋の訪れ」「幸福な愛」「秘めた恋」という恋愛に絡むものがあり、そして言うまでもなく、一輪の赤い薔薇は「一目惚れ」です。
ここはもう、プロの花屋さんにズバリ相談してしまいます。
「そうですね……。でも『幸福な愛』は家族愛や親子愛も想起させます。『恋の訪れ』は、相手が未婚であれば、素敵な恋が訪れるといいですね、とポジティブな意味で捉えてもらえると思います。『秘めた恋』は……。トリコロール剣術祭ですと、騎士様との秘めた恋をされている女性もいるので、需要がある花ではあるのですが……。この花がなくても、ブーケは作れますから、外しますか?」
あらぬ誤解を生みたくないので、エリンジウムは外すことにしました。
「むしろ、一番気になるのは、薔薇ですね。しかも赤。それも一輪だけ。ブーケにした時、絶対に目をひきますし、メッセージ性はグンを抜いて出ると思います。恋愛を想起させたくない、ということでしたら、一輪の赤い薔薇こそ、外した方がいいと思いますが」
花屋さんのこのアドバイスは、尤もです。
もし背中の火傷のことを知らなければ、完全に「あなたに一目惚れしました!」になると思うのですが……。クロード様なら、これがポイントカラーであると気付くと思うのです。何より私のような子供が、一目惚れをアピールしたところで、相手にされないでしょう。
「この一輪の薔薇は、花言葉とは無関係で、ポイントカラーとして入れておきたいのです。恐らく、受け取る騎士様には、これが恋愛とは無関係であると分かると思います。多分、大丈夫だと思いますので……」
「分かりました。ではブーケはこちらで決定ですね。後はカチューシャにつける生花。こちらも赤い薔薇がいいのですよね?」
私はこくりと頷きます。
薔薇の花は、本数でメッセージが異なりますが、2本だと「あなたと二人だけ」、3本だと「愛の告白」、6本だと「あなたに夢中」となってしまいます。そこで小ぶりの薔薇と蕾を合計5本、飾ることにしました。5本であれば「あなたに会えてよかった」という意味になります。これは友達同士にでも使える花言葉なので、問題ないでしょう。ちなみに赤い薔薇4本は「死ぬまで愛します」という、少し怖いメッセージになります。くれぐれもカチューシャから薔薇が落ちないよう、注意しなければなりません。
こうしてトリコロール剣術祭に向け、ドレス、ブーケの用意は整ったも同然です。あとはブーケを束ねるリボンに、クロード様のお名前の頭文字を刺繍すれば完成です。残り二日ですが、学校もあります。昼食を終えると、早速刺繍する飾り文字をデザインします。お茶の時間の後は、リボンへの刺繍がスタートです。同時にトリコロール剣術祭のルールブックを手に入れ、観覧のマナーなどにも、目を通すことにしました。
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