目覚めと旅立ち
「クァ〜(ふぁぁ、よく寝た)」
気持ちよく浮上する意識の中、体内に残った最後の眠気を吐き出すように欠伸が漏れた。
初めてのすっきりとした目覚めに気分が良くなる。
ぐっと体を伸ばしてほぐすと、何やらバキバキと音がして体から何かが剥がれるような感じがした。
剥がれたものを落とすように身震いすると、ガラガラと音を立てて何かが落ちていく。
何かをふるい落としたことで体が軽くなる。
「グルル?(さて、ここはどこだったか?)」
その場に座り、周りを見渡して考えるが、よく分からなかった。
考える中で脳裏に浮かんだのは、自分がドラゴンと呼ばれる種族であることと、本来であれば継承されるはずの世界の記憶が未継承であるということだけだった。
「グルル(ふむ。これは由々しき事態だ)」
世界の記憶とは、歴代のドラゴンたちが蓄積してきた様々な知識であり、世界を反映させることも滅ぼすこともできる取り扱いの難しいものだ。
本来であれば世代交代の際に受け渡されるものであるのだが、何らかのイレギュラーが起きたようだ。
「グルル(まぁ、探すしかないか)」
世界の記憶が消滅することはないので、きっと何処かにあるだろう。
寝るのにも飽きたので、探し物ついでの散歩でもしようとドラゴンはゆっくりと動き出したのだった。
*・*・*・*・*・*・*・*・*・*
「グルル(さて、困った。ここからどう出たものか)」
ぐるりと空間を見て回ったが、出口らしきものは壁のかなり下の方に開いた針穴のようなところしかなかった。
だが、どう考えても自分の巨体では、あの針穴の様なところを通るのは無理である。
「グルル(いや、通ったことはあったはずだが、どうやって通ったのだったか)」
寝ぼけながらであったので記憶が曖昧だが、確かにあそこを通った気がする。
あれは、何度目かの安眠妨害を受けた時だったはずだ。
良い加減に鬱陶しくなって、掃除をしにいったのだった。
「グルル!(おぉ!そうだ。あの時は、体を小さくしたのだったな)」
この空間の先は網目のように細い通路が通っていて、そこに邪魔な小物がうじゃうじゃと湧いていたのだ。
放っておくと散発的にやってきてはちょっかいをかけてくるので、眠い目を擦りながら一掃してやったお陰でゆっくり眠ることができた。
「グルル(確か、こうだったかな)」
ー《質量変化》
するすると地面が近くなり、針穴の様だった出口がぐっと大きくなった。
「クルル(これでよし)」
ドラゴンは変化した体を見て満足そうに頷くと、背中の小さな羽をぱたぱたと動かして、ようやく通れる様になった通路を通って地上を目指すのだった。
『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に変えてくれても、、、良いんですよ?(。・ω・。)