10:お父様もお母様もビックリΣ( ºωº )
安堵して、思わず二人に抱きつくと。
「あら、その封筒はどうしたの?」
クロード様にいただいた、トリコロール剣術祭の招待状の入った封筒に、お母様が気づきました。
「うん!? リラ、その封蝋はリッシュモン公爵家のものでは!?」
お父様も封筒を見て、驚いた顔をされています。
リッシュモン公爵家。
そう。
クロード様自身は、騎士団で団長をしていますが、家は公爵家でその嫡男。いずれは家督を継ぐ予定ですが、王国が立派な騎士団長であるクロード様を手放すかどうかは……未知です。
「はい。実は舞踏会で、クロード様にお会いしまして」
「クロード様!? もしや嫡男で、剣の騎士団の団長をされているという!? あのクロード=アレクサンドル・リッシュモン様に、リラは会ったのというのかい!?」
屋敷の中へと入りながら、お父様が目を丸くしています。
お母様も、息を飲んで驚いた様子です。
「これはなんとも驚きだよ、リラ。クロード様は、今この王都で、多くのご令嬢の心をときめかせていらっしゃる方だ。でもクロード様自身は、舞踏会には滅多に顔を出さない方でね。リラのいとこのアリー。あの子はクロード様会いたさに、舞踏会をはしごしているが、まだ一度も会ったことがないと言っていたぞ。まあ、騎士としての任務も忙しいだろうからね。舞踏会に顔を出す時間もないのだろうが。私だって実物を見るのは、国の公式行事の時だけだ。しかもとても遠い場所からで、鎧兜も着用されているから、お顔はよく分からず……」
お父様がそう言うと、お母様は……。
「それでリラ、その封筒には、何が入っていたのですか?」
「はい。お母様。こちらの封筒には、トリコロール剣術祭の、貴賓席の招待状が入っていました」
「「ええええええええ」」
お父様とお母様が揃えて大声をあげ、固まってしまいます。
でもすぐにバトラーを呼び出し、明日、可能な限り早い時間に、仕立屋と宝石屋と花屋を屋敷に呼ぶようにと、お父様が指示を出しました。
「それでリラ、クロード様からは、ハッキリとした告白があったのですか!?」
お母様が興奮気味に尋ねられるのですが……。
「告白……?」
「トリコロール剣術祭の貴賓席は、他の観覧席とは意味合いが違います。その席に座ることができるのは、出場する騎士にとって、大切な方のみ。つまり、お付き合いなさっている女性、婚約者、奥方あとは……人には言えない関係の方ですね。そのような関係の女性は、ベールで顔を隠すようにして観覧なさいますが、この日に限っては、誰もそれを咎めないというのが伝統です。リラは未婚ですから、これは関係ないですけどね」
なるほど。
つまりお父様もお母様も、私がクロード様に告白され、お付き合いしている女性として出席すると、思われたのですね。
「お父様、お母様、私は今日、クロード様には初めてお会いしました。そこでうっかり、クロード様は、このトリコロール剣術祭で優勝されます、と私が言ってしまったのです。するとクロード様は、私を『勝利の女神』だとおっしゃられて。私が観覧すれば、優勝すると思われてしまったようなのです」
私の説明に、お父様もお母様も、キョトンとされています。
それは……仕方ありません。
まさかそんな理由で、貴賓席に招待されたとは思っていなかったのでしょう。
二人ともしばらく言葉が出ないようでしたが、お父様がようやく口を開かれました。
「……なるほど。そうか。それは……。まあ、そうだろうね。冷静に考えれば、リラは舞踏会へ行くのが今日で三回目。学校に通っているだけで、クロード様と知り会えるなんて、ありえないからね。そうか。でも、その席に座るということは、そういう風に見られるわけだから、きちんとするにこしたことはない。ただ時間がないから、新たにドレスを仕立てるのは、無理だろう。今あるドレスに手を加えるしかないが。宝石も既製品で我慢するしかないな。でも一番重要なのは、花とリボンだから」
お父様の言葉を受け、お母様も大きく頷きます。
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次回は明日、8時頃に「私らしいペースで頑張ります」を公開します♪