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マリアはそれを聞いて、また勘違いをしている。
なるほど。私はこれから爵位剥奪の上でどこかに放流されるかもしれないのね!
貴族として生きていたのに平民として生きるときにお金のことを知らないと困るものね。
まだ未定だろうからやんわりとこの先について伝えてくれるなんてヴァネッサは優しいのねと思った。
「ヴァネッサ様、ありがとうございます!」
「いえ、色々と相談しますので少し席を外します、用がある場合は参りますのでお呼びください。」
念のために、部屋の近くにいた侍女をつける。
そしていくつかマリアのために環境を整えたヴァネッサは部屋からでたあと、急ぎ足で城の侍女長のもとに行った。
教えますと言ってみたけれど貴族の子女の金遣いは人による。
できればマリアのためにお茶会を開いて実際の様子を聞いてもらう方が早いだろう。
皇太子妃、王妃様にも連絡をと頭のなかで色々と考えていった。
ヴァネッサがいなくなりマリアは本来の目的を思い出した。
ヴァネッサもハンスもいなくなってしまったが、自分は作った商品を売ってお金を稼がなければいけなかったんだわと。
ハンスはとりあえず、今までの生活費などや業者を確認しているはず、では平民に落ちたときにこの商品がどの程度の価値を持つのか聞かなければ。
ヴァネッサが連れてきてくれた侍女のララは顔見知りだ。
ご実家は商家の経営もやられていたはず。
ララは目利きで有名だわとマリアがひらめいた。
見せたらいくらくらいになるか教えてくれるはず!
優しい性格だから、きっと聞くくらいなら大丈夫かしら。
マリアは声をかけた。
「ララ様、お久しぶりでございます」
「マリアお嬢様、お加減が回復されたときいてなによりです。」
「ありがとうございます。あの、ララ様にお伺いしたいことがありますの」
「はい、なんでもお答えしますよ」
マリアは、レースで作った商品を1つ見せた。
「こちらをまず見ていただきたいの」
「失礼しますね…」
マリアはドキドキした。
自身の作った商品をじっくりとみてもらえている。
ハラグロイ叔父様の商人はこれは10セットで銀貨一枚だった。
「マリアお嬢様はどちらでこれを入手したのでしょうか」
「それは買ってないわ作ったの。」
「マリアお嬢様がこれをお作りになられたのですか!」
ララは驚愕した。
最近隣国でレース細工がブームとなっており、それをあしらって服を作るのが流行っている。
レース細工を作るには技術と根気がいるためなかなか流通しないのにここ近年は良く売られるようになったとは感じていた。
質の安定したものが高く少量売られている。
それを作っていたのはマリアだったのだ。
ララも王妃のドレス用に買い付けようとしたことがある柄だった。
「ララ様……売るのは厳しいかしら…」
「いいえ、これ一枚で金貨一枚が適正価格です。」
マリアは驚いた。
「今まで…10枚で銀貨一枚だったのよ?」
「ぼったくられているかと…マリア様が売りたいとおっしゃるならうちで引き取りましょう。そこの商人よりよっぽど見る目はあります」
ララは商売の気配を察知した。
マリアは売ることが許されたら払うことができそうだわとついでに他のものも見てもらうことにした。
「ララ様、もしよろしければこちらも見ていただけないかしら。」
マリアは手元にできている商品をせっせと提示した。