第4話 夕暮の共同戦線 後編
外見から判断するに目を持たない敵がどうやって連携を取って攻撃を仕掛けて来ているのか僕はそこに疑問を持った。
もしテレパシー等で意思の疎通が出来るならわざわざ海上に出て来る必要は無いはずだ。
ここで僕はある仮説を立てた。
化物は周囲の音で連携を取っているのではないか?
「それが正しかったとしてどうすれば良いんだ?」
「もっと大きな音でそれを乱してやれば良いんだよ!」
作戦は簡単だ。
攻撃の合間に敵の足元に矢を放ちフェイクの攻撃を混ぜる。
矢が水面を叩きつける音で敵の連携を乱すのが狙いだ。
問題は左腕を負傷したナカさんにそれだけ器用な事が出来るかどうか
「そんくらい余裕!」
ナカさんは汗を拭うとニヤリと笑ってみせた。
作戦を開始してから10分が経過した頃
僕が立てた仮説は正しかった様で明らかに敵の連携に乱れが起きていた。
逆にこちらの攻撃はどんどん命中精度を増し次々に敵は海の底へと消えていく。
「よし!あと2匹!」
やがて僕らを囲っていた敵も残り2体となった。
狂った様に突進してきた化物の眉間をナカさんは息を荒らげながら撃ち抜く
「ナカさん後ろ!!」
背後から突っ込んで来た最後の敵が水飛沫と共に沈んだ。
「やったね!ナカさん!」
少しの静寂の後
勝利のハイタッチを求めるとナカさんは少し照れくさそうな顔をして僕の髪をグシャグシャにした。
「ナカちゃんって呼べ」
僕は彼女の反応に内心驚きつつも改めて自身の名前を彼女に伝えた。
「フロッピー!?変な名前!!カエルだからお前の名前は今日からケロケロだ!!」
「!?」
気の抜けた様なやり取りの後
どこまでも響く様な笑い声が空に響いていた。