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蛙提督の記憶日記  作者: ケロケロフロッピー
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第15話 真実 後編

夢の中の存在であるそいつ(以下勝手に白いからシロと呼ぶ)は額に手を伸ばしてきた。

頭の中に流れてくる映像が自分の前世の記憶である事を上手く言えないが俺は理解した。


蛙達が暮らす平和な国、モヤがかかった父と母の姿。

その幸せはある日壊され俺は両親と逃げた。

しかし追手はそれを許さなかった。

追い詰められた母は俺を抱いたまま崖から身を投げた。


「ごめんね。」


母の言葉で記憶は途切れた。


「アナタは本来あちらの世界で幸せな蛙生を送る予定でした。

ですがアナタは悲惨な死を遂げた。

それを哀れ思った神はアナタの来世をこちらで幸せな物にすると約束しました。

しかし、本来人間に生まれ変わるはずだったアナタは何故か姿は蛙で認識は人間というあり得ない存在になってしまいました。

そしてあろうことか向こうの世界へアクセスをしてしまった。」


全てを見た後で俺はこれが夢じゃない事を理解した。

直感で分かるのだ。

それは偽り無い今となっては母の顔すら思い出せぬ他でもない自分の記憶だから。

気になる事は次から次へと浮かんでくる。


「つまりあの世界は過去の世界って事か?」


「少し違います。あの世界は並行世界と言えば分かるでしょうか?

この世界にはもしもの可能性だけ時空が存在します。

アナタが飛んだ世界は前世から実に300年後の世界で歴史が変わった2020年の現在という事になります。」


シロは俺の首元を指差した。

そういえばこれはいつから付けていたんだろうか?

最初にナカちゃんに介抱してもらった時に付けて貰った物のはずだが

改めて指摘されると幼い頃から付けていた様な奇妙な感覚もある。


「それは並行世界と現実世界を繋ぐゲートでありアナタの生まれ変わりの証です。

あちらの世界で不思議な力を使いこなす人々の存在は見たと思います。

アナタにもその力はもちろん備わっています。

能力の名前は【フロッピー】こちらの世界の少し古い言葉で記憶の媒介という意味でアナタは2つの世界を繋ぐ力を持っているのです。」


そういえば異世界で最初に聞いた声がフロッピーという言葉だった。

俺はそれが前世の自分の名前だと話の流れで思っていたが今に思えばそれはコンタクトを取ろうとしたシロの声だった様だ。

そして気になる事がもう1つ、異能は敵の核を取り込み適性ある者に発現すると試験の時に聞いた。

つまり俺は前世で既にその適性を持ち過程を乗り越えていたという事だ。

ここで1つの矛盾が生まれる。

俺の前世は300年前で人類に害をなす敵が現れたのは何十年前の事と聞いている。

明らかに話が合わない。

人類の中に何かの都合で誤った情報を流している者がいる。

または時間・空間に干渉する者が…

そもそも俺は前世の世界へどうしてアクセス出来たんだ?

いや、今それについて考えるのは辞めよう。

俺は一番気になっている事をツバを飲み込んだ後に聞いた。


「もし俺が並行世界を移動できるなら死んでしまった人達が生きている

世界にジャンプする事は出来ますか?」


シロは首を横に振った。

残念ながらこの力はあくまで2つの世界を自由に飛ぶ為の物で転生を経て能力が消えなかった事自体がイレギュラーだそうだ。

だがシロはそんな俺にこう言った。


「私とコンタクトが取れた今、その力を剥奪し本来生まれてくるはずだった

姿になってもらう必要がありますが…」


①蛙としてそのまま幸せな生活を現実世界で過ごし異世界での事は一切忘れる。

代わりにアナタのこれからの蛙生はこれ以上無い幸せが約束される。


➁今までの蛙としての一切の過去を捨て本来生まれてくるはずだった人間の姿で

これからの世界を生きていく。

代わりにアナタが願う事を可能な限り1つだけ叶える。


こちらの都合で全てを奪うのはあまりに勝手すぎるという事でシロは2つの選択肢を俺に提示した。

答えなら決まっていた。

②を選びナカちゃんが死ぬ前の時間に飛ぶ。

向こうの世界の出来事が夢でも空想でも無いならナカちゃんが死なない世界を作りたい。

誰かの苦しみを忘れた上に自分の幸せが出来るならそれは偽りの幸せだ。


「答えは決まっている様子ですね。」


再びシロが俺の頭に手をかざす。

手足は小麦色を帯び髪は白くなっていく。

変化が終わるとそこには人間の姿になった1匹の蛙がいた。

挿絵(By みてみん)

多分元の姿に戻る事も出来る。

しかし蛙として生きていく事はもう出来ない確信が何故か心の中にあった。


「それではさようなら」


シロがそう告げると辺りが再び光に包まれた。


目を開けるとそこは落ちていく空の上だった。

眼下には海上で敵に囲まれボロボロになったナカちゃんがいた。


「絶対に死なせない。」


決意を固めた俺は声の限り彼女の名前を叫んだ。


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