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第三十八話 再びの訪問者

「…………」


「…………」


にらみ合う二人の女子、キティと約一年ぶりに再会したジャックの妹アリスである。

そして、その間で困り果てているのはジャックだった。


「おーい、いつまで睨み合っているんだよ」


ジャックの声にも耳を貸さず二人は微動だにしない。

というのもキティが来てからずっとこの状態が続いており、艦魂でただ一人残っていたケインは部屋隅に避難している。

視線で助けを求めるがすぐに今にも泣きそうに涙を浮かべるのであてにできないでいた。


『あー……早く戻ってきてくれよカーティス』


そう心の中で叫びながら、ジャックは視線を目の前にいるキティと妹のアリスに再び視線を向ける。

キティがここに表れて早々アリスが『お久しぶりおばさん』と言ったのが事の原因である。

その後、二人は言葉による激しい応酬を繰り返し現在の硬直状態へとなったのであるが、間に挟まれているジャックにとってはとても生きた心地がしない。

少しでも動こうものならまたあの激しい争いが始まるのがなんとなくわかっていたからである。

何もできずに夜を迎える覚悟を決めかけたジャックであったが、その時目の前に光が生じて待っていたカーティスと一人の女性の姿があらわれた。

女性は二人の様子を見るとすぐにキティに近寄り後ろへと下がらせてゆく。


「キティ落ち着けお前らしくないぞ」


「………」


そして、カーティスもまたアリスを後ろから捕まえて下がらせてゆく。


「さぁ、アリスさんも下がってください」


「………」


二人が離れて緊張感から解放されたジャックは大きく息をつく、一方ではキティを引き離した女性がキティの前に行くと何やら話し始めた。

ジャックは隅にいたケインを呼び寄せキティと話している艦魂について聞いた。


「なぁ、ケインあの艦魂は?」


「キティホーク司令の義理の姉にあたるインディペンデンス元司令です」


ケインは先ほどの空気の重さもあってかいつもよりもましておとなしく、しかしちゃんと言葉を選ぶように丁寧に答えた。


「ああ、『インディペンデンス』の艦魂か……ってなんでここに?」


「私もそこまでは……」


ジャックも当然ながら『インディペンデンス』のことは知っており、実際にハワイでの引継ぎ式でも見ている。

しかし、さすがに忙しかったので艦魂であるインディには会ってはいなかった。

そうしているとインディがジャックのほうへと近づいてきた。


「すまないがジャックこの状況の説明をしてもらってもいいか?」


「え?」


いきなりの状況説明の報告にジャックは困惑した。

そして何より一乗組員であるはずのジャックの名前を知っていたことに驚いた。

困惑した様子で答えのないジャックを見てインディは自身の現状について話し始めた。


「一応、カーティスから話は聞いたんだが事の発端を知っているのはそこでカーティスが抑えている彼女とお前だけだろ」


ジャックが思っていたこととは違う話ではあったが少し時間ができたことと、最初に困惑した理由がわかったのでジャックは深呼吸をすると落ち着いて話し出した。


「実は……」


ことの始まりはアリスが日本に来たことが始まりだった。

キティが整備のため休暇中だったジャックのもとへ突然現れたアリスは「キティホークに会いたい」と言い出したのである。

しかし、いくら乗組員のジャックとはいえ整備中の『キティホーク』の中に入ることはできない。

そこでジャックは基地内のタグボートの艦魂を何とか捕まえ、カーティスへとやって来たのである。それは、まさに艦魂の見える者の特権とも言えた。

そして、カーティスはたまたまいたケインにその場を任せキティを迎えに来たわけだがキティとアリスは案の定と言うかまた以前のような険悪なムードになった訳である。


「なるほど」


一通り話を聞いてインディは納得したらしく、ポンとキティの頭をたたいた。


「まぁ、その言葉に反応するうちはまだ若いよ」


「ごめんなさい」


何時もの豪快さはないもののそれでも明るくインディはキティに言葉をかけるが、キティには叱られている気分になり謝罪する。

そして、アリスに対しても振り返りながら声をかけた。


「そして、茶化すほうもまた幼いということだ」


その瞬間、不思議と部屋が静まり返った。

それもそのはず、インディは妹であるキティを傷つけるような言葉を言った暗にアリスに視線で警告を行ったのである。

それはアリスだけではなくアリスの後ろで抑えていたカーティスすらも思わずぞっとしたほどであった。

ケインはカーティスの様子から何やら感じ取ったらしく、ジャックもまた急に静かになったのに嫌な予感がして話題を振ることにした。


「そ、そういえばアリスお前はなんでまたここに来たいなんて言い出したんだ?」


「こ、この前の……その……」


インディのからの威圧に耐えながらアリスは話し始めたがそれ以上、言葉が出てこない。

その様子に一同の視線がインディへ向けられると、さすがのインディも慌てて首を振った。

確かに先ほど威圧を加えはしたがそれからは何もしていない。


「……お礼」


「えっ?」


反応したのはアリスにいちばん近かったカーティスであった。

そしてほかの一同もカーティスの声に反応し耳を傾ける。


「お礼……去年、いろいろと助けてもらったから……」


顔を真っ赤にしながらそう話すアリスの言葉に一同が納得した。

どうやら、あまりの恥ずかしさに声がなかなか出なかったらしい。


「……だそうだが、どうするキティ?」


「どうするって言われても……」


何かを思いついたらしいインディの問いかけであったが、キティは困惑した表情を浮かべとてもインディの変化に気が付く余裕もなかった。

アリスのことは嬉しいことに間違いはないが、今までのアリスとの接し方を考えるとすぐには喜べないというのがキティの心情だったのである。

一方、ジャックはアリスの言葉に心当たりがあったようで部屋のわきに置かれた荷物に目を向けていた。


「だからお前、フルート持ってきていたのか」


そういってジャックはアリスの荷物の中から一つの箱を取り出し、錠を外す。

すると案の定、アリスがいつも使っているフルートが入っていた。


「わー、ちゃんと手入れされているんですね」


そういったのはケインだった。ケインの言うとおり、きれいに磨かれてはいるがそれには確かに使い込まれた証のようなものもあった。

それは艦魂としてある程度楽器に触れている彼女たちが認めるには十分で、それを知ってか知らずかアリスは顔をうつむかせながら嬉しそうにつぶやいた。


「……一応、ね」


「ああ、こう見えてもアリスはフルートに関してはそれなりの腕があるからな」


「お兄ちゃん!こう見えてもはないでしょ!!」


ジャックの発言にアリスは顔をあげ声を荒げた。

どうやらそれなりにプライドを持っているらしく、ジャックへと詰め寄りポカポカとジャックを叩く。

その様子に室内の空気がだいぶ軽くなったが、インディだけが何やら考え事をしていた。


「姉さん?」


姉の様子に気づいたキティが声を掛けた瞬間、インディはポンと手を叩き、顔をあげた。


「だったら、こうしよう」


人差し指を立てて提案するインディの発言に思わず全員が身構えるが、当のインディは気にした風もなく話を続ける。


「アリスにしばらくの間、キティの練習相手になってもらおう」


「えっ!?」


「練習相手?」


インディの提案にキティは驚き、アリスは首をかしげた。

また、ジャックやカーティス、ケインも驚きを隠さずインディに視線を向ける。

キティ以外の視線にインディはうなずくように簡単に説明する。


「ああ、ちょっと訳ありなんだが丁度キティの練習相手が欲しかったんでな」


ここでサラの名前を出さなかったのは少しでもこのサプライズの情報が漏れるのを防ぐためである。

それでもカーティスあたりなら感付く可能性もあるが、ここで名前を出さないことを考えれば吹聴することもないと考えていた。

そして、当のアリスと言えば少し悩んだものの、自分が決めたことでもあるので拒否をする理由はなかった。


「まぁ、いいわそれで恩が返せるなら」


アリスの返事に満足そうにインディはうなずき、キティに視線を向けた。


「キティはどうだ?」


「……わかったわ」


キティはしょうがないといった様子でうなずいた。

正直インディを止められる状況でもなく、なおかつインディの言うように人とはいえ練習相手が出来るのは嬉しいことであった。


「よし決まりだな」


二人からの返事にインディは満面の笑みを浮かべる。


「というわけで、ジャックしばらく妹を借りるぞ」


「お、おう……借りる?」


うなずきかけたジャックであったがすぐに違和感を覚え疑問を浮かべる。

それはジャック以外も感じたようで部屋が一瞬、静かになる。

その反応にインディは当然のごとく答えた。


「ああ、何度も転移するのは面倒だからな、帰る日まではキティにいてもらう」


「えぇー!!」


「姉さん!!」


またもやインディの暴走とも取れる発言にアリスとキティはそれぞれの反応を見せる。

そして今回の発言については二人以外、カーティスとケインがさすがに拒絶の反応を見せた。


「さすがに元帥それはちょっとむちゃくちゃですよ!アリスさんが見つかったらどうするんですか!!」


最初に声を上げたのはケインだった。

仮にも自分たちは軍艦である。いくら艦魂である自分たちが一緒だからと言って、普通の人であるアリスがいつまでもここにいるわけにはいかない。

もし、見つかれば面倒になることはまず間違いない。

しかし、インディは初めから分かっているように答える。


「キティも練習相手がいないといっていたし、今は定期検査と工事で人も比較的少ない。そして何より工事の音で練習中の音もある程度ごまかせるしな」


確かにキティ本体である『キティホーク』は現在、通常よりも人の出入りは少ないうえそれなりの騒音もあった。

これなら多少の音は掻き消され気づかれる可能性は低い。

インディの答えにケインの表情が弱々しくなるが、今度はカーティスが前にで出た。


「確かにそうですが、ご飯はどうするんですか?」


艦魂である彼女たちはまず食事はしない。

無論、楽しみや人との営みということで全くしないわけではないが、それでもさすがに人ひとり分の余裕はなかった。

しかし、これもまたインディは当然のように答える。


「何、食事ならカーティスやいざとなりゃブルーあたりの冷蔵庫から拝借すればいい」


自分たちはともかく、まさかの総司令の冷蔵庫から食事を拝借するという発言にカーティスは参ったという様子で引いた。

普通に総司令の名前を出したところからブルーが何と言おうと無駄だと思ったようである。


「ちょ、ちょっといいか?」


続いて前に出たのはジャックであった。


「基地に入ったやつがいなくなったとあってはまずいんだが……」


さすがに基地を出入りする民間人の数が合わなければ大問題である。

まして、連れが居なくなったというのであればあらぬ疑いをかけられかねない。

ジャックの訴えは切実なものであったが、これまたインディは軽く流す。


「ああ、そのことなら……」


そういってインディは手を差出す。

すると、手の上に光が生じ、光が収まるとそこには一台の携帯電話が握られていた。


「適当な船の上でこの携帯を使うといい、すぐに私が迎えに行こう」


「はっ!?」


驚くジャックをよそに、インディはその携帯をジャックへと放り投げる。

これは、通信網の強化とともに艦魂それぞれが生み出した一種の通信機であった。

携帯の形をしているが繋がるのは携帯を作り出した艦魂のみであり、この場合はインディにしかつながらない。

これを利用すればつながった艦魂はその場所を正確につかむことが可能になり、それが船の上であれば転移も可能であるという万能道具であった。

これは全世界に通信網を敷くアメリカならではであり、その力を使える艦魂も司令官以上に限られていた。

しかし、これに反応したのはキティで、そばに駆け寄って慌てて抗議する。


「ちょっと、姉さん!さすがにそれはやりすぎ!!」


いくらなんでも艦魂用の携帯を利用するのは元帥クラスのインディとはいえ、それなりの許可が必要だった。

本来なら大元帥であるコンスティチューションと現存する元帥クラスの艦魂の3分の2以上の許可が必要なのである。

逆を言えばそれほどこの携帯は危険なものでもあった。

もし、これを悪用されれば逆にこちらの位置が筒抜けになりかねない、だからこそそれだけ厳しい制限があるのである。

そして、インディの経歴を考えれば多少の時間はかかっても許可が下りるのは

すると、インディはキティの耳元でそっとつぶやいた。


「……お前だって少しでもいい形でサラ姉さんを送りたいだろ」


「!!」


そう、インディは何としてもアリスにキティの練習相手をさせたかったのである。

二人の対抗心を考えれば普通の練習よりも効果はあるは間違いなかった。

そして、少しでもいい演奏で姉であるサラを送り出したいとインディは考えていた。

そのためなら多少の厳罰は覚悟の上である。

本来、インディの経歴などを考えればこの許可が下りるのはさほど問題はないだろう。

しかし、今のインディに取ってはその時間すらももったいないのである。

その気持ちを外に出すことはまずないが、そこまでするのは数の少ない空母の姉妹だったからだろう。

そして、その気持ちがわかるキティはインディにそれ以上反論することできず、そのままインディから離れた。


「ほかに質問のある奴はいるか?」


キティが離れるとインディは今までのように全員に話しかける。

そして、ここにはもうインディに何かを言うようなメンバーはいなかった。


「よし、決定だな」


こうして、キティとアリスの集中特訓の開始が決まったのであった。

第二十四回 アメリカ合衆国海軍特別広報放送局~略してたまテレ


キティ「どうも、前回魂テレから1年と2か月ぶりお目にかかりますキティホークです」


カーティス「覚えていますか?カーティスウィルバーです。そして今回のゲストは……」


インディ「第六回以来……のはず、インディペンデンスだ」


キティ「以上、3名でお送りします」


インディ「ちなみに作者との絡みは、今回は無しだそうだ」


カーティス「あまりにも更新期間が空きすぎていて、このままだと更新のたび作者吊るしが行われるので……」


インディ「せっかくキティと一緒に懲らしめようと思っていたんだけどな」


キティ「まぁ、いつまでも構うわけにもいかないし……変な性癖を持っても困るし」


作者「おいっ!!」


カーティス「はい、下がってください。一応、今回は絡みなしですので……切りますよ?」


作者「……はい」


キティ「さて、今回は本編に出ていた艦魂用の携帯電話についてです」


インディ「これの通信方法はいたって簡単、通話を押すだけ。ちなみに回線は通信網の一部をちょっと間借りしているだけだ」


カーティス「回線に関しては私たちの部屋が普通の人には見つからないような感じですね」


インディ「そういうことだな」


キティ「そのため、大抵どんなところでも繋がるわ。それがたとえ海から遠い大陸のど真ん中でもね」


カーティス「という事は……」


インディ「一応、内陸の湖の船なんかにも安定して転移できるようになるな」


キティ「まぁ、そこまでして行く理由はないけどね。たまに行きたくなるけど」


カーティス「なるほど」


キティ「ちなみにこれを最初に考えたのはブルーの妹であるホイットなの」


カーティス「あ、ホイット総司令は『マウント・ホイットニー』の艦魂です」


インディ「今更の説明だな……まぁ、通信機能に関してはブルーとホイットの右に関して出るものはいないからな。ちなみに回線はホイット本人がだいぶ昔に興味本位で見つけたそうだ」


カーティス「……よくそういうことをする時間がありましたね」


キティ「ホイットは規則に関して緩いところがあるのよ」


インディ「だから規則に厳しいブルーとよく喧嘩もするんだがな」


カーティス「ああ、なんとなく想像できますね」


インディ「とはいっても、艦魂同士の通信は今までの延長でも何も問題なくて最初はあまり気にしていなかったんだ」


カーティス「つまり、見つけたはいいけどそれほど利用価値はなかったという事ですか?」


キティ「最初はね、ただ携帯が普及し始めたのを見て人との通信として使えないかって思ったらしいわ。そして、ほかの艦魂たちと試行錯誤の上で何とか完成したの」


インディ「まぁ、その裏にはフォル姉さんみたいに人とのかかわりを持っていた艦魂たちがいたっていう話もあるけどな」


キティ「姉さんその話は……」


インディ「……すまん、今のところはカットで」


カーティス「すいません。残念ながら無理です」


インディ「……覚悟するか」


キティ「フォローするから落ち着いて」


カーティス「及ばずながら私も……」


インディ「二人ともありがとう」


キティ「とまぁ、あんなこんなでこの艦魂用の携帯ができたわけね」


インディ「結果として話すだけなら直に会う必要はなくなったんだ。おかげで一部の人と艦魂の距離はさらに近くなったともいえるな」


カーティス「なんか、不思議な感覚ですね」


キティ「確かにそうね、本来なら私たちとは艦の上でしか話せないもの」


インディ「時代が進んで艦魂と人との関わりが変わっているんだな」


キティ「多分、そのことについてはコンスティチューション大元帥のほうが感じていることかもしれないわね」


カーティス「なんか経験者は語るみたいですね」


インディ「おい、それはつまり……」


キティ「と、取り合えず今回の話はここまでです。次回の更新に関してはいつもながら未定です」


インディ「単純に考えれば来年じゃないか?」


キティ「もしそうなら洒落にならないわね」


カーティス「ともかく、たまにですが作者さんも活動報告を書いていますので、そこもチェックしてくださいね」


キティ「だいぶ先になると思いますが次回もお楽しみに!」

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