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次の日の朝。
私は目覚めた。
「酷い顔してるわ…」
自分でも着られる簡単なドレスに着替えて、顔を洗う。
ハンカチで顔を冷やす。
未遂だが、婚約破棄を申し付けられたため当面の間は部屋で謹慎となる。
このままでは傷物令嬢になってしまうため先行きが不安だ。
お父様が現伯爵として振る舞っているため、このままでは私は邪魔になる。
今回のことで城には戻れないだろう。
良くて修道院に入れられる、悪くて身一つで放流だろう。
領地に関しては執事達がいつもうまく治めてくれるように取り計らってくれるので心配はない。
お父様が領地経営にあまり興味がなくて助かった。
税金を使って上手に領地経営するよりも自身が羽振りよく振る舞えればそれでいいのだ。
今のうちにハンカチに刺繍でもしてそれで腕前を見てもらい将来的に針子や家庭教師として生計をたてていこうか。
ヴァネッサに頼み込んで彼女の生家で雇ってもらえないだろうか…。
ノックの音がする。侍女のヴァネッサだろうか。
「お嬢様。奥様と旦那様が呼ばれております。すぐにご支度を整えて向かうように。」
違った。お父様とお母様が自身の屋敷から連れてきた侍女だ。
この侍女は、お父様とお母様の味方。
……顔を綺麗に整える時間はなさそうだ。
仕方がないので急いで薄くパフで粉を顔に塗り、紅で頬と口に色をつけた。
そして、できる限りの早さでお父様が使用している執務室へ向かった。
といっても、執務は昔から一緒に暮らしてきて伯爵家を支えてくれる執事達がやっているのでお父様は読まずに判子を押すだけなんだけれども。
お父様は見栄っ張りな面があるので、仕事はきちんとやっているアピールだけは周囲にしている。
実際は5歳の頃から執事達と私が話し合って領地をどう導くか決めている。
私用の判子も長い付き合いだ。
私財となる金以外は収支報告をして特殊ケースを除き報告書をあげて許可とりをするため自由に使えない。
お父様は自由に使えない金には興味がないのだ。
5歳の頃から城の皆様にも相談して決めているので領地に関しては妙なことにはなっていないはずだ。
ノックをして入室の許可をとる。
部屋にはいるとヴァネッサとハンスがお父様とお母様に頭を下げて部屋にいた。
「おはようございます。お父様、お母様。お呼びでしょうか。」
私は二人に挨拶をする。
「マリア、相変わらず見苦しい顔だこと…。そこの二人は城に戻すことにするわ。貴女にあの女が情けでつけてあげた使用人だもの」
お母様が言った。
「おお、そうだな。婚約破棄を申し付けられた娘にはいきすぎた扱いだ。」
お父様がにやにやと笑う。
「そんな…」
分かっていたことだがショックだった。
「それよりもマリア、喜べ。お前の次の結婚相手が決まったぞ」
にやついた顔でお父様が続ける。
「お父様、まだ婚約破棄は正式に確定しておりません」
「おお、しかしキール様が婚約破棄を言い出したことで婚約破棄は確実だろう。幸いに相手は破棄されてからで大丈夫だと言ってくれた」
昨日の今日でそんなに早く決まるわけがないので、前から取り決めていたのだろう。
「良かったわねぇマリア。」
お母様が嬉しそうに言う。
「求婚してきたのはゲスイ・シタッパー伯爵。嫁ぎ遅れのお前には願ってもない相手だろう」
「あんまりですわ…」
私は下を向く。
ゲスイ・シタッパー伯爵といえばセクハラロリコン女好きで有名な60代のおじいさんだ。
「あんまり?同じ伯爵家で家格もつりあう最高の相手に嫁げて幸せだと訂正なさい」
「……………。」
お母様はとても嬉しそうに言葉を投げつけてくる。
「明日、わざわざゲスイ・シタッパー伯爵が迎えに来るそうだから共に二ヶ月ほど一緒に暮らして仲を深めてらっしゃい。帰ってこなくてもいいからね」
「明日!?」
「なに言ってるの貴女。婚約破棄をしたらゲスイ・シタッパー伯爵家に嫁ぐのに仲を深めない理由はないわよ。」
「なんてこと…」
私はふらりとよろけた。
最後まで倒れきる前にハンスとヴァネッサが慌てて支えてくれた。
「今頃貴女の部屋は私の侍女が片付けているわ。判子もこれからは私が伯爵夫人としておすことになるから領地の心配も不要よ」
「お母様、あれは私の判子です。私の不在時はお母様ではなく執事頭が代理人として采配をふるうことになってます」
「あら、マリアが嫁いでから私が伯爵夫人になる書類にサインと判子を押せばこの家は私のものになるのよ」
「それだけはご勘弁くださいっなんでもしますから」
「ふぅん…なんでも?本当かしら…?」
にやりとお母様が笑う。
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登場人物が動くままに書いてますので作者もこの先どうなるのか分かりませんが、完結までまとめようと思いますので面白かったと思いましたらブクマか感想をいただけますと作者が喜びます。
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