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16.クロネとシロネ

ラナの暗躍のおかげで、俺達の本拠地が、狭い宿舎から2階建の広い屋敷へと一気にグレードアップした。この屋敷の場所はクロスロードの町から少し離れた丘の上にあるのだが、生活するにしてもそんなに不便はなさそうである。


今日は、お世話になったデールに挨拶をし、屋敷への引っ越しを行っていたのだが、俺達の荷物自体が元々少なかったので、その作業も早々に終わった。


生活家具についても、あの話の後に、ラナがさらにもう一押ししてくれたので、屋敷に置いてある家具を自由に使っていい事になっていた。


そのためテーブルや椅子はありがたくそのまま使わせてもらっているのだが、リリスが屋敷内を物色して、自分の趣味に合わなかった物は、すぐに町に持って行って換金するという裏技を繰り出していた。まぁ、それについては、俺は知らなかった事にしておこうと思う。


「こんなに立派な拠点を持つことができたのもラナのおかげだな!でも、そういやノワールの何の情報を握ってたんだ?”秘密の店”とか言ってたし、なんかすごい気になるんだけど?」


「多分・・・命・・・狙われるけど・・・秘密の店で、バニ・・・」


「はい、ストップ、ストップ!ラナさん、ストーップ!!」


物騒な前置きのわりには、すぐに続けて内容を話そうとしたので、俺は道路の交通整理をしている係員のように両手を前に出してラナを制止した。


「でも、これは本当にラナのおかげね。ありがとう、ラナ。それにキュウちゃんもすごく嬉しそうだったわ」


リリスが横にくっついているラナの頭をなでながらそう言うと、ラナは頬を赤くしていた。


「お姉様の・・・役に立って・・・嬉しい」


キュウも宿舎でよく「そこら中がうるさくて、全然深い眠りにつけないよ」と毎日愚痴っていたので、静かに寝れる部屋を確保できて喜んでいるようだった。今はその部屋でお休みタイムだ。


「それにしても、本当に広い屋敷だな・・・あっ、そうだ!ここなら友達100人でも呼べるんじゃないか?盛大なパーティとかも開けそうだ」


「え?あんた、前世と合わせても友達なんていないじゃない」


例えばだよ、例えば。本当にこの女は平気で前世からの古傷をえぐってきやがるなと思いながらも、友達と連想して浮かび上がってきたのは、・・・カイロ・・・だけだった。カイロだけなら前の宿舎でも十分呼べた。


それからも3人でわいわい言い合いながら、リビングでくつろいでいると、いきなり玄関のドアをバタン!と開ける大きな音が聞こえてきた。


「おーい!!やっほー!!」


すぐに続けて声が聞こえてきた。


「ん?誰だ?まだ、引っ越してきたばかりだというのに。俺は誰にも言ってないけど2人は誰かに言ったのか?」


「え、あたしも誰にも言ってないわよ」


「守秘・・・義務は・・・絶対」


あぁ、住所って個人情報だもんね!

でも君さっきノワールの秘密(個人情報)を漏らしかけてたけどね?


だが、2人も言ってないならじゃあ一体誰なんだろうか?


俺達がリビングから動かないでいると次の声が届いた。


「おーい!!誰もいないのかー?キュウちゃんに会いにきたのじゃー!!」


「ん?このフレーズは聞き覚えがあるような?」


玄関に向かってみると、そこには前にキュウをストーキングしていたエルフ族のクロネがちょこんと立っていた。隣にクロネとうり二つの子もいる。


「お、トオルがいたのじゃ!!やっぱりここでよかったんじゃな!今日は、前に約束していたとおりにキュウちゃんに会いにきたのじゃ!!」


「おぅ、やっぱりクロネか。久しぶりだな。あぁ、それは別に構わないんだが、でもよく俺達がここにいるって分かったな?」


「クロスロードの町の門番に聞いたら親切に教えてくれたのじゃ!」


なるほど。

どうやらデールにこの場所を聞いたようだった。


「はじめましてなの」


クロネの隣にいた子がおじぎをした。


「あっ、ご丁寧にこれはどうも。はじめまして、スキトオルです」


「クロネの双子の姉のシロネなの。どうぞよろしくなの」


よく見るとシロネのしっぽは白かった。

クロネのしっぽは黒いのでまぁそういうことなのだろう。

とりあえず「どうぞ」と言って屋敷の中に入ってもらうことにした。


「おー、これは広い屋敷じゃな。トオル達が買ったのか?」


「えっ、この人そんなにお金を持ってなさそうなの」


「おい、初対面でそれは失礼だろ。まぁ反論はできないけど・・・。この屋敷は、前にクロネと会った後に優秀な子が俺達のパーティに入って、その子がこの屋敷の所有者と上手く交渉してくれたんだ。それで俺達が自由に使えるようになったってわけ」


ノワールを脅迫して使っている事は伏せておこう。


「そいつは有能なやつがパーティに入ったんじゃな!クロネがもらってもいいのか?」


「ダメに決まってるだろ!」


と廊下で話ながらリビングに到着した。


「リリス。いつぞやのクロネが来たぞ。姉妹でな」


「あっ、本当にクロネじゃない、よく来たわね。ゆっくりしていきなさいよ。でも今日もキュウちゃんは渡さないけどね!」


「おー、リリス!大丈夫じゃ!今日はキュウちゃんに会いに来ただけじゃ!こっちはシロネじゃ!」


シロネが初めましての挨拶をしてすぐに談笑を始めていた。

どうやらリリスとクロネの2人の間には、以前のわだかまりもまったくなさそうである。


そこに、席を外していたラナがリビングへと戻ってきた。

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