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毒はむ姫と白い花  作者: 夕藤さわな
第一章
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第一話

 イオを見送った日も曇り空だった。


「待っているから。絶対に帰ってきて」

「うん、マーガレット」

 光の加減で紫色にも見える銀の髪を揺らして、イオは私の胸にしがみついた。私を見上げる紫紺の瞳は不安げに揺れていた。

 できることなら、このまま、ずっと抱きしめていたかった。大切なイオを、悪魔のような男に嫁がせるなんて耐えられなかった。


 イオが向かう王宮の主――若き国王は暴力的で、衝動的で、残虐な男だった。

 何十人の少女たちが嫁いで、無残な姿で帰ってきたことか。


 悪魔のような王の元になど、誰も嫁ぎたくないし、嫁がせたくはない。だが、拒んだり逃げたりしようものなら、家族はおろか村中の人が殺された。

 実際、十人の娘のために、十の村と千の村人が殺された。

 イオの母親は百の村を治める領主だ。領主の娘が逃げたら――百の村と万の村人が見せしめに殺されることになる。イオも、イオの母親もわかっているからこそ、拒むことも逃げることもできなかったのだ。


 王都から来た迎えの馬車に乗せられて、イオは悪魔が待つ王宮へと向かった。

 馬車が小さくなって、見えなくなって、あたりが暗くなっても。私は馬車が消えていった方角を見つめて、祈るように、両手を強く握りしめていた。

 女同士だ。私たちの関係は公にできるものじゃなくて。それどころか、いつか諦めなければいけないものだと思っていた。

 でも、もし彼女が無事に帰ってきたなら、なりふり構うのはやめよう。決して諦めたりはしない。そう、誓ったのに。


 祈ったところで無駄だと。神様なんていないのだと思い知ったのは、半年後のことだった。

 イオは――冷たい体で、私の元に帰ってきた。


 ***


全十六話、二万二千字ほどのお話です。

ブックマークしていただき、最後までお付き合いいただけましたら幸いです。

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