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6.キュウ

「お話しの内容は聞こえていました。さっきこの町についたばかりで休んでいたのですが、僕も今日中に隣町まで行く予定だったので、よかったらお手伝いさせて下さい」


にっと笑った口元から真っ白い歯をのぞかせている。

イケメンとご一緒はあまり気持ちのいいものじゃなかったが、人数が1人足りなかったこと、また、リリスが目をきらきら輝かせているのでパーティを組むことになった。


「僕はこの世界をまわって旅をしているカイロです。そしてこいつは精霊のキュウ。僕の生まれた村の守り神でもあり、小さいころからずっと一緒にいてるんですよ」


といって宙に浮いている子狐のような精霊を紹介した。

尾が9つあるのでキュウというらしい。


「キュ、キュ、キュウ」


子狐の精霊が鳴いてお辞儀をしてくれた。

精霊に挨拶されるなんてやはり異世界。


再度、受付にいくと、「あぁ剣聖カイロ様とご一緒なんですね」とカイロが剣聖であることを教えてくれた。


「まだまだ修行中なので剣聖と名乗るのはおこがましくて」


カイロは謙虚なやつだ。

よろしくお願いしますとあらためて俺達の両手をとって挨拶した。


さっきからリリスは乙女の目をしている。

ゲームの世界に限るが恋愛シミュレーションの達人である俺にはわかる。

彼女は恋をしている。


護衛の際、やはりモンスターに襲われた。

さすがカイロは剣聖である。強力な剣技を繰り出してはモンスターを圧倒している。どうやら今回俺達は応援するだけでよさそうだ。


カイロがふぅっと汗をぬぐったところに、すかさずリリスが「どうぞこちらをお使い下さい」とタオルを差し出している。

俺には野球部のエースとマネージャーの姿に重なって見えた。


無事に隣町に着いた。


「どうもありがとうね。護衛してくれて助かったよ」


依頼者も大満足のご様子。


時刻は夕刻。夕陽がでている丘の上。

リリスはカイロを呼び出していた。

夕陽が2人を包むとまるで何かの絵画をみているようだ。

まさに青春の1ページが刻まれようとしていた。


「カイロ様、実は・・・言いづらいんですけど・・・」


カイロはわかってるといわんばかりの表情である。


「ごめんね、リリスさん。気持ちは嬉しいよ。だけど僕は剣の道を究めたいんだ。僕の力が君たちに必要とされているのはわかる。でも剣聖と呼んでくれるみんなの期待を背負っているんだ。本当にごめんね。分かってもらえたら嬉しいんだけど。・・・ただ、お友達からならかまわない。それは僕個人の自由だからね」


と手を差し出した。

リリスは差し出された手を取る。

クライマックス最高潮!!


「・・・・・・キュウ!キュウちゃんを私にください!」


カイロの表情は一瞬崩れたが、すぐに整えて答えた。


「・・・ごめんね、小さい頃からキュウと過ごしてもう20年。つらいときも楽しいときもキュウと一緒だったんだ。他の人にはわからないかもしれないけどキュウの鳴き方1つにも感情の種類があって、僕たちは様々な感情を共有してきたんだ。キュウは精霊だけど僕の家族のようなものだ。キュウも同じ気持ちのはずだよ・・・」


 なっ。と肩にのっていたキュウの頭をなでようとした。


「なんで?僕は構わないよ」


「どふぇっ!!!?」


カイロの表情が再び崩壊した。

軽い返事とともに子狐の精霊は、なでようとしたカイロの手を払いのけると、カイロの肩からリリスの肩へ飛び移った。


「だってリリスは美少女だもの。美少女にはあらがえないよ」


これは後日談だが、カイロはキュウが話せたことを20年間知らなかったらしく、あの場で果てしない衝撃を受けていたらしい。

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