第八話 硫黄島沖にて
今回は短いです。
硫黄島……かつてアメリカと日本の激戦地だった同島は現在でも不発弾などが多数残り危険なため自衛隊の管轄にあり一般人は立ち入ることができない。そのため島には民間人がいないので艦載機の夜間訓練で問題になる騒音を気にせず訓練ができるので重宝されている。
8月18日午後6時 硫黄島沖
日が暮れ始め徐々に暗くなっていく太平洋上を3隻の艦が航行していた。そのうちの2隻カーティス・ウィルバーとオブライエンは、キティホークを護衛していた。
その艦魂であるカーティスとライエンもまた交代で対潜警戒を行っており現在はカーティスが担当していた。
「カーティスさん交代の時間です。」
カーティスが振り向くとそこには敬礼をしたライエンがいた。
「わかりました後は頼みます。」
答礼を返しカーティスがそう伝えるとライアンは自艦へ転移した。これでしばらくは自艦を離れても大丈夫だろうということでカーティスはキティホークへ転移した
『キティホーク』の飛行甲板では艦載機の発艦のため幾人ものクルーがあわただしく動いており艦載機のエンジン音だけがその場を制していた。クルーは茶色や緑、黄色といった色の服を着ていた。服の色にはそれぞれ意味があり茶色の服は機体の責任者で常にその機体の行動を確認、報告をする。黄色の服を着ている者は艦載機や人が混雑する甲板で艦載機の移動の管理をするいわゆる甲板の交通整理員である。
その混雑する中、キティは今まさにカタパルトから発艦されようとするF-14の前輪のところにしゃがみ手でさまざまなサインを出す緑色の服を着た人物を艦橋から眺めていた。
その人物は手際よくサインを出すと素早く機体から離れた。するとその機体は轟音をたてカタパルトから発艦していった。
「司令。」
「カーティスどうしたの?」
キティは振り返ると直立したカーティスがいた。キティは何かあったのかをカーティスに聞いたがカーティスは若干、気まずそうな顔をした。
「いえそういうわけでは……ただ、ライエンと対潜警戒の任を交代したので様子を見に来ただけなのですがすみませんでした。」
「気にしなくていいわよ。」
そういうとキティは再び先ほどのクルーに目線を映した。クルーは先ほどとは変わらない動きで作業をしていた。
「司令はやはり彼が気になるのですか?」
カーティスの言葉にキティは危うく艦橋から落ちそうになった。
「ちょ、なんでそうなるのよ!」
顔を真っ赤にしながらカーティを向くキティ、しかしその顔は確かにそのクルーを心配する表情が見えた。カーティの視線に耐えられなくなったのか再びキティはクルーのほうを見た。そして不利と悟ったのか口を開いた。
「確かに気になるわね……彼、ジャックのことは……。」
その表情はとても悲しそうだった。
「ジャックさんのことが心配なんですね。」
カーティスの問いにキティは素直にうなずいた。それもそのはずであるジャックが担当しているのは艦載機の発艦である。ましてジャックはエンジンを全開にしている機体の最終チェックをするのだから気になるだろう。
「昔ね、ジャックがしているのと同じ担当のクルーがエンジンに吸い込まれるのを見たの」
それは今日と同じ夜間発艦訓練の中で起きた事故だった。
「私が見ている前でそのクルーは吸気口から吸い込まれたわ、そして彼は……」
キティの脳裏にあるのは人を吸い込み異常を起こすエンジンとそれに気付きあわてるクルーたち。そしてその後救出されたとは言い難い、見るも無残なそのクルーの姿。
顔をうつむきながらキティは続けた。
「なんでジャックのことが気に入ったのかしら……なんで……。」
「司令……。」
うつむいたまま肩を震わすキティ、その様子に耐えられないといったカーティス。
そんな状態がどれくらい続いただろうかおもむろにキティは顔をあげた。
「でも私は信じるジャックは大丈夫だって。」
その顔には若干悲しみに跡があったがキティは笑っていた。
「信じれば……願えばきっと大丈夫。」
自分の言動でキティを落ち込ませてしまったことにカーティスは負い目を感じていたがキティのその表情を見て安堵した。
「そうですか……ではライエンと対潜警戒を交代するので失礼します。」
本当は交代までまだ時間はあるのだがカーティスはキティを一人にしたほうがいいだろうと判断したのだ。
その考えに気付きながらカーティスが転移したのを確認すると再びキティはジャックへと視線を移した。そこには何も変わらず作業をするジャックがいた。
「大丈夫。」
キティはそっと呟いた。
その後何度かそのようなことが繰り返された。そして最後の機体が発艦するとクルーたちはようやく安どの表情を浮かべた。
するとキティは先ほどから見ていた人物に駆け寄った。
「ジャック御苦労さま。」
キティが見ていたのはジャックだったのだ。しかしジャックはキティに気付いていないようだ。そこでキティはジャックの肩を叩いて声をかけた。
「ジャック!」
そうするとジャックは気付き今までしていたヘッドホンを外した。
「すまなかったキティ、これつけていると聞こえなくて……第一面倒なんだよなつけるのが。」
そういいながらジャックはヘッドホンを指差した。発艦作業中の飛行甲板では艦載機のエンジン音がひどく普通に会話ができないのだ。そこでヘッドホンで耳を保護して手でのサインで意思疎通をするのだ。
「仕方ないわよそれがなければ耳がダメになってしまうんでしょ。」
「でもなぁ……これって結構、嫌なんだよな……」
キティがヘッドホンの重要性を訴えてもジャックは嫌そうだった。キティはジャックのことを考えるとどうしても付けてほしいのだその時、キティはふとある人物に気付きひらめいた。
「ジャック今何が嫌だって言ったの?」
「だからこのヘッドホンだよ。」
キティは聞こえてないふりをしてもう一度聞いた。
「もう一回大きな声で。」
するとジャックは腹を立てたのか思いっきり大きな声で叫んだ。
「だからこのヘッドホンが邪魔だって言ったんだ!ついには耳まで遠くなったかこのババァ!」
ババアという単語にカチンと来つつも目的が達成されたのでキティは微笑んだ。その微笑みを不審に思ったジャックは口を開こうとした。
「何、笑っている……」
「ジャァァック!」
その瞬間ジャックは凍りつき恐る恐る振り返るとそこには………
「は、班長……」
まさに鬼の形相の班長がいた。普段は甲板員の父親と慕われるジャックの班長、カール・D・ブラウンだったが規則などには厳しいのだ。
「貴様今何といった!」
「いや班長今のは……」
ジャックは班長から少しずつ後ずさりながら横眼でキティを見ると『私は知らないよ〜。』といった反応で口笛を吹くキティがいた。つまりキティは自分ではジャックの考えを変えられないだろうということでわざとジャックに大きい声を出させ班長に気付かせたのだ。
ジャックがはめられたと悟った時ついに雷が落ちた。
「ヘッドホンが邪魔だと!この前の登舷礼をさぼったのといいどこまでたるんだ貴様ぁぁ!」
「ひぃぃぃ!」
まさに蛇に睨まれた蛙とはこのことだろう班長の勢いに完全に飲み込まれたジャックであった。
「この前の罰じゃ全く堪えていないようだな………罰として航空隊が返ってくるまで甲板を走り続けろ!」
「そ、そんなぁ……」
「つべこべ言わず走れ!」
班長に尻を蹴り飛ばされジャックはキティを恨みながら走り始めた。一方、キティは作戦通りの結果に大満足であった。
結局ジャックは航空隊が返ってくるまでの約6時間走ることとなった。
第8回 後書き大会!(大会じゃないじゃん!)
キティ「八回目の本日はこの方の紹介です。」
ジャック「やっと出れたぜー!」
キティ「というわけでこのコーナー初の艦魂以外の登場人物であるジャックです。」
ジャック「これが俺だ!」
ジャック・マロノフ
年齢:25歳
身長182センチ
体重76キロ
家族構成:父、母、妹
好き:キティ、しらね、その他艦魂
嫌い:戦争、ブルーリッジ
特徴:明るくムードメイカー的な存在だが女たらし
ジャック「……なんだよ女たらしって。」
作者「あながち間違っていないだろ前に『しらね』に手を出してたし。」(第3話参照)
キティ「ですね。」
ジャック「そんな〜。」
キティ「次回はどのような内容ですか?」
作者「一応、ある演習を考えています。」
キティ「演習ですか?」
作者「はい、内容はわかりませんが……。」
キティ「……わからない?」
ジャック「どういうことだ!」
作者「ストック切れちゃって……頑張るから許して!」
キティ「どれくらい遅れるんですか?」
作者「遅くても5日〜1週間で何とかしたいと……。」
キティ「わかりました。でも今後は気をつけてくださいね。」
作者「はい。」
ジャック「俺は許さん!」
そう言いながら作者に襲い掛かるジャックしかし!
???「ジャァァック!」
ジャック「げっ、班長!なぜここに!?」
カール「貴様が心配で来ればまた人様に迷惑を掛けやがって!罰として次回まで走り続けろ!」
ジャック「またですかー!」
作者「急がないとジャックがやばいな……。」
キティ「作者さん頑張ってくださいね。では次回をお楽しみに。」