魅了の術をはね除けた唯一の男は真の愛を持っていると賞賛されているが……?
「見て、あの方がシエス・コンプ様よ」
「羨ましいわ……殿下達とは大違いの真の愛を向けられたお方ですものね」
少女達が一人の少女を遠目に見ながら噂話をしていた。
その視線の先にいる、憂鬱そうな表情をした少女のことを。
(はぁ……まさか、この学園でこんなことになるなんてね……)
国立魔法学園。
この国の貴族階級の若者達が入学、卒業を義務づけられている教育機関であり、ここの卒業が貴族として一人前として認められる前提条件であるとされる場所だ。
そんな場所で、先日大事件が起った。いや、正確に言えば『大事件が発生するところを間一髪で阻止された』というべきだろうか?
事件の名は『王太子とその側近に対する禁術・魅了の術の行使』というものだ。
対象の心を歪め、術者の虜にする危険極まりない術を下手人チャムール・プノヒュ子爵令嬢が、よりにもよって未来の王である王太子を相手に行使、成功させてしまった事件である。
(王太子殿下は、特に魅了や洗脳の類いへの抵抗訓練を受けていたはずなのに……ここは、プノヒュ家の腕前を褒めるべきかしら?)
魅了によって様子がおかしくなった王太子は、婚約者がいるにも関わらずチャムールを「チャム、チャム」と愛称で呼びベタベタと公衆の面前でくっつくようになった。
当然回りから諫められるような振る舞いな訳だが……チャムと呼ばれた少女は、魅了の術のスペシャリストであった。王太子を諫めるために忠言をしていたはずの側近達まで、気がつけばチャムの召使いのように傅くようになってしまったのだ。
(国の危機よねそれは。証拠がないにしても、強引に動いてもよかったのではないかしら……)
王太子や未来の国の重鎮達が魅了で操られている、など国の一大事。
すぐさま極秘に王太子達の身体と心の異常は検査されたのだが、決定的な証拠は出なかった。チャムの魅了はそれほど優れており、専門家である国お抱えの魔術師達ですら簡単には感知することも解呪することも叶わなかったのだ。
証拠を掴めない以上、チャムが悪さをしているのではなく王太子達が愚かなのが悪いと結論するほか無い。もちろん国王を初め彼らの本来の人格を知る者達はそんなはずがないとわかっていたのだが、手が出せない状況であった。
そんな有様であったため、王家や王家の側近になれるだけの高位貴族の子息達は醜態を晒し続け、事情を知らない一般貴族達からの評価は急落の一途を辿った。
このままでは国の将来が危ういのではないか……と周りが危惧し始めたところで、一人の男が現われたのだ。
(彼も立場上仕方が無かったのはわかるんだけど、もうちょっと穏便に解決して欲しかった……)
その名をロエム・レックスといい、王太子の側近としては些か家格に劣るものの、代々騎士の家系であり本人も騎士を目指して修行中という筋肉質な武闘派美青年であった。
その実力から未来の王の護衛候補と見なされていたロエムもまた、自分よりも格上の子息達が皆籠絡され誰も諫めることをしなくなった辺りで「次は自分の番」という具合に王太子とチャムを諫めたのだ。
その後の流れは他と同様……となるはずだったのだが、何とロエムは魅了の術を真っ向から跳ね返した。
国に認められた一流の魔術師ですら解呪できず、専門の訓練を受けていた王太子ですら抗うことも不可能だった魅了の術を完膚なきまでに打ち破ったのだ。
(一度術を破られれば全てが解呪される。強力な効果故のリスクというところだけど……わざわざロエムに破られなくてもいいじゃない)
魅了の術は、法律で禁止されている禁術である。
その理由は言うまでもなく、使い方によっては国を滅ぼすことも可能な危険極まりないものだからだ。
そこまで大層な野望を抱いていないとしても、殺人から強盗まであらゆる犯罪を『他人にやらせる』という外道そのものの手口で行うことも可能という危険性は決して無視できるものではない。
その凶悪さ故の禁術……というのは間違いでは無いが、実はもう一つの理由として『術そのものの欠陥』というものもあった。
一人の術者が複数人に対して魅了を行っている場合、一度でも術に失敗すると全員の魅了が解けてしまうという欠陥があるのだ。
その欠陥故に、過信するのもまた危険ということで二重の意味で禁術指定されているのが『魅了の術』というものなのであった。
(つまり、王太子殿下を筆頭とする方々を救ったのは、ロエムってことになっちゃうのよね……)
王太子が魅了にかけられたというだけで大事件だが、そこから王太子を人形として更なる犯罪に繋げられればそれこそ一大事だ。
そんな最悪の未来を未然に阻止した男として、ロエム・レックスは一躍英雄になってしまった。
それ自体はまあ、悪いことでは無いのかもしれないが……問題なのは、魅了の術の破り方。あるいは魅了の術の失敗の条件にあるのだ。
(魅了の術は『術者に対して好意を抱いている』のが発動条件。逆に言えば、余所の女に僅かでも心を奪われる不埒な考えがあるから引っかかる……か)
魅了の術をかける条件は「術者に対して好意を抱いていること」とされ、つまり小さな好意を増幅させ崇拝レベルに高めてしまう術であると言える。
要するに、見方次第では『そもそも王太子その他が婚約者がいる身分でありながらチャムに現を抜かしたのがそもそもの原因』という考え方もできてしまうわけである。
(いやね? 今回に限ってはプノヒュ家の術のレベルが凄かっただけなんだけどね?)
魅了にかけるための必要最低限の好意は、術者の力量次第である。そして、今回の事件の犯人――チャムの腕前は文句なしで超一流。何せプロの眼すら欺きはね除けたというのだから凄まじいものだ。
それこそ、男としての本能レベルの好意でも問題なく崇拝まで持っていけたほどだ。
チャムの容姿は儚げな美少女というものであり、正常な男なら否応なしに庇護欲をかき立てられる。更にか弱さを前面に出しているにも関わらず、少女の胸部だけは非常に高い戦闘力を有しており、そんな豊かな美少女にちょっと過激なスキンシップなどされれば男ならば……真っ当なオスならば誰だって彼女の魅了の条件をクリアできる程度の好意は本能的に持っちまうって話だったのだ。
(でも……ロエムがいるのよねぇ)
本来ならば、王太子達に与えられるべき評価は『憐れな犠牲者』が妥当だろう。
終わった後だからこそしたり顔で事件を評価しているようなおっさん連中だって、チャムという希代の魅了術士に狙われていればあっという間に落ちていたに違いないのだから。
考えてもみて欲しい。ちょっと二つのお山に僅かでも視線を奪われたらアウト、チラリと捲れたスカートから一瞬見えた白い太ももに僅かでも意識を持って行かれたらアウト、というかもう「あの子可愛いな」と思ったらアウト。
そんな条件でアウトにならない方がおかしいのである。思うだけでアウト判定などどうしろというのか。
……と、擁護したいところなのだが、しかしロエムという抵抗できた実例が存在しているとなると話が変わる。
実際に魅了をはね除けられる男がいたのだからチャムの術を『精神力や婚約者への愛ではね返せるレベルのものだった』と判断されてしまうのもまた仕方が無いことなのだ。
そうなると、婚約者を蔑ろにしてチャムに傾倒する姿を晒した被害者たちの評判はがた落ちとなってしまう。元々魅了されている間に晒した醜態のせいで評価が落ちていたのに、そこに浮気者のスケベという悪評が加算されてしまったのだ。
(間違いなく殿下達は優秀なんだし、何とか復活してもらわないと罪悪感が……)
魅了事件が起きるまでは、王太子もその側近候補も文句のつけようがない優秀な人材だった。特に、王太子など王族としての知識礼節だけではなく魔術師としても一流という完璧王子だったのだ。その価値は今も健在のはずなのだが……浮気性もしくは心が弱いというレッテルを張られてしまうのは流石に厳しい。
ロエムは国の一大事となるような問題を未然に防いだ英雄なので責めることはできないのだが、その存在のせいで未来を担うはずだった男たちの評価がダダ下がりになるという状態はよろしくない。
何とか現状を打開して欲しいところなのだが……魅了の術被害者の王太子達は如何せん根がまじめなので「自分達がクソ野郎だからいけなかった」と自責の念にかられてしまっているのがまた彼女の心を重くするのであった。
(本当に違うんです。ロエムが術に抵抗できたのは、別に婚約者……私への気高い愛とかそんなんじゃないんです!)
渦中の人、ロエムの誠実な愛の対象とされるシエスは心の中で王太子達に謝罪を繰り返していた。
こんな状態になっているが、王太子達に非はない――厳密に言えば魅了の術にかかってしまったことは紛れもない失態であるが、どちらかというとそれは要人たちへ悪意ある術が仕掛けられているにもかかわらず防げなかった警備の責任――ことをロエム・レックスの婚約者、シエス・コンプは知っていた。
誰よりも愛された令嬢、として本人全く関係ないところで一躍有名人になってしまったシエスは、そんな綺麗な話では無いことをただ一人確信していたのだ。
何故ならば、ロエムが魅了の術をはねのけたのは、自分への愛など全く関係ないのだから。
ロエムとシエスの関係は、所謂幼なじみである。
領地が隣り合っている中堅貴族同士の子供であり、年齢も近いということで友達から自然と婚約を結んだ関係だ。
だが、お互いの親は『子供の結婚を利用するほどの野心も無いし、気心知れたお隣さんと親戚になるのも悪い話じゃ無い。それに仲良し同士での婚約ならお互い幸せになれるだろう』という程度の考えであったようだが、残念ながら現在の当事者二人は相手を友人としては好意的に思っているが、異性としては全く意識していないのだ。
「……ああ、どうしたんだ? こんなところで」
「あら……お疲れ様、愛の騎士様?」
「それはどうも、誰よりも愛された令嬢様?」
人前に立つことで無駄に心が摩耗してしまう今の環境を嫌い、人気の無い場所で休んでいたシエスの側に一人の男が現われた。
他ならぬ、今や学園中の貴族があちこちで名前を口にする時の人、ロエム・レックスの登場だ。
何でこんなところにいるのかと言えば……その端整な顔立ちに浮かぶ色濃い疲労だけでもわかるだろう。シエスと同じく、ロエムもまた今の状況にただただ疲れ、自然とシエスが休んでいた人気の無い場所へとやってきたのだった。
「……周りの勘違いが重い」
「理想に現実がかすりもしてないのが心苦しい……」
二人は心労で参っていた。
共に事実とかけ離れた称賛を浴びる立場として目立ってしまっていることに疲れ、だからこそ共に男女の思いはないことをはっきりと確信し合う。
だが、そんな二人であっても周りから見ると非常にお似合いに見えてしまうのだ。
というのも――ぱっと見の容姿が、見事に釣り合っているのである。
ロエムは騎士を目指しているだけありがっちりとした体格で筋肉質。長身も平均以上にありとても屈強な印象を受け、顔立ちも整っているので女子人気バッチリの好青年だ。
一方、シエスもまた女子としてはかなりの高身長。隣にいるのが長身のロエムでなければでかい女という印象すら持たれてしまうがプロポーションはバッチリのモデル体型であり、長身のロエムと並ぶことで格好いい女として褒め称えられる……とまでは言わないが十分優評価の容姿となるのである。なお、可愛いよりは美しい系統に顔立ちは整っており、シエスも実は女子人気が高かったりする。
つまり、外見的印象だけでも『お似合いな二人』であるシエスとロエムは、だからこそお互いを見て同じことを思うのだ。
常人からすれば魅力的な互いの容姿を前にして「育っちゃったんだよなぁ」と、ため息まで吐いて。
◆
それは、シエスとロエムがお互い五~六歳のころの話だった。
まだ婚約者という話すら出ていない幼少のころのことであり、二人は親同士が友人として話をする間、子供部屋で一緒に遊ぶのが定番となっていた。もちろん使用人は側に控えているが、基本的に口出しはせずに子供同士の交流という場となっていたのだ。
既に貴族の子として紳士・淑女教育は始まっていたが、所詮は子供。親の目が届かない場所でしばらく一緒に遊んでいるとだんだんタガが外れてくるのは仕方が無いことである。
しかしいつもは些細な喧嘩になるくらいで問題は無かったのだが、その日は少々エスカレートしてしまったのだ。
ロエム少年は騎士の家系であることもあり、父親に買い与えられたおもちゃの剣を大事にしていた。
そんなロエムを見た幼いシエスは、大事そうにしているということで好奇心が刺激されたのか『ちょっと貸して』と、ロエムから剣を取り上げてしまったのだ。
「ダメ! かえしてっ!!」
「なによ! ちょっとくらいいいじゃないの!」
当然、すぐにロエムは取り返そうとして喧嘩に発展する。それだけならばいつもどおりの展開なのだが……大事な玩具を取り上げられたロエムはかなり本気で怒り、取っ組み合いにまで発展してしまったのだ。
周りの使用人たちも、いつものことと静観していていいのかと迷うくらいには派手に暴れ回り、ついに拳が出るレベルにまで至ってしまう。
流石にそれは不味いと使用人達も止めに入ろうとしたのだが、既に遅かった。決着は付いたのだ。
……ところで、幼少のころというのは男女で体格に余り差が出ないものだ。
成長してしまえば男と女ならば腕力勝負では男に軍配が上がるものなのだが、幼児のころならば男も女も大して違いは無い。つまり単なる個性の勝負になるのだが……幼い頃は、腕力においてロエムよりもシエスの方が上だったのである。
もちろん数字にすれば微々たる差なのだが、何はともあれその喧嘩ではシエスが勝利を収めたのである。
決まり手は押し倒しからの踏みつけ。ロエムは涙目になって幼いシエスにあお向けに倒れたままお腹を踏まれて制圧されたのである。
――今思えば、そのときがきっかけだったのだろう。
ロエムは目覚めた。守るべき対象とされ、か弱さの象徴と教育されていた幼い少女に足蹴にされ屈服させられる屈辱という名の快感に。そりゃあもう、幼い少年が開いちゃ行けない扉を全力でオープンしてしまったのである……。
◆
――そう、彼が魅了の術に抗えたのは強い心があったからでも婚約者への真実の愛を誓っていたからでもない。
彼の守備範囲が『ドSロリ』という極めてニッチなジャンルであるドMのロリコンだったからなのだ。
魅了の術を仕掛けたチャムは男性を魅了するだけの豊満な胸部装甲と、庇護欲を掻き立てるような儚い雰囲気を持った女性だった。
つまり、成熟した美女としての属性と、か弱い女という属性を武器にしていたのである。
が、ロエムの好みは未熟な少女にして苛烈な女王様だ。性癖が反対すぎて魅了の術を発動するための『最低限の好意』すら得ることができなかったのが全ての原因だったのである。
純粋な愛も誠実な心も打ち破る強力な魅了の術も、不純で異端な性癖の前には無力だったというのが真実なのであった……。
(言えない。この人は特殊性癖の持ち主であるってだけですなんて、言えない……)
そんな婚約者のことを熟知しているからこそ、シエスは現状に疲れを覚えているのである。何せ、彼女こそが彼の開けてはいけない扉をこじ開けた張本人であり、巡り巡って現在王太子達を追い詰めているある意味での主犯なのだから。
自分の行いで優秀で将来が約束されていたはずの高貴な方々が苦しみ嘆いている。そんな状況を想像すると……半分くらいは満たされてしまう自分を抑えるのにとても苦労しているのである。
(はぁ……これで殿下達がもう10才ほど若ければ最高だったんだけどなぁ……)
シエス・コンプ。彼女もまた、人に理解されない扉を開きし者。
ロエムと同じタイミングで覚醒を果たした異端者なのである。
プライドばかり高く実力が伴っていない幼い少年を一方的に踏みつけにし泣かせる……その顔に快感を覚える、ドMのショタしか愛せないドSのショタコン。それが彼女の本性なのである。
「いくら周りにお似合いと言われても、ね」
「今じゃお互いがタイプじゃないのにね……」
主に、年齢がタイプじゃない。
お互いがお互いを目覚めさせた張本人でありながら、しっかり健全に成長した結果、今ではお互いを愛すべき対象としてみなせない変態達であった。
そんな歪な関係でありながら『真実の愛で結ばれた二人』としてもてはやされ、その結果罪のない王太子一同の悪評を掻き立ててしまうこの状況。いろんな意味で心労も溜まるのだ。
かといって、王太子達の評判を回復することなど二人には不可能だ。どうあがいても、現状では同情としかとられず、余計に惨めにさせてしまうだけだから。
せめて、本当に愛し合えれば、いっそ噂を真実にしてしまえれば心労も消えるかもしれない。しかし……
「キミ、本当によく育ったもんね……」
「アナタもね……騎士としては恵まれた話なんだけど」
ロリコンとショタコンのカップルという間柄でありながら、二人とも非常に発育がよかった。
繰り返すが、ロエムは騎士らしく鍛え上げられた長身の持ち主で、シエスもまた女性としては非常に高身長のモデル体型。
世間一般的な感性で言えば両者ともに美しい容姿の持ち主なのだが……普通じゃない二人からすると、ストライクゾーンを外してしまっている。むしろ発育不全で子供体型だったら話は違ったかもしれないのに。
そんな歪なこの変態達には、真の幸せは訪れない――
「なあ、聞いたか? 王太子様の話」
「ああ。将来の国の長なのに魅了の術に抵抗できなかったって責任感じて、自主的な謹慎ついでに対魅了の術の研究に没頭しているんだろ?」
そんな会話をしていたとき、二人の位置からは見えない場所で誰かが世間話をしているのが聞こえてきた。
「その研究の成果というか何というか、何かスゲー魔法薬を生み出したらしい」
「え? 魅了の術の予防薬ってことか?」
「いや、どっちかというと治療薬のつもりで作ったらしい。肉体の状態をリセットすることでどんな呪いもキャンセルするとかなんとか」
「……そりゃ、実現できたら凄いけど、マジでそんなの作っちゃったの?」
「いや、それが時間回帰の術とかいう超高等魔法を組み込んで作ったらしいんだけど、何故か精神じゃ無くて肉体が若返っちゃうらしい」
「え? それって、魅了の術は解除されないままガキになっちまうってことか?」
「そうそう。記憶も精神もそのままに三時間くらい飲んだ奴が6,7才くらいの身体に戻るんだと。副作用も何もなく時間が来たら元に戻る魔法薬ってのもある意味凄いけど、本来の目的には使えないって愚痴っていたって噂」
「へー。そりゃ面白いけど、使い道に困るなぁ」
「合法的に女湯覗くのには使えそうだけどな、ハハハ……」
――ロエムとシエスは心の底からお互いを愛する真の愛で結ばれたカップルだ。
死が二人を分かつまで、永遠の愛を誓い幸せに暮らしたという。幸せと言ったら幸せだったのだ。少なくとも本人達的には最高の幸せを手にしたのは間違いないのだ。
大量の魔法薬の精製を依頼された王太子が過労で倒れたり、そんな王太子に愛の騎士が心の底からの忠義を誓う姿を観て「よくわからんがやっぱり優秀なんだな」と王太子の評判が回復したりと色々あったらしいが、そんなことどうでもよくなるくらい二人の愛は永遠のものとなったのであった。
どんな魅了の術だろうが、決して破ることができない永遠不変の愛。シエスとロエムというカップルの間にはそれがあるのだと、多くの人に祝福され讃えられたという……。
……まあ、どんな高度な魔法であっても事前の想定から外れすぎたものまでカバーしろというのは無理な話だろう、そりゃね……。
ひっそりといつの間にか処刑されていたチャムール・プノヒュ子爵令嬢が悪党であったことは間違いないが、それでもあんまりにもあんまりな不運には、同情の余地があるかもしれない……。
魅了の術を愛の力で打ち破ったとかとか言われると「ケッ!」としか思わないけど、魅了の術も特殊性癖には未対応ですと言われるとそりゃ仕方が無いねと納得してしまう作者です。如何でしたでしょうか?
……普段はコメディとして投稿するんですけど、こんなのばっかりは恋愛ジャンルに投稿したくなります。
最終的に相思相愛になるんだから恋愛に間違いは無いという大義名分を掲げ、別に恋愛ってプラトニックでお綺麗なものである必要ないですよねと主張してやりましょう。
というわけで、異論反論ご意見ご感想お待ちしております。
※宣伝
同作者が現在連載中の長編ファンタジー
『魔王道―千年前の魔王が復活したら最弱魔物のコボルトだったが、知識経験に衰え無し。神と正義の名の下にやりたい放題している人間共を躾けてやるとしよう』
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7月発売のコンプティークよりコミカライズ連載開始予定です。
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