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10.仲間探し その1

俺達は神殿を出た後、冒険者ギルドにやって来ていた。

まずは、先日の護衛任務を達成した報奨金を受け取るため、受付の猫耳の女性に話かける。


「こんにちは。先日受けた依頼を達成したのですが、手続きはどうしたらいいですか?」


「こんにちは。トオル様とリリス様ですね。依頼者様よりこちらに任務完了の報告が上がってきておりますので、特にトオル様の方でのお手続きは不要となります。どうぞ、こちらをお納めください」


と言って渡された袋を受け取った。中を開けてみると銀貨が入っていた。どうやらこれがこの世界のお金のようだ。


「今回の任務は1人につき、報奨金が5千Δ(デルタ)となっておりましたので、お2人合わせて1万Δ(デルタ)中に入っております」


1Δ(デルタ)の価値は、まだいまいち分かっていないが、Δ(デルタ)というのがこの世界のお金の単位らしい。


「後、トオル様とリリス様のポイントもつけておきますね!」


「ポイント?」


「はい!ギルドポイントです!これが規定の数値になるとギルドランクも上がっていきますので、これからも是非、頑張って下さいね!」


これで手続終了だった。


受け取った袋の重さをしみじみ感じる。俺は今、少し感動していた。前世であの引きこもりだった少年が、この世界では仕事をして賃金を得たのだ。これはもう成長以外のなにものでもない。


初報酬の記念として、先日の護衛任務を振り返って日記でも付けておくかと考えたが、よく考えるとあの時は応援しかしていなかった気もするので、すぐに記憶に蓋をした。


よし、次は仲間探しだ!


「おっ彼なんかよさそうじゃないか?」


「ダメよ。汗臭いのはごめんよ」


屈強そうな戦士を寂しげに見送った。


「あ、彼女は?珍しそうな杖を装備してるし、ランクも高そうだぞ」


「魔法使いはいらないわよ!私がいれば十分だもの」


高等魔法を扱えそうな魔法使いを寂しげに見送った。


「お、若いのに神にお祈りしているぞ。信心深い神官だ」


「癒やし系?キュウちゃんがいるじゃない」


「うん。僕がいるから不要だね」


回復魔法を使えそうな僧侶を寂しげに見送った。


「お前らがいると全然仲間探しができねぇわ!酒場で飯でも食ってろ!」


「ちょうどお昼だしそうするわ。でも、仲間候補はあたしが納得しないとダメだからね。行こうキュウちゃん!」


「僕は油揚げを所望する」


さっきから、張り切って雰囲気が良さそうな人に声をかけようとしているのだが、声をかける前にリリスにすべてシャットアウトされてしまい、全然前に進まないでいた。


「はぁ。仲間探しって思ってたより疲れるんだな・・・」


俺は椅子に座りテーブルに両肘をついて頭を抱えていた。


「こんにちわ。トオル君」


後ろから急に声をかけられたので振り返ってみた。

先日のカイロだった。カイロが空いていた隣の椅子に座った。


「こんにちは。カイロさん。どうも先日は・・・」


「あっ、それはもういいんだ。トオル君。あの時はキュウ自身がリリスさんを選んだんだから仕方がない事なんだよ。まぁキュウが話せたことについては今でも少し引きずってはいるんだけどね。でも、もうあの時のことはお互い水に流そうよ」


あらためて握手を求めてきた。

さすが剣聖。

大人ができているようだ。


「でもカイロさん。旅をしているのに、またこの町にやって来たんですか?」


「あぁ、なぜかまたこの町に来ないといけない気がしてしまってね。もしかすると僕達はお互いに惹かれ合っているのかもしれないな」


満面の笑みである。


「あっそうだ!僕はあれから違う村に向かって、その村で住民が困っていたモンスターを討伐してね。そうしたら1人の子が弟子になりたいと言ってきてくれて、今はその子とパーティを組んでいるんだ。僕自身がまだまだ未熟なので、普段は弟子なんて取らないんだけど、話を聞くとその子はモンスターに対して静かに復讐に燃えていてね。放ってはおけなかったんだ。復讐を考えて生きてはいけない。旅の途中で生きがいを見い出させて、いずれ復讐なんてものを忘れさせてあげることが今の僕の使命かな。ちょうど今は席を外しているんだけど後でトオル君にも紹介するよ!」


「へー!さすがカイロさんですね。僕らも仲間を探しにきたんですけどなかなか難航してまして・・・どこかに強くて勇敢で優しい人でも見つかればいいんですけどね」


カイロは、はっとした顔をしている。


「ごめんね・・・君達の理想がすぐ目の前にあるのにパーティに入ってあげられなくて。ただ、旅の途中で僕がモンスターを減らして、少しでもみんながおびえなくていい世界をつくってみせるからね」


白い歯がきらりと光っていた。

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