第三十一話 振り返る三カ月(前編)
空気を裂く音が聞こえてくる。
辺りを見渡すと雲が所々でなびく青空の下、自艦と護衛のカーティスとヴィルの三隻しかいない。
ふと見上げるとゴマ粒の様な小さな点が徐々に、大きくなってきた。
それが二機の戦闘機であると確認できるころには、二機の戦闘機は並んでキティのそばを通過して飛んでいき風がキティの黒い髪をなびかせる。
飛んでいく機体の部隊表示を見てなつかしそうな表情でクスリと口元を緩めた。
その時、ここ4ヵ月を共に行動している馴染んだ二人の気配が後ろに現れるのを感じた。
「キティ司令、先ほど連絡が……」
キティの補佐をするカーティスが報告しようとするのをキティは手を挙げ制した。
「大丈夫。今、確認したわ」
肩越しにカーティスを見てキティがそう言うと再び上空の機体、F/A-18Cへと目線を移す。
「なんだよ、思っていたより芳しくない反応だな」
キティの反応を見て率直な反応を示したのはいつものように程よく制服を着崩したヴィルだった。
そのキティと言えばピクリとも動かずただ上空の機体を見上げており、これから会えるであろう人物への思いは感じられなかった。
一方でヴィルの言葉に大きく反応したのは隣に居たカーティスだった。
目を若干、吊り上げ軽く睨むような感じでヴィルに注意を促す。
「ヴィル!その言葉は慎むべきだと思います」
「別にいいだろ、司令殿も気にして無い様だしな」
カーティスの言葉をヴィルは別に関係ないといった感じで肩をすくめキティに「そうだよな」と相槌まで求めた。
キティは振り向かなかったが別に機嫌が悪いというわけでなかった。
「なっ!」
自分の言動は別に悪くない、と言わんばかりに堂々と胸を張り自分より身長の低いカーティスを見下ろすヴィルと、その視線を真っ向から受けるカーティス。
二人の間でバチバチと火花が散る。
「……あとで、カウスさんに連絡させていただきます」
「な、なんでカウスが出てくるんだよ!別に問題ないって言っているだろ!」
「言っていません!例えそうだとしても今回だけです!この事はちゃんと、カウスさんに連絡させてもらいます!」
ヴィルはカーティスの胸倉に掴みかかろうとするが、そうなれば確実にカウスに今回の件が伝わることになると思いつきなんとか自制する。
二人の様子を背中で感じ、耳で聞きながらキティは内心、楽しんでいた。
あえて反応しなかったらどのようなことに、なるのだろうと考えながら後ろで繰り広げられる、カーティスとヴィルのやり取りを楽しみながらこれから出会う相手のことを考えていた。
先ほど、こちらからもロイヤルメイス所属のF/A-18C、二機を相手側に送り出しておりもう間もなく接触するはずであった。
そしてキティはここ3ヵ月を振り返った。
キティホークはエンタープライズとの任務交代後、ペルシャ湾にてイラクの飛行禁止区域の監視活動を行った。
任務中の6月15日、ブラックナイツのF-14A一機が墜落するという事態が起こったがパイロットはたまたま近くを航行していた友軍潜水艦に救助されたのち、チャンセラーズヴィルを介して無事キティホークへと戻ってきた。
その後、約3ヵ月で一日平均約44回の出撃を行う監視活動を終え、コソボ紛争の支援を終えやって来たセオドア・ルーズベルトと7月19日にキティホークは任務を交代した。
交代当日にキティはセオドア・ルーズベルトの艦魂、ルージと短時間ではあるが話をすることができた。
最初は現在の中東付近情勢についての話で今後の部隊派遣やなどについて話していたがそこでルージの姉であるニミッツの艦魂、ニミーの話が出てきた。
「この状況でニミー姉さんがいないと、キティさん達に負担をかけてしまいますね」
はじまりはルージのこの一言だった。
キティの向かい座り手元のコーヒーカップに口をつけているルージの年のころ16ぐらいで軽くウェーブのかかった肩までのブロンドが目を引き隣には彼女が愛用する二丁の銃が置いてある。
現在、ニミッツは就役してから初めての燃料棒の交換作業を行っており、艦を半分解体して行われるその作業によってニミッツが再び配備されるのは2001年の予定でそれまでの間は彼女が抜けた穴を埋めるため他の空母にしわ寄せが来るのだ。
ルージの一言にキティは、眉をピクリと動かす。
「私達のことを、年寄り扱いしてくれるの?ありがとうねルージ」
「い、いえ!そんなわけでは……」
ニミーがいるのは大西洋側で太平洋側のキティにとって直接の負担はない。
もちろん、全く関係ないというわけではないが……
「ただ今回のようにご迷惑をかけてしまうのではないか、とニミー姉さんが言っていたので……」
モゴモゴと言葉を濁すルージを見てキティは苦笑した。
任務関係のことであれば迷惑ではなかった、あくまで彼女たちは兵器に宿る存在であって
個人ではない。
それが命令であればどんなことでもやるのが彼女たちの使命である。
もちろん例外もあったりするのだが今回は関係なかった。
「まあ、確かに太平洋側の私たちにも、しわ寄せが来るのには間違いないけど……。ニミーの妹では一番の実戦経験者である貴方にしては意外だったわね」
キティの言葉にルージは頬を赤くする。
「あくまで実戦だけです。やはりニミー姉さんやリン姉さんには敵いません」
そう言うルージの顔はどこか誇らしげで、キティもまたそれを認めていた。
でもどことなく自分達を抜かされていたので一言。
「あら?私達、姉妹には勝てるみたいな口調ね」
「そ、そんな!キティさんや、エンターさん、何てもってのほかです!姉さんたちの耳に入ったら今度、会った時に何を言われるか……」
先ほどまで赤くなっていた顔が、徐々に青くなっていく。
そこまで怖がる必要なないと思うけど……、と内心で呟きながらキティはニミーのことを思い出していた。
現在のニミーは、かつてキティもお世話になったオリスカニーの艦魂であるオーリスと義姉であるフォルを足して割ったような感じでおそらく今後、すべての空母が原子力化するアメリカにおいて重要な存在だと思っていた。
実際に現在の、原子力艦の艦魂達を先立って率いているのはニミーだった。
本来、世界初の原子力空母であるエンターなのだがそのほとんどはニミーが行っており、実質ニミーがまとめているようなものであった。
そこまで考えるとエンターが何もしていない様に感じたので考えるのをやめた。
「エンターは、エンターなりに頑張っているんだけどね」
「キティさん?」
ルージが目を丸くしている様子からどうやら思っていたことが声に出ていたらしい。
キティは軽く咳払いすると一端、カップに口をつけ話を戻した。
「まあ、確かに……私がSLEP(艦齢延命計画)を受けた時も約三年は動けなかったから、それ以上にニミーは辛いでしょうね」
話が戻ったのを受けルージも顔を若干引きしめる。
「はい……ところで私はいつごろまでここの任務をしていればいいのでしょうか?」
ルージはキティと交代するのだが、最近までコソボ紛争に参加していたので乗組員の休養や艦の整備を考えるとそれほど長くは任務に就くことはできなかった。
「大体、1ヵ月半位よ。代わりに来るのは……」
代わりに来る人物のことを聞くとルージは思い切り頭を下げ、感謝の言葉と詫びを言った。
別にそんなことしなくてもいい、と言ってもなかなか頭を上げなかったルージを何とかなだめた後、キティたちはペルシャ湾を後にした。
その後、キティホーク等は米豪合同演習を行うため一路、オーストラリアのパース港へと向った。
約10日間の航海を行い7月29日にキティホークはパース港に入港した。
第十八回 アメリカ合衆国海軍特別広報放送局~略して魂テレ
キティ「どうもキティホークです」
カーティス「カーティス・ウィルバーです」
キティ「なんか挨拶に手抜きの感があるのですが……」
カーティス「作者さんのネタ不足のせいです」
キティ「元々レパートリーが少ないのによくここまでやって来られましたね」
カーティス「それも限界の様ですが……とあるネットラジオのように番組の挨拶を募集しますか?」
キティ「やめといた方がいいと思うけど……」
カーティス「確かに変な挨拶が来るかもしれませんが背に腹は代えられないかと」
キティ「そうじゃなくて募集しても来ないと思う」
カーティス「……お気に入り登録の件ですか?」
キティ「ええ、見事にやられたわ」
カーティス「多分、更新の問題かと思いますけど……」
キティ「作者さんどういうことですか!」
作者「今、本番中!」
カーティス「シップ臭い……」
作者「ネタ探し&精神強化のために42キロほど歩いた」
キティ「トム~」
トム「にゃ~」
作者「ちょっ!歩いただけなのに、なぜか体中が痛いんだから止めて!」
キティ「……理由をお願いします」
作者「わ、わかったから!説明するから!止めさせて!」
キティ「トム~、おいで~」
作者「ふぅ~、お気に入りについては色々あるから、なんだがそれでもがんばったぞ!」
キティ「確かに、この作品としては久しぶりに早かったですが……」
作者「だろ!これから遅れるかもしれないのに文句言うな!」
カーティス「遅れるんですか?」
作者「ヤベッ!!」
キティ「……何で、ですか?」
作者「い、いや……少しあることを考えていて……」
カーティス「まさかまた連載ですか?」
作者「……」
キティ「失敗しますよ」
作者「……1ヵ月分なんだけど」
キティ&カーティス「「だめです!」」
作者「………………………………ちっ」
キティ「トム~、頼むわね」
トム「にゃ~!!」
作者「のわあああああああああああああああ!!左足は肉刺が出来たから止めて―――!!!」
カーティス「作者さん、トムさんの大群に潰されましたね(いつの間に増えたのでしょう?)」
キティ「この期に及んでさらに連載を考えている作者さんにはちょうどいい薬です」
カーティス「効くといいのですが……」
キティ「とりあえず今回はこの辺で終わりね」
カーティス「司会は私カーティス・ウィルバーと」
キティ「キティホークでした」
キティ&カーティス「「感想・評価だけではなくメッセージもお待ちしております」」