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毒はむ姫と白い花  作者: 夕藤さわな
第二章
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第九話

 彼女が邸に戻る日の朝、彼女を診療室の丸椅子に座らせて、私は二つのケースを見せた。

「毒はこっちのケース、解毒剤はこっちのケースだ」

 丸くて底の浅い小さなケース。毒は青いフタ、解毒剤は白いフタだ。

「王宮側には常服薬として話を通してある。毎週、一週間分を届ける。もし使っていないものがあっても、その週の分が届いたら前の週の物は廃棄するように。……聞いているのか?」

 書き物机の上のケースをじっと見つめる彼女に、私は嘆息した。この一年間、何度も言い聞かせてきた。今、聞いていなくても大きな問題にはならないのだが。

「可愛くない」

「は?」

 あまりにもどうでもいい指摘に、私の口から素っ頓狂な声が漏れた。

「だから、そのケース! ぜんっぜん、可愛くない!」

「毒と解毒剤なんだぞ。可愛い必要があるか」

「ある! あるに決まってる! 可愛いと気持ちがウキウキして、解毒剤の効き目が良くなるんだよ! 病は気から、って、言うでしょ!」

 私は額を押さえて、深々とため息をついた。正直、ケースのことなんてどうでもいいと思うのだが。当の彼女は唇をとがらせ、キッと私を睨みつけている。お姫様のわがままだ。聞くしかない。

「どうすればいい?」

 丸椅子から立ち上がると彼女は診察室内をぐるりと歩いてまわった。薬品棚の前で足を止めたかと思うと、

「この透明なやつがいい!」

 棚の中を指さした。私が見せたケースと形は同じで、全体が透明なものだ。私は黙って頷いた。

「で、解毒剤と毒をそれぞれラッピングペーパーに包んで」

「ラッピングペーパー?」

 思わずオウム返しにする私を無視して、彼女は真剣な表情で話を続けた。

「解毒剤には白い物、もう片方には色違いの同じ物をくくりつけて目印にするの。毎週、違うのじゃないとダメだから」

「毒は乳白色で、解毒剤は透明だ。特に目印をつける必要は」

「白と、色違いのモノが目印ね。手抜きして同じ物や可愛くない物を目印にしたら、解毒剤、飲まないから!」

 澄まし顔の彼女に、私は再びため息をついた。お姫様のわがままだ。聞こう。

「だが、なんで白い物なんだ。指定が大雑把過ぎる」

「マーガレットって白いお花でしょ?」

 あまりにもあっさりとした調子で言う彼女に、私はきょとんとした。

「黄色い瞳と真っ白い髪。黄色いめしべとおしべのまわりに、真っ白な花びらのマーガレットの花そのもの。マーガレットのお母様、名前の付け方が単純だよね」

 そう言って、エララはにひっ、と、歯を見せて笑ったのだった。


 ***

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