第三十三話 南シナ海にて
あまりに久しぶりなので簡単なあらすじを付けました。
本当に久しぶりだ。
あらすじ
1998年アメリカ海軍、空母『キティホーク』が横須賀基地に配備された。
そして『キティホーク』はアメリカ海軍の最古参艦に与えられる『ファーストネイビージャック』の称号を得る。
そして年が明け99年の春。
米豪演習であるタンデムスラストに参加するため横須賀を出港した『キティホーク』は、コソボ紛争勃発によるペルシャ湾における空母の空白期間を埋めるため、演習を取りやめペルシャ湾へと向かった。
その後、任務を終えた『キティホーク』は横須賀へ戻る途中、東南アジアの国々と演習を行っていた。
そして『キティホーク』は南シナ海で一個空母打撃群と合流しようとしていた。
青空の元、アメリカ海軍の保有する空母の中で最古参とそれに次ぐ古参である二人の司令はにこやかに見つめあった。
この時、キティホークが東南アジアの国々と演習をしながら横須賀への帰港途中なのに対し、コンステレーションは極東でのキティホーク不在の穴埋めをすると同時にオセドア・ルーズベルトとイラクの飛行禁止区域監視の任務交代のため、ほとんど駆け足ともいえるスケジュールで行動していた。
そして8月後半、二隻のキティホーク級はかつてのベトナム戦争で共に行動したベトナム沖にて通信演習や機動演習などの合同演習行うべく合流しようとしていた。
「元気にしてたっすか姉貴?」
「ええ、貴方も元気そうね」
待ち切れなかったのか早めに会いに来て、明るく話しかけてくる妹に、キティもまた笑顔で答える。
最後に会ったのは確か、キティが横須賀に配備される前の準備に追われていた頃なので約2年ぶりである。
久方ぶりの再開に喜ぶキティであったが、ふと先ほどからコニーが腕を押さえている艦魂が気になり目を向けた。
するとキティに目を向けられた艦魂は、慌ててコニーに「失礼しました」と詫びをしてヴィルから離れるとキティに敬礼した。
「タイコンデロガ級4艦『ヴァリー・フォージ』です」
そのフォージの敬礼にキティもまた答礼する。
その姿は20歳ほどで、雰囲気はヴィスやヴェイに似ていたが目つきはその二人よりも鋭く、短く切りそろえられた髪と共に男らしく見えた。
姿勢を正したフォージの後ろでは、先ほどまで馬乗りになっていたヴィルがやっと立ち上がり、ビックリした様子で姉を見ている。
どうやらヴィスやヴェイ同様、ヴィルには苦手な存在らしい。
キティは答礼が終わるとヴィルを少し見てからフォージに話しかけた。
「さっき、ヴィルに馬乗りになっていたけどあれは……」
その質問に、フォージは後ろにいたヴィルの首根っこをつかんで前に引き出した。
「この馬鹿な妹がヘコヘコしていたのでつい……すみませんでした」
ヴィルは「だから勘違いだから!」とわめくが全く聞いていなようである。
その様子をキティ達は、口元を押さえながら少し笑らってみていたが、さすがにヴィルが不憫だと感じたキティとカーティスが割って入った。
「そこまでにしてあげてフォージ、ヴィルにもちゃんと理由があったのよ」
「ちょっと、カウスさんの事で話していたのです」
カーティスの『カウス』と言う言葉に、ヴィルを責めていたフォージはまるでスイッチが切れたかのようにピタリと動きを止めた。
いきなり行動が止まったフォージにキティ達は驚いたが、理由を知っているのかヴィルだけはどこか納得した表情をしている。
「どうしたすっか?フォージ、おーい?」
全く動かないフォージに最初に声を掛けたのは、共にやって来たコニーであった。
コニーは声を掛けながらフォージの前で、手をひらひらと動かすが全く反応しない。
すると今までその様子を見ていたヴィルがフォージの肩をツンツンとその背をつつき、声を掛けた。
「フォージ姉、司令殿がみているぞ」
するとフォージはピクリと反応し自分を見つめる二人の司令に気がつきすぐに礼をした。
そしてヴィルの方を見つめると一言。
「……確かにそれは仕方がない」
「だろ」
共に納得して頷きあうフォージとヴィルを見ながらキティ達は、タイコンデロガ姉妹内でのカウスの位置づけを改めて確認出来た気がした。
落ち着いた事により意気投合し始めたヴィルとフォージを見て、キティは一息つくとカーティスに声を掛けた。
「後どれくらいで演習海域につくの?」
キティの問いにカーティスはすぐに手帳を取り出すと、予定の合流時間と自分の持つ時計で時間の確認をはじめた。
息の合ったキティとカーティスのやり取りを見ていたコニーは、少しうらやましそうにキティに声を掛けた。
「姉貴はカーティスがいていいっすねぇ~」
キティはカーティスから離れながら「そう?」と首をかしげる。
するとコニーは大きくうなずきヴィルと楽しそうに話すフォージに目をやった。
そしてコニーは少し残念そうに、その理由を話す。
「フォージは、意気込みはあるんすけどよく空回りするんすよ」
コニーとフォージの関係はいわば、キティとカーティスのように司令とその側近の関係である。
本来、空母打撃群の司令である艦魂の側近はその空母の直衛に当たる艦魂で、大抵は防空能力に優れたタイコンデロガ級の艦魂が抜擢される。
フォージはヴィルと違いきちんと上官に対して対応するが、いささか何かと早とちりをする事が多く、はりきりすぎて空回りすることも多い。
そのため多少の事どころか、かなりの事を黙認するコニーですら注意することが多く時折、同じ空母打撃群の他の艦魂から『変えたら』と声を掛けられることも多々ある。
「この前、日本の護衛艦隊と会った時も困ったっす」
「何があったの?」
「確かその時、会ったのは しらね司令と むらさめさんだったすかね?」
それは約一ヵ月前、7月24日。コニーが横須賀に入港した時の話で、『コンステレーション』の入港に伴い、横須賀基地では簡単なパーティが開催された。
その際、日本側からも はるなと むらさめが参加したらしい。
「本当は きりしまさんも出るはずだったらしいんですけど、所用で来られなかったみたいなんすよ」
この時、きりしまは秋に行われるキティとの演習に向けての最後の書類整理を行っていたらしくどうしても来る事が出来なかったらしい。
コニーは しらねからその話を聞いて仕方がないと思ったが、フォージはそれが気にくわなかったらしい。
「まさか、きりしまさんに何か?」
「いや、その時は気づいたっす」
その時には『気にくわない』と言うのが顔に出ており、コニーがなだめて幸い何事もなかった。
しかし、その後に大きな問題が待ち受けているのは誰も知らなかった。
それはパーティも終盤、徐々に艦魂の数が減ってきたころ、しらねと共にパーティに参加していた むらさめが口にした一言が原因であった。
「何て言ったの?」
首をかしげながら問うキティにコニーは少し悩んでから口を開いた。
『何で空母が来るたびにこんなバカ騒ぎするのよ』
その言葉にキティは驚いたらしく目を大きく開いた。
元々隔たりのあった日米の艦魂同士の中を少しでも良くしようと、キティはパーティ開催の折には必ず日本の艦魂を招く事を指示していた。
少しでも互いに分かってほしいと……
「どうやら むらさめさんはあまりパーティに参加したくなかったらしいっす」
コニーはキティがそのようにブルーに相談していた事を、しらねから聞いていたためキティが自身を責めない様に付け加える。
あくまでキティが指示したのは『相手が参加を希望するならそれは拒まない』と言う事であり、こちらと接しようとする しらね達を思っての指示であった。
そして今回、むらさめが参加したのは きりしまの代理であり彼女の意志は関係なかった。
おそらくパーティがそろそろ終わるという事で気が緩んでいたのだろう。
思わず口から出てしまった本心に言った本人も少し驚いていた。が、運悪くそれはフォージによって聞かれていた。
「正しくは読唇術を使ったみたいなんすけどね……」
コニーがそう付け加えるが、キティはそのあと何があったか何となく想像がついていた。
その事をキティの表情から読み取ったのかコニーも大きくうなずいた。
「見事に暴走したっす」
読唇術で読み取った言葉にフォージの血は一気に頭に上り、むらさめに殴りかかった。
その行動にはその場にいた全員が、茫然としたらしい。
慌ててコニーやブルー、しらねが止めに入るが、武闘派とよばれるタイコンデロガ姉妹でも実力のあるフォージを止めるのは非常に難しかった。
「あの時ばかりはさすがに終わったと思ったすよ」
思い出すのが嫌なのか肩をすくませるコニーに対し、キティもまた状況を想像して頭を押さえる。
ただでさえ関係が良くないのに今以上に問題になれば日米艦魂の関係は完全に最悪なものになってしまう。
しかし、その場には1人の神がいた。
「いや~、カウスには本当に助かったっす」
コニーの脳裏にその場に現れたカウスが神のように見えた瞬間が思い出される。
最初のいざこざが起こった時、カウスは厨房でライエンの手伝いをしていたのだが慌ててやって来たケインの話によってパーティ会場に駆け付けた。
カウスは咄嗟に状況を把握すると、未だに暴れ続けていたフォージに駆け寄り問答無用で投げ飛ばした。
もちろんフォージ達も反撃に移ろうとするが、カウスの『いい加減にしなさい!』と言う大絶叫とライエンに用意してもらったギンギンに冷えた冷水を顔面に掛けられ、それ以上は何もできなかった。
「そのあとどうなったの?」
「パーティはその場で解散になったっす。一応、姉貴の事も考えて自分とブルー、しらね司令の三人で処理したっす」
最初はしらねが、自分達が騒ぎの原因を作ったとして責任を全面的に負うとした。
ブルーとしてもその方が良かったのだが、コニーが反対した。
酔えば誰でも本音の一つや二つは出るだろう、と
「『どこかには性格の変わる人もいるっすからね~』と言ったらブルーも納得したっす」
『そう言えば しらね司令も顔を赤くしていたっすけど何でっすかね?』と続けるコニーの話に、笑いごとでは無いはずなのにキティは思わず笑いかけ口を押さえた。
確かに、ブルーに対してその手口は最も有効だろう。もちろん、しらねにも言えるではある。
キティの様子を不思議がるコニーに対し、キティは深呼吸して気持ちを落ち着かせると話を続けるように促した。
「自分達が話していた間はカウスが、ずっとフォージに付きっきりで話していたみたいっすから大丈夫だと思うっす。」
「そう」
「でも、護衛艦側は分からないっすし、その場にいた艦魂も少しはいるから、あまり安心できないっす」
コニーはキティがせっかく関係を良くさせようとしていたのに悪化させてしまった事を詫びるが、キティは首を振った。
聞いている限りではその場にいても状況は変わらなかっただろうし、下手をしたら悪化していたかもしれない。
キティはコニーがうまく問題を収めてくれた事を感謝し、フォージの方を見た。
先ほどあそこまで『カウス』という単語に反応した理由はこう言う事があったからか……
「でも……まぁ、私の場合も本来の側近はヴィルなのよね……」
コニーの話を聞いていてキティも少し頭を抱える。
ある意味、クワンとのやり取りも気をつけておかないと同じ様な事になりかねない。
特にヴィルの場合は上官に対しても時折、対応がなっていなかったりする。
そういう事があるため、ブルーはキティの側近をヴィルではなくカーティスにしたのであった。
「ああ……ブルーが、そうしたのも納得がいくっす」
「でしょ」
キティの相槌に何度もうなずいていたコニーは何かを思い出したのか、懐をゴソゴソと探り始める。
そして一枚の紙を取り出した。
「そう言えば姉貴、この手紙なんすけど……」
「後、5分ほどですけど、どうしますか?」
コニーが紙を取り出すと同時にカーティスも声を掛けた。
カーティスはすぐに身を引くが、コニーは気にしないと首を振る。
キティはコニーの様子を見るが、気にはしていない様子である事と後、五分ほどで合流すると言う事を考えカーティスの方を見た。
「カーティスありがとう」
キティはカーティスに礼を述べる。
一方、カーティスは話に割って入ってしまった事が気になるのか頭を下げたままである。
キティは軽く息をつくとコニーを見た。
「手紙については後でいい?」
「OKっす!」
コニーはそのままカーティスに近寄り肩を叩く。
カーティスが慌てて顔をあげるとそこには笑顔でカーティスを見るコニーがいた。
「このくらいで気にしていたらダメっすよ」
笑顔でそう言うとコニーは、ヴィルと話しているフォージに声を掛ける。
「そろそろ戻るっすよ!」
フォージは頷きヴィルと一言、二言話すとコニーの隣についた。
そして、コニーとフォージは転移するため徐々に光の粒子となって行く。
「じゃ、演習よろしくっす」
「機動訓練、ちゃんと付いて来てね」
キティの激励にコニーは『任せるっす』と言ってその姿を消した。
ふと視線をずらせば水平線の向こうに空母と護衛の巡洋艦と駆逐艦を引き連れた『コンステレーション』が見えた。
「二人とも、演習頑張るわよ」
キティの声にカーティスとヴィルは大きくうなずいた。
今回は久しぶりの機動訓練で、二人ともやる気満々である。
そしてキティが軽く笑みを浮かべると二人は自艦へと戻って行った。
第二十回 アメリカ合衆国海軍特別広報放送局~略して魂~
『緊急:三ノ城公開審議!』
キティ「どうも、キティホークです」
カーティス「カーティスヴィルバーです」
キティ「今回の魂テレは作者さんの公開審議を行いたいと思います」
カーティス「いきなりですがご了承ください」
何故か十字架に磔にされた三ノ城
作者「21になって早々、なんでこんな目に……」
キティ「理由はこれから分かります。後、誕生日おめでとうございます」
作者「反応、軽っ!」
カーティス「まず最初はカウスさんについてです。心当たりはありますね」
作者「……………いえ」
キティ「トム~」
トム「にゃ~!!」
作者「ぎょわあああああああああああああああああ!!!」
カーティス「きちんと答えないとトムさんの『爪研ぎ』に使用されるのでご注意ください」
作者「……初めに……言ってくれ……」
キティ「ではカウスに何があったのか教えてください」
作者「え~……ずっと艦名が『カウペンス』ではなく『カウスペンス』になってました……(一応、修正済み)」
???「ふっとべ!馬鹿作者!」
どこからともなくトマホーク(通常弾頭)が飛来!
作者「ぎゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」
キティ「ずいぶん派手ねぇ~」
カーティス「やりすぎですよヴィルさん」
ヴィル「うるせー!妹の名前を間違える奴にやりすぎも何もあるか!」
キティ「確かにそうね……珍しく正論ね」
カーティス「確かに」
ヴィル「おい、それはどういう……」
???「お姉ちゃん!何やっているの!」
ヴィル「カウス!」
キティ「実はこんなことが……(解説中)」
カーティス「どう思いますか?」
カウス「うぅ……確かにお姉ちゃんが怒るのもわかる」
ヴィル「だろ!」
カウス「でもいきなりはちょっと……」
ヴィル「なっ……」
キティ「じゃあ、どうします?」
カウス「うーん……今回は特別という事で……」
カーティス「許すの?」
カウス「はい。指摘がなかったのも事実ですし……」
キティ「読者、少ないですしね」
カーティス「確かに(……このセリフっさっきも言ったような気がする)」
ヴィル「でも……」
カウス「いいの!」
キティ「ヴィル、ほどほどにして置かないとまた説教が始まるわよ」
ヴィル「うっ……」
カーティス「すごいですね。さすがカウスさん」
カウス「そうですか?」
キティ「カウスらしいわね」
カーティス「そうですね。では次は……」
ヴィル「どうした?」
カーティス「今回は時間切れだそうです」
キティ「と言うよりこのネタをもう少し使いたいのね」
カウス「すごい理由ですね……」
ヴィル「本当にいいのかこれで?」
キティ「それは読者の方が決める事ですね」
カーティス「確かに(三度目?)」
キティ「ではみなさん。今回もありがとうございました」
カーティス「ご意見・ご感想など」
カウス「メッセージからでもいいので」
ヴィル「待っているぜ!」
全員「「「「次回もお楽しみに~」」」」