第11話 君の力になりたいと思ったから 後編
次の日、僕は荷物整理を済ませナカちゃんに最後の挨拶をしようと部屋の扉をノックした。
「………」
返事は無く仕方がないとそのまま立ち去ろうと振り返ると小柄な男が立っていた。
次の提督だろうか?今からここを出て行く僕には既に関係の無い事だが。
そいつは僕には目もくれずに部屋の扉を開けると布団に包まり悲しむナカちゃんに言った。
「お初にお目にかかります。私こういう者でして」
ツカツカと部屋に入ると懐から名刺の様な物を取り出しナカちゃんに差し出す。
ナカちゃんは相変わらず無言だ。
「先日の件、私の耳にも入っております。非常に残念でした。
ですが死んでしまった物は仕方ありません。切り替えて行きましょう」
そいつは耳を疑う様な言葉を続けた。
「私がここの指揮官になった暁には軍備の徹底を更に…」
この男は何を言っているんだ?
布団の隙間から見えたナカちゃんの顔は涙で目が腫れ何日もマトモに寝れていなかったのか酷いクマだ。
とてもじゃないがそんな話を聞ける状態では無いのは一目瞭然だ。
僕はだんだんと彼に対して腹が立ってきた。
そして彼の次の言葉で完全に僕の堪忍袋の緒が切れた。
「それにしても指揮官自ら前線に立ち死んでしまうとは何とも情けない話です」
僕はここの部外者で本来であれば関係のない存在かもしれない。
でもショウコさんが本気で世界を変えようと戦っていた事は僕にも分かる。
そんな彼女を侮辱する様な言葉は流石に聞き捨てならなかった。
「そんな言い方ないんじゃないですか?彼女は心を痛めてるんです。
先日の件をご存じなら、そんな事も分らないんですか?」
僕がそう言うと彼は怒りの表情を浮かべナカちゃんの腕を無理やり掴んだ。
「なんだね?この泊地はこんな奇天烈なペットを飼っているのか?」
痛いと小さく声を漏らしたナカちゃんの腕を離すと彼は自信ありげに言った。
「僕を誰だと思っている!僕は本部から派遣された次期提督になる男だよ?」
この瞬間、僕の中で何かが変わった。
彼に対する怒りや勢いもあったのかもしれない。
でも、本当にもしショウコさんが言った通り僕に資格と力があるなら…
少しでも誰かが泣かなくても良い世界に貢献出来るのならば…
僕は心のままに今の気持ちを叫んだ。
「お前みたいな…お前みたいな奴は認めない!ここの提督になるのは俺だ!!」